1. 概要

特にリモートセンシング画像のように空間解像度が粗い画像に多く出現する「ミクセル」と呼ばれる画素の確率モデルに基づく、新しい統計的画像分類法を提案する。なお、現在はこの手法を比率成分解析FCA(Fractional Component Analysis) と名付け、より広い枠組みでその性質を解明することを目指している。

2. ミクセルが出現する場合の統計的画素分類法

「統計的パターン認識」とは、画像を画素の集合と考えた時の、画素値が示す統計的性質を用いて画素の分類を行う方法を指す。本研究では「混合密度推定」という方法を応用して、「ミクセル」というタイプの画素を適切に分類できるような手法の開発を進めている。

ではこの「ミクセル」とは何か? 従来の画像処理アルゴリズムは基本的に、画素の内部はたった1つの分類クラスを含む均一なものであるという仮定をしてきた。しかしこの仮定は、粗い解像度のセンサで撮影された画像に対しては成立せず、たった1画素の中にも複数の分類クラスを含むことがある。そこで本論文では、このような異質な画素「ミクセル」の統計的な性質を明らかにし、さらに画像分類問題に対してミクセルの統計的性質を利用した新たな手法を提案する。

本研究と従来の研究で最も異なる点は問題の定式化にある。従来の研究では、個々の画素における各分類クラスの混合比率を算出する問題に焦点を当てていた。それに対し本研究では、ミクセル画素全体が示す統計的性質に焦点を合わせる。このように定式化することによって、我々はミクセルに関する新しい確率モデル「ミクセル密度」の概念に到達した。そしてこのミクセル密度を任意の分布の組合せから構成する一般的な方法を導出し、特に2クラスミクセル密度が中心部に平坦な部分を持つという性質を明らかにした。この平坦な部分が、実際の画像ヒストグラムに頻繁に出現する「裾の長い分布」に対応することから、このモデルを用いることにより画像ヒストグラムを有限混合密度としてより的確に表現できるようになり、しかもその結果を利用することにより画像分類(対象は気象衛星NOAAのリモートセンシング画像)の精度も向上することを実験により確かめた。

このような概念を用いた画像分類手法は、我々の知る限り今までに用いられたことがなく、その意味で我々の提案する手法は画像分類に対して新しい見方を提供するものである。今後はさらにこの概念を追究してその意味するところを明らかにしていくとともに、本研究の提案する手法を完全に自動的に適用できるように、さらに手法を改善していく予定である。

3. 参考文献(全リスト

  1. Asanobu KITAMOTO, "The Moments of the Mixel Distribution and Its Application to Statistical Image Classification", Advances in Pattern Recognition (SPR'00), Lecture Notes in Computer Science (LNCS) 1876, Amin, A. and Ferri, F.J. and Inesta, J.M., and Pudil, P. (編), pp. 521-531, Springer, doi:10.1007/3-540-44522-6_54, 2000年08月 (in English) [ 概要 ] [ PDF ]
  2. Asanobu KITAMOTO, Mikio TAKAGI, "Area Proportion Distribution -- Relationship with the Internal Structure of Mixels and its Application to Image Classification", Systems and Computers in Japan, Vol. 31, No. 5, pp. 57-76, 2000年05月 (in English) [ 概要 ]
  3. Asanobu KITAMOTO, Mikio TAKAGI, "Image Classification Using Probabilistic Models that Reflect the Internal Structure of Mixels", Pattern Analysis and Applications, Vol. 2, No. 1, pp. 31-43, doi:10.1007/s100440050012, 1999年04月 (in English) [ 概要 ]
  4. 北本 朝展, 高木 幹雄, "ミクセルの内部構造を反映する面積占有率密度を用いた画像分類法", 電子情報通信学会論文誌, Vol. J81-D-II, No. 11, pp. 2582-2597, 1998年11月 [ 概要 ]
  5. 北本 朝展, 高木 幹雄, "ミクセル密度を含む混合密度推定を用いたミクセルの面積占有率推定", 電子情報通信学会論文誌, Vol. J81-D-II, No. 6, pp. 1160-1172, 1998年06月 [ 概要 ]