2007年09月01日

「台風前線2」の公開

ユーザ参加型台風情報サイト「台風前線」は、2007年9月1日(防災の日)に、後継バージョンである「台風前線2」を公開します。

「台風前線2」の概要

「台風前線2」ではユーザ参加を促進するためのしくみとして、1) いろいろな方法で、2) いろいろなきっかけから、3) とりたてて意識しなくても、ユーザが参加できるような機能を実現しました。以下に「台風前線2」の新機能を簡単にまとめます。

ケータイからのメール投稿および写真・動画・GPSへの対応

「台風前線2」ではケータイ(携帯電話)からのメール投稿を受け付けます。昨年公開の「台風前線1」では、ブログからのトラックバックによる投稿のみを集約していましたが、今回公開する「台風前線2」ではケータイからのメール投稿が新たに加わり、自分のブログを持っていない多数の人々からの参加が増加することが期待できます。

ケータイからのメール投稿には、写真や動画の送信に対応しやすいというメリットもあります。現地の状況を写真で撮影してその場から送信することにより、文章では表現が難しい現地の状況を伝えることができますし、さらに動画を使うことにより、風で揺れる木や大粒の雨が降る光景などをリアルに伝えることも可能になります。

また「台風前線1」のシステムをケータイメール用に拡張することで、ケータイメールの場合もトラックバックと同様に、地方自治体や郵便番号に基づく地理情報を付与できるようにしました。さらにGPS(Global Positioning System)対応ケータイを利用すれば、写真に緯度経度を埋め込むことで詳細な地理情報を送信することもできます。

なお現在のところ、比較的新しいケータイ機種への対応を重点的に進めているため、古いケータイ機種ではすべての機能が利用できない可能性があります。また、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、ウィルコム各社のケータイから発信されたメールのみを受け付ける設定となっています。さらにケータイ機能の強化に合わせて、「台風前線」のHTML版である「台風への眼」と同様の情報を提供する「台風への眼/ケータイ」も同日にオープンします。

アメダス大雨・強風イベント検出との連動

気象庁アメダスデータから大雨と強風をほぼリアルタイムで検出します。そして大雨と強風が発生したアメダス観測所の場所を「台風前線2」の地図上に表示するとともに、トラックバックやメールの投稿システムを連動させることで、大雨や強風が発生した場所からの情報発信を誘発していきます。

「台風前線1」は、台風の発生と動きという実世界のイベントが情報発信を誘発するという構造になっていましたが、「台風前線2」にはさらに、大雨と強風の発生という実世界のイベントが情報発信を誘発するという構造も加わります。つまり「台風前線」シリーズにおける実世界とネット世界の融合は、実世界におけるイベントの発生がネット世界への情報発信を誘発するという方向に進んでいくことになります。

なおこの機能は、「アメダスイベント検出」として、2007年8月6日に「デジタル台風」ウェブサイトで提供を開始しています。今回はこの機能が「台風前線2」と連動することになりました。また本サイトでの大雨と強風の定義ですが、およそ2年に1回以下しか発生しないような大きな観測値と定義しています。ただし検証がまだ不十分な実験的サービスであるため、必ず気象庁等の信頼できる情報源で詳細をご確認ください。

ウェブサイトアクセスの地理的分布の可視化

ウェブサイトへのアクセスの地理的な分布をリアルタイムで計測することにより、台風の動きに伴って世界各地における台風情報へのニーズがどのように変化するかを、時間的なアニメーションで可視化することを可能としました。例えば台風の接近に伴って、進路にあたる場所からのアクセス強度が増加するといった変化を可視化することができます。具体的には、ウェブサーバへのアクセス元IPアドレスを緯度経度に変換し、その頻度を過去数年間の統計データと比較することにより、ある地域からのアクセス強度を計算するという方法を用いています。

この機能のさらに大きな狙いは、参加型台風情報の概念を広げるところにあります。「台風前線1」では、システムへの参加者として可視化されるのは、トラックバックを積極的に送信する人に限られていました。それに対して「台風前線2」では、ある地域でネットに接続しているユーザがウェブサイトにアクセスするという行為そのものが、アクセス状況の地理的分布の可視化という機能に参加することになります。

情報の投稿という能動的な参加に比べると、ウェブサイトへのアクセスというのはかなり受動的な参加ではありますが、台風情報へのニーズを顕在化させるという側面においては意味のある参加とも考えられます。さらにこの情報は能動的な参加者にとっても、自分が投稿した情報が世界の多くの人にアクセスされているという、ビジュアルなフィードバックとなります。とりたてて意識しなくても参加することができる、そのようにシステムをデザインすることで、ユーザ参加という概念を広げていきたいと考えています。

なお、アクセス元IPアドレスを緯度経度に変換する機能の精度は低いものですので、アクセス元のプライバシーが侵害される恐れはほとんどありません。またアクセス頻度の計測には、いわゆるユニークビジター(30分以内の同一IPアドレスからのアクセスは重複カウントしない)を利用しています。

まとめ

「台風前線2」は、「台風前線1」で実現した参加型台風情報という考え方をさらに拡大し、もっといろいろな方法で(ケータイメール)、もっといろいろなきっかけから(大雨・強風イベント検出)、とりたてて意識しなくても(ウェブサイトアクセス)参加できるように、システムをデザインし構築しました。これによって、多数の多様な人々が参加できる情報プラットフォームを構築し、より多くの場所の情報が迅速に把握できるような情報の集積点(ハブ)を育てていきたいと考えています。

なお、将来計画として、ウェブサイト上で短いメッセージを投稿する機能(コメント機能)を付加する予定です。ただし実現時期については現在のところ未定ですので、「台風前線2」ではこの機能が現在はオフになっています。

アーカイブ

これまでのバージョンである「台風前線1」もアーカイブとして残しています。こちらのバージョンに慣れ親しんだ方、あるいはこちらのバージョンの方が好きだという方は、引き続き「台風前線1」をご利用いただけます。ただし当然ながら、「台風前線2」で新たに導入された機能は利用できません。

関連ウェブサイト