1. Google Earth/グーグルアース版台風情報

Google Earth(グーグルアース)向けの台風情報をKML (Keyhole Markup Language) Network Linkにより提供開始しました。使い方はおおよそ以下の通りですが、バージョンによっては操作方法が異なる可能性があります。

  1. Google Earthをインストールし、以下のURL(kmlまたはkmzで終わるもの)をクリックする。
  2. システムがうまく設定されていれば、Google Earthが自動的に起動し、気象衛星画像がGoogle Earth上に表示される。
  3. "Places"に"Temporary Places"が現れるので、そこを開いたり閉じたりしながら、気象衛星画像と台風情報の表示/非表示を選択する。
  4. 気象衛星画像に対しては、"Places"の下に表示されるスライドバーを動かすことにより、透明度を変化させることができる。
  5. データは3600秒(1時間)おきに自動更新する設定となっているが、手動で更新したい場合には、項目の上で表示される右クリックメニューから"Refresh"を選ぶ。

なお台風経路についてはGoogle Earthに加え、台風進路予想図のページではGoogle Mapsでも閲覧できます。

静止気象衛星画像のみ

気象衛星「ひまわり」の最新画像(北緯60度〜南緯60度/東経80度〜西経160度)を、1時間ごとに自動更新します。4個の赤外チャネルのうち、初期設定では赤外チャネル1を表示します。他のデータを切り替えて表示させることもできます。また透明度スライダを適当に調整すれば、Google Earthが提供するデータと重ね合わせて見ることができます。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/globe.ja.kml

また、Google Earth 4 で利用可能となったタイムスケール(タイムライン)機能を使うと、最新24時間の雲の動きをアニメーションとして見ることができます。ただし以下のリンクは非常にデータサイズが大きく、おそらくスムーズに表示できないと思いますので、できるだけ地域拡大画像の方のGoogle Earthアニメーションをご利用ください。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/globe-t.ja.kml

現在発生中の台風情報+静止気象衛星画像

気象衛星「ひまわり」の最新画像に、現在発生中の台風に関する情報とを重ね合わせます。気象衛星画像については、こちらも赤外チャネル1の表示が初期設定となっており、更新頻度は1時間です。台風情報については、気象庁予報部発表の台風情報を3時間おきに更新します。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/active.ja.kml

また、Google Earth 4 で利用可能となったアニメーション(タイムライン)機能は、以下のリンクからご利用できます。ただし、こちらでは台風の動きがイマイチよくわからないかもしれません。この下の過去の熱帯低気圧情報の方が、よりアニメーションらしさを体感できます(2006-09-14)。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/active-t.ja.kml

なおGoogle Earth版では過去の経路情報のみを表示しています。台風予報に関する情報は、Google Maps版の台風進路予想図をご利用下さい。

過去の熱帯低気圧情報

過去の熱帯低気圧(台風/サイクロン)の情報については、「気圧・経路図」に表示される「Google Earthで閲覧する」リンクをご利用下さい。過去の台風は台風シーズンごとの台風リストからもたどることができますが、最近の台風情報は以下のKMZでも提供しています。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/typhoon/this-year.ja.kmz

最近5年間は: 2024年2023年2022年2021年2020年、 をお使い下さい。

また、Google Earth 4 で利用可能となったアニメーション(タイムライン)機能を利用する場合には、以下のリンクをご利用下さい。アニメーション機能としては、こちらの方が面白いと思います(2006-09-14)。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/typhoon/this-year-t.ja.kmz

こちらも最近5年間の台風情報については、 2024年2023年2022年2021年2020年、 をお使い下さい。

最後に1951年以来すべての台風を表示するKMZを提供します。ただし、データが非常に巨大でソフトウェアやシステムがクラッシュする可能性がありますし、台風の数が多過ぎて何がなんだかよくわからないと思いますので、こちらの閲覧はあまりおすすめしません。

http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/kml/typhoon/wnp/all-t.ja.kmz

過去の台風に関するアメダス降水量と風の分布

過去の台風(1976年以降)の全国的なアメダス降水量・風の分布を見るためには、個々の台風の総合情報から「災害」情報に移動して下さい(例えば台風200514号の災害情報ページ)。そのページに表示される"Google Earth KMZ"リンクで各種の気象観測値の全国的な分布を見ることができます。その表現方法は、高さが気象要素観測値の強度に比例し、色はアメダス観測所のランキング(トップ10は赤、トップ50はオレンジ、トップ200は黄、その他は白)を表しています。

加えてこちらでも、Google Earth 4で導入されたアニメーション(タイムライン)機能を利用して、台風の動きとアメダス降水量・風の変化を同期させたアニメーションを作成しました。「降水量アニメーション」および「風アニメーション」をご覧下さい。両方ともかなり重いファイルですので、メモりを十分に積んだマシンでない場合はトラブルが発生する可能性があります。

