本論文は、日本(国立情報学研究所)とタイ(アジア工科大学)の国際共同研究として進められているプロジェクト、台風画像データの収集および台風情報データベースの構築に関する報告である。過去の統計データによると東南アジア地域は、北西太平洋で発生する台風の約3分の1が通過する。この危険地域における台風災害を防止し損害を軽減するために、台風解析と予報という問題に徹底的に取り組むことには大きな意義がある。本プロジェクトのユニークな点は、この問題に対して気象学の手法に基づく従来のパラダイムではなく、情報学の分野で発展したアイデアや手法を援用した情報学パラダイムに基づいて挑戦する点にある。このような新しいパラダイムにおいて研究の土台となる台風画像の大規模コレクションは、主に気象衛星GMS-5「ひまわり」の衛星画像から作成する。ただしGMS-5は、東南アジア地域を観測する際に、実質的な解像度の低下と雲形状の歪みが生じるという欠点を有する。そこで本論文では、別の種類の衛星データ、すなわちタイで受信するNOAA衛星データを組み合わせることにより、相互に欠点を補完し高品質な台風画像が得られることを示す。さらにこのような大量の衛星データをネットワーク経由で交換するための基盤として、日本とタイの間で運用されるSINET国際回線が有効であることを述べる。
@Article{ ko:nii2,
author = {北本 朝展 and 小野 欽司},
title = {日本とタイの国際共同研究に基づく台風データの収集および台風画像データベースの構築},
journal = {NII Journal},
number = {2},
pages = {15-26},
year = 2001,
month = 3,
doi = {},
note = { (in English)},
}