2024年の台風の発生個数は26個と平均並となりました。日本に上陸した台風は、岩手県に上陸した台風5号と、鹿児島県に上陸した台風10号の2個でした。特に台風10号は進路予測が難しい台風で、動きも遅かったことから、今年もっとも影響を与えた台風となりました。また、5日予報を中心に予報誤差が前例がないほど大きくなったため、気象庁の進路予報の年間成績を大きく下げる原因ともなりました。
このように台風10号は経路予測がたいへん難しいケースでしたが、そこで話題となったのがAI予測です。従来のシミュレーションが経路予測を大きく外したのに対し、AIの経路予測の中にはそれよりもよいケースが見られました。こうした結果をきっかけに、AI予測はすでに実用レベルに達しているのではないか、という認識が専門家の間にも生まれてきたのです。この状況は、AIモデルが登場し始めた昨年に比べると様変わりといえます。
AIは過去のデータを学習しているだけで、気象の物理学的メカニズムやその他の理論に基づいて計算しているわけではないため、原理的にはAIがシミュレーションを上回ることはないように思えます。しかし、現実のシミュレーションは完璧ではありません。原理的に正しい計算をするつもりであっても、入力データの精度や様々な近似のために、シミュレーション結果には様々なバイアスが生じることが知られています。この問題は以前から認識はされていますが、未だに解決には至っていません。それに対して、AIの学習はそうしたバイアスの影響を受けにくく、それがよい結果につながったのかもしれません。シミュレーションとAIの関係はどうなるのか。これは今後の大きな研究テーマです。
すでにECMWFは、Products from various AI Modelsにて、以下のAIモデルのリアルタイム運用結果を図示しています。