台風201420号 (NURI) 台風の名前 = ヌーリ (NURI) : オウム [マレーシア]

2014年11月28日 20:00 JST

すでにベストトラックデータを更新しましたが、台風が温帯低気圧化した後にベーリング海で記録的に発達した期間のデータは、ベストトラックに記録しないことになったようです。つまり、ベーリング海で発達したのは、台風20号から変わった温帯低気圧ではないという解釈になりました。 この点は実況の時から実は問題になっていました。(1) 台風から変わった温帯低気圧が再発達してベーリング海まで到達したのか、(2) 台風は別の温帯低気圧に吸収されて、吸収した方の温帯低気圧がベーリング海に到達したのか。気象データを見る限りでは(2)の解釈の方が妥当のようにも見えたため、この低気圧はもしかするとベストトラックに入らないのではないかとの心配(?)がありました。そして気象庁が事後解析を行った結果、このベーリング低気圧は台風から変わった温帯低気圧ではない、という判断になったようです。これにより、記録的な温帯低気圧の存在は、ベストトラックの記録からは消えてしまうことになりました。 台風が吸収される様子は鉛直台風でも見ることができます。台風番号を2014年の20号に設定し、ジオポテンシャル高度のデータを見てみると、台風が北から延びてきた気圧の谷に吸収され、次第に消えていくように見えます。これを見る限では、台風本体が再発達したとはやはり言い難いようです。一方、気温や湿度にデータを切り替えて見てみると、台風の東側や前方には上空まで大量の暖かく湿った空気が入り込んでおり、これが気圧の谷を強めて低気圧の発達を促しました。つまり、渦としての台風は確かに途中で吸収されたかもしれませんが、暖湿気の塊としての台風は温帯低気圧の歴史的な発達に十分貢献したと言えるでしょう。

2014年11月08日 14:00 JST

台風20号(NURI)は中心気圧910hPaを記録した後、北上しながら勢力を弱めていき、小笠原諸島と伊豆諸島の間を抜けた後に温帯低気圧に変わりました。温帯低気圧に変化した7日9時(JST)時点での中心気圧の推定値は984hPa。ここでいったん台風としての第一の人生は終わりました。「台風は温帯低気圧に変わりました」でも触れているように、温帯低気圧への変化は強弱の変化でなく構造の変化を意味します。そのため、温帯低気圧に変化しながら、発達を続ける台風も少なからず存在します。とはいえ、台風20号の場合は、温帯低気圧に変化した時点では特に発達もしておらず、それほど目立つ存在ではありませんでした。 しかしここから、台風20号の温帯低気圧としての華々しい第二の人生が始まります。気象庁天気図でその軌跡をたどってみると、7日15時976hPa、21時964hPa、8日3時944hPa、9時924hPaと発達を続け、1日で60hPaも気圧が低下するという急速な発達ぶりです。そして12時時点での気圧は、ついに920hPaまで低下しました。9時のひまわり可視画像にも、アリューシャンにかかる雄大な雲の渦が見えています。 気象庁の短期予報解説資料(2014年11月7日15時40分発表)によると、アジア地上解析天気図(ASAS)における温帯低気圧の史上最低気圧は930hPaだそうです。これが記録された1981年12月21日12UTCの天気図を見ると、アリューシャン列島に930hPaの低気圧が解析されています。この時から33年後、同じアリューシャン列島にて、温帯低気圧が930hPaの壁をついに越えました。アジア地上解析天気図上における温帯低気圧の史上最低気圧記録を、一気に10hPaも更新したのです。 世界の温帯低気圧については、World and U.S. Lowest Barometric Pressure Recordsがよくまとまっていますが、最低気圧を記録した温帯低気圧として以下の2つの有力候補があるようです。
1) Storm of January 10, 1993 deepened to a central pressure of 912-915 mb (26.93”-27.02”) between Iceland and Scotland near 62°N 15°W and, 2) Storm of December 15-16, 1986 deepened to at least 916 mb south-east of Greenland near 62°N 32°W.
アイスランドやグリーンランド周辺に出現する、910hPa台の世界最強温帯低気圧には及ばないとしても、今回の温帯低気圧920hPaも、それらに匹敵する最強クラスの温帯低気圧とは言えるでしょう。これはぜひ、顕著な気象現象として命名するとともに、記録と記憶に残したいところです。
ではこの台風を命名するとすれば、どんな名前がいいでしょうか。そこで台風ニュース・トピックスを使って、この台風にどんなキーワードがふさわしいかを調べてみましょう。現時点での上位12キーワードは、中国、密漁、サンゴ、漁船、小笠原諸島、領海、小笠原、周辺、伊豆諸島、海上保安庁、海域、海保となっています。このデータに基づく限り、台風20号の命名はやはり「サンゴ台風」しかないでしょうか。 以上をまとめて一つのメッセージにするとすれば、
サンゴ台風「台風で920(hPa)、温低でも920(hPa)」
台風20号(ヌーリ)の見事な復活ぶりは、マニアの記録と記憶に残ることでしょう。
なお米国のNational Weather Serviceが提供するアラスカ地方の天気図によると、この低気圧は日本時間9時の時点で927hPaと解析されています。日本の方が3hPa低くなっていますが、おおむね一致しています。米国の記録によると、アラスカ地域では過去に925hPaの低気圧も記録されているようですが、いずれにしろ稀な強さに発達した温帯低気圧であることは間違いないでしょう。そして15時には、この低気圧は924hPaまで発達し、米国の記録でも1970年代以降では北太平洋で最強の温帯低気圧となりました(参考:Bering Sea storm now strongest on record in North Pacific)。

2014年11月03日 19:00 JST

台風20号(NURI)はさらに勢力を強めて猛烈な勢力となりました。大型の台風ですが、眼はクッキリと小さく、勢力の強さを示しています。台風予報履歴を見ると、当初の予報では沖縄方面へと再度西に曲がる可能性も考慮されていましたが、現在はその可能性が小さくなり、このまま本州の南海上へと進む予報となりました。このコースだと伊豆諸島や小笠原諸島に影響が出る可能性が高く、周辺の海域も大時化に警戒が必要です。

2014年11月02日 19:00 JST

台風20号(NURI)は今日になって勢力を急速に強めており、もう少し発達したところで勢力のピークを迎えそうです。今後の進路は、次第に東へ向きを変えてくる見込みです。

2014年10月31日 16:30 JST

台風20号(NURI)がフィリピンの東で発生しました。当面はゆっくりとしたスピードで動く予報です。

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