オープンサイエンスの潮流:研究スタイルの変化とプラットフォーム化する研究資源

オープンサイエンスは、学術研究をよりオープンなものに変えるという理念を共有する運動であるが、具体的な活動のレベルではオープン化の方向性も様々であり、そのことがオープンサイエンスの全体像をかえってわかりづらくしている面がある。そこでこの全体像を一種の「オープンサイエンス大戦」として捉え、個々の「戦線」が異なる関係性と戦略課題を抱えつつも、全体として「オープン化」という共通の理念を目指して動いている状況を俯瞰的にまとめたい。

こうしたオープンサイエンスの潮流に対応して、個々の研究者あるいは組織にも変化が求められることになる。この変化はすでに起こっているものもあれば、長期的に徐々に浸透していく変化もある。そしてその変化が引き起こす研究スタイルの変化に対する研究者や関係者からの反発も、先に述べた「戦線」の一つとなっている。ただし学術研究を取り巻く環境が変化する中で、学術研究はどうあるべきかという問いがオープンサイエンスの根底にある以上、現状の単なる延長ではない未来像を考えていくことも必要である。

そうした未来像の中で研究資源をどうすべきか、というのが本講演の主要な問いである。「研究資源」を研究の支えとなる資源と定めるならば、それは研究論文だけに限定されるわけではなく、研究データ、研究ネットワーク、計算資源、相互運用性なども研究資源の一部であり、さらに人的基盤や組織的基盤などにも十分に目配りすべきである。こうした基盤をより持続可能なものとするために、共有できる部分は共有するというプラットフォーム化のトレンドの中で、研究資源の提供側は何をすべきだろうか。こうした点について、我々は研究データ利活用協議会小委員会「ジャパン・データリポジトリ・ネットワーク(JDARN)」などの場で議論を進めており、そこで得られた知見の一部を紹介したい。

最後に、自分自身が取り組んでいる研究資源のプラットフォーム化の例として、沖縄にも縁が深い台風に関するプラットフォーム「デジタル台風」、地球環境データのプラットフォーム「DIAS」、人文学データのプラットフォーム「人文学オープンデータ共同利用センター」などを具体的に取り上げ、それらがどのような考え方に基づきオープンサイエンスを実践しているかを紹介する。

文献情報

北本 朝展, "オープンサイエンスの潮流:研究スタイルの変化とプラットフォーム化する研究資源", RIIS学内セミナー『島嶼地域科学研究所・研究資源データベースの構築に向けて』, 2019年2月 (招待)

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