2011年3月11日を忘れないために、
私たちはどうすればいいでしょうか?

あれほど衝撃的だった震災の記憶も、日々の生活の中で、
徐々に風化していくことは避けられません。
そんな震災の記憶を振り返るための「静かに動く年表」、
それが311メモリーズ(東日本大震災メモリーズ)です。

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3.11以来のニュースキーワードの変遷を見る >

東日本大震災に関するニュース記事を自然言語処理で分析し、3.11以来の時間の流れを「静かに動く年表」に再編集したウェブ作品。システムに動作を委ねる受動的な視聴モードでは、経典のような文字の流れから選ばれるキーワードとの偶然の出会いを契機に、あの時以来の記憶をよみがえらせていく ...

311 Memories Demonstration Video from Asanobu KITAMOTO on Vimeo.

Concept

この年表(タイムライン)は、東日本大震災に関してマスメディアが報じたニュース記事を対象に、重要なキーワードを日ごとに10個、アルゴリズムで自動的に選び出して、そのキーワードを含む記事のタイトルを表示します。この年表の元となる情報は東日本大震災ニュース分析で提供してきましたが、こうしたウェブサイトで情報を得るには自ら探し回るという能動的な行動が必要となるため、震災の記憶に没入しながら時の流れを振り返れるような情報環境を実現できないという問題がありました。そこで「311メモリーズ」は年表のスクロール等の操作をシステムに委ねることで、テレビのように見ているだけでも震災の記憶を振り返ることができるようにしました。

サイトを見ていると、この年表は自動的にスクロールを開始し、経典のような文字の並びが画面を流れるようになります。そして、ランダムにキーワードを選び、そのキーワードを含む記事のタイトルをピックアップして表示するようになります。そしてキーワードとの偶然の出会いをきっかけに、2011年3月11日(3.11)以降に発生したさまざまな出来事を回想していきます。改めて東日本大震災が及ぼした大きな影響と社会の変容を振り返りつつ、震災からの復興と次の災害への備えについても考えてみて下さい。

「311メモリーズ」は、「メモリーズ」シリーズとしては2番目の作品です。最初の作品は2009年に公開した伊勢湾台風メモリーズ2009で、伊勢湾台風の記憶に焦点を合わせた作品でした。今回の作品とは構成がやや異なりますが、データを用いてクライシスを再構成し、それを時間の流れの中で可視化して記憶を喚起する、というコンセプトには共通性があります。今後は311メモリーズも、伊勢湾台風メモリーズ2009と同様にビジュアルデータを含めて大空間で展示するなど、メディアアートとしての展開も考えていきたいです。

Award

第16回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品

Media Coverage

NIIニュース - 国立情報学研究所 (2012-12-13)

ひと:北本朝展さん 「311メモリーズ」ネット上に公開 - 毎日新聞 (2013-01-11)

Japanese researcher makes unique website keeping 2011 disaster memories alive - The Japan Daily Press (2013-01-11)

つながる時間を見える形に 北本朝展さん - MAINICHI RT, No. 208, Vol. 3, 12-13ページ (2013-01-30)

震災の記憶を 今も刻み続けて - NHK NEWS WEB 震災特集 (2013-03-07)

Summary

2011年3月11日を忘れないために、震災の記憶を振り返るためのウェブサイトとして作成したのが「311メモリーズ」(別名:東日本大震災メモリーズ)である。まず東日本大震災直後から震災関連ニュース記事(ヤフーニュース)の収集を継続し、これまでに約30万件の記事を収集した。次に自然言語処理を用いてニュース記事を単語に分解し、その統計値から日ごとの重要キーワードを10個アルゴリズムで自動的に選び出した。そして日ごとのキーワードを時系列的に並べることにより、その日に何が話題になったかを表現する一種の年表(タイムライン)を作成した。この年表は利用者が能動的に情報を探索するモードでも利用できるが、自動的にスクロールして、ランダムにキーワードを選び、記事タイトルを表示し続けるという受動的なモードでも利用できる。後者のモードでは情報の選択をシステムに委ねられるため、年表という構造の中でたまたま表示されるキーワードに出会うというセレンディピティも利用して、過去の記憶を静かに振り返る行為に没入できるようになった。このような受動的なインタフェース「静かに動く年表」を通して、震災時の生々しいデータに改めて触れることにより、あの時の記憶を呼び覚まして忘却を押しとどめる、それが本システムの意義であると考えている。