地域拡大気象衛星画像

各地域を拡大した気象衛星画像のKMLファイルのURLについては、気象衛星画像:地域拡大画像のページにまとめます。なお、こちらについてもアニメーション機能が利用できるようにしました。気象衛星画像の雲パターンがGoogle Earth上で動きます。

アメダス観測所

個々のアメダス観測所の位置を収めたKMLファイルを、アメダス統計以下のページで、"Google Earth KML"というリンクで用意しています。個々のアメダス観測所が、実際にどのような地形やどのような環境の場所にあるのかを、いろいろな角度から確認することができます。

ただしアメダス観測所の位置を確認する際には注意が必要です。例えばアメダス観測所44131(東京)を見てみます。Google Earth KMLをクリックしてみると、アメダス観測所のアイコンは太い道の上に表示されてしまいます。しかしアメダス観測所がそんな場所にあるわけはなく、実際には気象庁本庁の横、すなわち(北を上にして)アイコンから右上方向、ビルを越えた芝生スペースに(一部)設置されています(実際の位置はこのページのGoogle Earth KMLで確認)。つまり、アイコンの位置とアメダスの位置とは、およそ120メートルもずれていることになります。

なぜこのように両者の位置がずれてしまうのでしょうか。これは、アメダス観測所の位置があまり正確には公表されておらず、緯度・経度の精度が高々0.1分であることが原因です。0.1分の精度ということは、東西南北方向にそれぞれ最大0.05分=3秒の誤差が生じることになりますが、これは東京付近では最大約120メートルの誤差に相当します。これがアイコンと設置場所とのずれの原因です。アメダス観測所はアイコンが表示された位置の真下にあるのではなく、その点を中心とする半径100メートルぐらいの周囲のどこかにあると考えてください。

参加型メディア

参加型メディアによる台風情報「アイフーン」では、位置情報つきのローカルな台風情報を、参加型システムにより収集しています。この情報を台風経路とともにGoogle Earth上で見るためのKMLを提供しています。

台風ごとのトラックバックリストのページを表示すると、簡易日本地図の下に「Google Earthで閲覧」というリンクがあります。このリンクは、トラックバックの位置とエントリの内容、そして台風経路をGoogle Earth上に重ね合わせて表示することができます。

さらに「Google Earthで閲覧(アニメーション)」というリンクでは、トラックバックの位置および台風の動きをアニメーションとして表示し、時間とともにトラックバックがどのように増えていったのかをGoogle Earth上で見ることができます。ただしアニメーションの面白さと質の高さについては、Google Earthよりも台風前線の方がおすすめです。

なお、都道府県のアイコンは県庁(都庁・府庁・道庁)所在地に、またトラックバックに地方自治体(郵便番号)が指定されている場合には、地方自治体の代表点にアイコンを表示します。最適ではない位置にアイコンが表示されることもありますが、すべて自動処理をしておりますのでご了解下さい。詳しい情報については、CSVアドレスマッチングサービス(東京大学)をごらん下さい。

過去の台風災害データ

気象庁が提供する異常気象・気象災害データをまとめた「気象災害データベース」では、検索結果をGoogle Earth上で表示するためのKMLを提供しています。具体的には都道府県レベルで気象災害件数を集約し、日本各地での分布と都道府県ごとの災害リストを見ることができます。

基準を指定して検索すると、画面の下の方に「都道府県でグルーピング」という項目があり、その簡易地図の下に「Google Earthで閲覧」というリンクが表示されます。このリンクを使ってGoogle Earth上に気象災害の分布を表示します。

バグと不具合

  1. 異常に頻繁にサイトアクセスを繰り返す場合があるようです。原因は不明ですが、できるだけ最新版のGoogle Earthをお使いください。Google Earthのメニューで "Help" > "Check for Updates Online" により、最新版の有無を確認できます。
  2. Google Earth 4をお使いの際に、静止気象衛星画像がチラチラしてうまく表示できない場合には、Tools > Options > Cache で Memory Cache Size を大きく(例えば256)してみて下さい。
  3. アニメーション(タイムライン)機能は最新のGoogle Earth 4でないと利用できない可能性がありますので、必ず最新版のGoogle Earth 4をダウンロードしてご利用ください(このアップデートは"Check for Updates Online"では検出できないかもしれません)。

2. 気象情報や地理情報・地球科学情報に関係するKML

気象情報や地理情報・地球科学情報に関係するKMLをまとめます。このように位置に関する情報が極めて重要なアプリケーションでは、RSSのような単純なフォーマットに地理情報を載せるよりは、地理情報や空間情報向けにもともとデザインされたKMLのようなフォーマットによる配信サービスと、Google EarthのようなKMLリーダによる閲覧の方が便利かもしれません。将来的には防災などにも重要な役割を果たすことになりそうです。

3. Google Maps版

上記のファイルをGoogle Maps上で表示するには、上記のKML/KMZファイルをGoogle Mapsに読み込ませれば表示することができます。それに加え、以下のページではGoogle Mapsを使って情報を提供しています。

  1. 台風進路予想図
  2. リアルタイムアメダス降水量マップ
  3. リアルタイムアメダス風向・風速マップ
  4. アメダスイベント検出
  5. リアルタイム気象(雨雲)レーダーGPV画像
  6. ツイフーン
  7. 台風なう!

