気象庁防災情報XMLの利活用

気象リスクウォッチ・火山噴火リスクウォッチ・地震リスクウォッチなど、様々な目的に利活用している気象庁防災情報XMLについて、その概要と本サイトの特徴などをまとめます。

概要

気象庁防災情報XMLとは、気象庁が発表する気象、地象、水象に関する電文をXML形式で表現したデータですが、気象情報のより一層の利活用の推進を図るために、気象庁はこのXML電文を試行的に公開しています。公開方式にはいわゆる「プッシュ送信」という仕組みを使っており、更新情報をリアルタイムで入手して処理することが可能です。

多くの場合、このような気象情報は「フロー情報」として流れてすぐに消えてしまいますが、本サイトではこれをすべてアーカイブして「ストック情報」とし、事後的に発表履歴を検索・分析できるデータベースを構築しました(参考文献)。そして気象や地象、防災や季節などの用途に応じて加工するとともに、データセットを対象とした統計分析や可視化などの機能も提供することで、例えば災害時の情報流通は適切だったのかといった調査を事後的に行えるようにする環境を提供します。

本サイトは、2012年12月の試行サービス開始以後のデータを網羅的に収集しています(日ごと電文数)。

データベースの構築

気象(防災)

まず中心となるのが、気象に関する防災情報です。これらはリアルタイムでの活用が主な目的ですが、リアルタイムでデータをアーカイブしていくことにより、検索などを用いて過去のデータを分析することも可能としています。

なお、台風に関する情報は、デジタル台風との統合を進めています。具体的には台風予報円データの過去の履歴を一覧可視化する機能や、台風に関する全般台風情報のリストを閲覧できる機能などを提供しています。例えば台風201419号の例を示します。

台風19号の「台風予報履歴マップ」を作りました。http://t.co/fUFkcJECWq
3時間ごとの予報位置だけでなく、予報がどう変わってきたか(外れてきたか?)かも確認できます。午前九州、午後四国、夜間関西、未明関東です。 pic.twitter.com/V1f6AfvLvx

‐ 北本 朝展 (@KitamotoAsanobu) 2014年10月12日

特に2種類の台風予報履歴は他に類例がないユニークな機能であり、台風予報の変化に注目しながら防災対策を随時変更していくなど、今後のタイムライン防災にも有用な機能となることが考えられます。

このようにリアルタイムのフロー情報としての活用だけではなく、これを蓄積してストック情報とすることで、統計分析なども可能となってきます。例えば、警報・注意報はどこの地域で多いのか、またそれぞれの地域にはどんな気象リスクがあるのかといった疑問を持ったとしても、そうした過去の警報・注意報の履歴を調べることは容易ではありませんでした。しかし本サイトのデータベースを活用することで、例えば最も発表回数が多い注意報はどれ?といった、知っているようで知らない質問にも答えることができるようになります。

気象(季節)

気象は季節の移りかわりと密接に関連しているため、ここには防災情報だけでなく季節情報としても有用な情報があります。

まず生物から季節の変化を知るデータベースです。平年値との比較やシーズンごとの違いなどを見ることで、毎年の季節の特徴を知ることもできるでしょう。

次に北海道に特有の季節現象として流氷があります。ひまわり気象衛星画像と気象庁防災情報XMLを組合せることで、流氷の動きを画像とテキストから把握できます。

地象(地震)

地象のうち地震については、震源・震度情報を提供しています(津波情報は提供していません)。

特に後者の震度データベースは、震度観測点の数で地震の影響の広がりを調べたり、それぞれの震度観測点で過去にどんな地震があったかを調査できるなど、他サイトにはあまりない独自機能を提供しています。

また、震源・震度情報をアーカイブすることによって、過去の地震における震源の空間的・時間的な変化などを後から確認することも可能です。なお気象庁防災情報XMLのアーカイブが2012年12月から始まっているため、東日本大震災直後のデータはありません。

今夜の一連の地震は「空白域」を一つ一つ埋めるように東に延びてきた。
先ほど発生した
3:55 阿蘇地方 最大震度 6強
の地震も空白域を新たに埋めた。この動きが止まる気配が見えない。https://t.co/MqbGI6Hseu pic.twitter.com/RHRt50xCJh

‐ 北本 朝展 (@KitamotoAsanobu) 2016年4月15日

地象(火山)

地象のうち火山については、噴火情報や解説情報、降灰情報などを提供するとともに、気象庁防災情報XMLを用いて噴火警戒レベルの更新も行っています。

上記サイトでは、噴煙が流れる方向を上空の風向きで予測したり、噴石の広がりを気象レーダー画像で確認するなど、噴火情報と気象情報を地理的に統合した情報を提供しています。気象と地象のように「対象」を越えた統合サービスは、気象庁が提供するサービスでも実現できていませんが、本サイトでは複数のオープンなデータセットを活用することでこれを実現しました。

8日未明に阿蘇山が噴火し、噴煙が11000mまで上昇したと推定されています。気象衛星ひまわり8号の赤外画像B13(赤い画素が雲)で確認すると、午前2時頃に阿蘇山の北東にポッと赤い塊が出現し、拡大しつつ東に流れていく様子が見えます。https://t.co/Id5uDcI5Ov pic.twitter.com/WXhT0QNBmf

‐ 北本 朝展 (@KitamotoAsanobu) 2016年10月8日

ツイッターへの発信

気象庁防災情報XMLの一部はツイッターでリアルタイムに発信することで、最新情報への注目を高める試みを続けています。

発表文献

  1. 北本 朝展, フローとストックのシームレスな統合に基づく気象庁防災情報XMLの利活用, 日本地球惑星科学連合2015年大会, No. M-GI37, 2015年05月

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