デジタルアースの災害・環境への利用—デジタル台風、エレクトリカルジャパンの経験から

「デジタルアース」は、地球に関するデータへのアクセシビリティをユーザ視点から包括的に提示したコンセプトであり、情報インタフェースのあるべき姿からバックキャスティング的に技術課題を明らかにした点に価値があると考えている。この視点から、我々の2つのプロジェクト、すなわちデジタル台風およびエレクトリカルジャパンの経験を振り返ってみると、地球に関する「リアルタイムメディア」という最終形を想定しながら、個別の研究課題に取り組んできたと言える。ここで「メディア」という言葉は、ユーザに情報を伝えること、すなわちデータを何らかの形で加工してユーザが受け取りやすい情報にするという意図も含めた言葉である。その理由は、災害や環境の分野においては、結局のところユーザのアクションに結びつかなければ、物事は解決しないことが多いからである。

メディアを作るには何段階にもわたるプロセスが必要である。まずデータを収集して蓄積する段階がある。こうしたデータ基盤を持続的に維持しつつ、より高度な情報を抽出できるように研究開発も進めることにはいくつもの課題がある。次にキュレーションの段階、すなわち多種多様のデータを編集して伝わる形に加工する段階がある。そのためには、ユーザが見たい、あるいはユーザが見るべき情報は何か、という問いを出発点とすることが重要である。最後に、メディアの段階、すなわち編集した情報を発信するフォーマットやサービスを構築する段階がある。その最適解はドメインに依存するため一般的に理論化することは難しいが、情報へのインタフェースは3次元地球というメタファーに必ずしも縛られる必要はないと考えている。ユーザがあらゆる情報を俯瞰的かつシームレスにアクセスできる環境を提供するというデジタルアースの根本にある精神を、自分なりに解釈してみることが重要ではないだろうか。

文献情報

北本 朝展, "デジタルアースの災害・環境への利用—デジタル台風、エレクトリカルジャパンの経験から", シンポジウム「デジタルアースの利用事例からデジタルアース構築の課題を考える」持続可能な発展のためのデジタルアース, 2016年12月 (招待)

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