4. 他の応用例

Google Earth 4で古地図を表示する追加レイヤが話題になっていますが、実は私も別のプロジェクトで、古地図のレイヤを2006年6月から公開しています。こちらではSuper-Overlayを用いた広域古地図の高精度ズーム、Blue Marble Next Generationデータを用いたシルクロード季節変動のGoogle Earthアニメーションなどを提供しています。台風情報とは関係ありませんが、もしご興味がおありでしたら以下のページをご覧ください。

5. NASA World Wind

NASA World Windでも、最近はKML/KMZへの対応が進んできたようですので、興味のある方はこちらもお試し下さい。将来的にはWorld Windへの対応も、特にWMS (Web Map Service)を用いたデータ閲覧という方向から強化していきたいと考えています。

6. Google Earthの歴史

Google社によるGoogle Earthは、同じ会社によるGoogle Mapsとは異なる出自を持っている。Google Earthの源流をたどると、1998年に当時の米国副大統領アル・ゴアが提唱したDigital Earth構想に行きつく。当時の米国ではブロードバンドを活用したネットサービスの一つとしてDigital Earthという概念が提唱され、シームレス(つなぎ目なく)時空を移動できるような仮想地球を実現するソフトウェアを作ろうという気運が盛り上がった。

そうした構想の実現に向けて開発をスタートした会社の中に、Silicon Graphics (SGI)社があった。SGI社は当時はコンピュータグラフィックス分野の中心的な企業であり、3次元的な地球を実現するための技術を蓄積していたからである。こうして開発がスタートしたものの、2000年の大統領選挙でゴアが敗北すると開発に向けた熱気は消え、Digital Earth構想は冬の時代を迎えることになる。

そしてSGI社における開発メンバーも会社からスピンアウトしてKeyhole社を立ち上げ、「Earth Viewer」というソフトウェアの開発を続けていった。このソフトウェアはGoogle Earthの前身となる機能は備えていたものの、ベンチャー企業としては揃えられるデータに限界があり、また有料のソフトウェアでもあった。ところがKeyholeは2004年10月にGoogleに買収され、その製品は2005年6月にGoogle Earthに生まれ変わった。この時点で無料のソフトウェアとなり、利用は一気に広がることとなった。

そしてリリースから数か月後、米国・ニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」の大災害によって、Google Earthはさらに地名度を高めることになる。登場したばかりのGoogle Earthの上に多くの災害情報がオーバーレイされて共有されることで、Google Earthが災害情報の共有に有効であることが広く知られるようになった。その後もこうした目的にはGoogle Earthがよく使われている。

とはいえ、地図を表示するためのシステム自体は、地理情報システム(GIS)と呼ばれて1960年代から存在していたものである。そうした既存のシステムに対して、Google Earthはどこが革新的だったのだろうか。それは、Google Earthが情報可視化と情報共有を前面に打ち出した点にあると考えている。それまでのGISは情報分析を主目的とするシステムであったため、情報の共有は難しかったし、誰でも簡単に扱えるものではなかった。当時はオープンソースソフトウェアも充実しておらず、GISを買い揃えるには多額の投資が必要だった。それに対して、Google Earthはまず無料であるという点が驚きであったし、KMLという簡単なフォーマットに情報を載せるだけで誰でも共有できるという点も便利だった。つまり、実は分析よりも可視化や共有の方が人々のニーズは圧倒的に大きかったのである。Digital Earth構想からの流れでそこに目をつけていたことで、結果的にインターネット地図に破壊的イノベーションを巻き起こすことになった。

GIS業界は当時そのニーズに気付いていなかったのか、Google EarthはGISとして未熟であるといった批判も行った。しかし、そもそも既存のシステムとは思想が違うため、そうした比較は意味がなかった。そうした違いに気付くには長い時間がかかったが、現在はGIS業界も積極的に参加の敷居を下げるようなソフトウェアを出してきており、Google Earthの方向性もカバーするようになってきている。

ちなみにデジタル台風の「デジタル」とは、上の「デジタルアース」のデジタルである。つまり、このサイトの当初の意図は「デジタルアースの発想に沿った台風サイトを作る」というもので、その意味でデジタルアースという概念には大きな影響を受けているのである。またdigital-typhoon.orgドメインを取得したのは2000年7月4日であり、まさにゴアが演説をした2年半後のことであった。