2005年(平成17年)の台風に関する情報のまとめ

2005年12月31日

2005年(平成17年)の台風は23個と、平年の27個と比べて少ない個数に終わりました。日本列島への上陸数も3個と、平年値(2.6個)なみ。台風の影響が特別に大きかった年ではなかったと言えるでしょう。沖縄に関しては接近数が8個と平年値(7.0個)と比べてやや多めですが、これは先島諸島から台湾〜中国方面に向かう台風が多かったことによります。今年の特徴的な台風を以下にまとめます。 台風200514号 (NABI) 沖縄から西日本を縦断した台風で、九州東南部では1300mmをこえる大雨となりました。宮崎県山間部での被害が特に大きく、各地で大雨による洪水や土砂災害が発生しました。また、中心から1000km以上も遠く離れた関東地方南部で記録的な集中豪雨が発生して各地で浸水被害が発生したこと、本州の南海上で巨大な眼を持ちつつも強い勢力を保ったことなども、この台風の特徴的な点と言えるでしょう。
しかし昨年の台風上陸ラッシュに比べると、今年はごく平年並の活動だったと言えます。昨年は、地球温暖化によって台風活動に異変が起きているのではないかといった懸念が盛んに語られましたが、今年の状況を見るかぎり、昨年はたまたま特異な状況にあっただけであると解釈すべきように思います。

ハリケーン

そして、世界の熱帯低気圧界で今年最大の話題といえば、何といっても大西洋地域のハリケーンでしょう。発生数といい、勢力といい、史上最も活発なハリケーンの年であったと言っても過言ではありません。発生数はこれまでの最高記録21個を大きく上回る27個にまで達し、史上初のギリシャ文字ハリケーン「アルファ」が発生したと思えば、あれよあれよという間に「ゼータ」まで進んでしまいました。勢力についても、ハリケーン「カトリーナ」をはじめとする強い勢力のハリケーンが次々に米国や中南米に接近し、大規模な災害が発生することになりました。 特にハリケーン「カトリーナ」によるニューオーリンズ周辺地域の惨状は、世界に衝撃を与えました。大都会のかなりの部分が水没し、死者は1300人以上、しかも復旧がなかなか進まないという状況は、米国のインフラストラクチャの意外な脆弱さを明らかにしました。また、このような大規模災害が関係機関では事前に予測されていたことが判明したことから、災害対策や復旧対策が十分なのかが国家規模の論争になり、そこに人種問題までもが絡んだこともあって、ブッシュ大統領自らが被災地に何度も往復する事態にまでなりました。そしてこのハリケーンで南部の製油地帯が被害を受けて石油価格が高騰したことから、車に頼る米国人の生活スタイルまでが打撃を受けました。まさに、国家全体、あるいは世界全体に複合的な影響を及ぼしたハリケーンであったと言えるでしょう。

ハリケーン発生数の増加

そしてさらに懸念されることに、ここ十年ほどの間に大西洋地域でハリケーン活動が活発化しているという説は、観測事実などに照らし合わせてもかなり説得力があります。どうやら大西洋地域では、全般的なトレンドとしてハリケーン活動が活発な周期に入りつつあるらしいのです。それに対して太平洋地域では、こうした増加傾向は明瞭には現れておらず、むしろここ数年は全般的に穏やかな状況が続いています。 こうした違いは何が原因なのでしょうか。気象学者がいろいろと原因を調べていますが、まだはっきりとした原因はつかめていません。もちろん、関心が高まっているのは地球温暖化との関連性ですが、その検証はなかなか難しいのが実情です。もし大西洋地域でハリケーン活動が実際に活発化しているとしても、それがただちに地球温暖化の影響であるとは言えません。ハリケーンの活動度はもともと数十年単位で周期的に自然変動することが知られていますし、その変動は地球温暖化とは無関係な要因の影響が支配的である可能性もあります。 さまざまなシミュレーション結果によると、地球が温暖化した環境では、発生数は減少するけれども、個々の台風の勢力は増加するという予測が有力なようです。しかし、このもっともらしい結論も、実際のところはどうなるでしょうか。現に今年の大西洋地域では、個数も勢力も増しています。また太平洋地域が不活発なところを見ても、台風活動度と地球温暖化との関連という問題は一筋縄で解ける問題ではないことがわかります。

台風(ハリケーン)活動度の長期トレンド測定

この問題を特に複雑にしているのが、台風(ハリケーン)活動度のトレンドをどうやって測るのか、という問題です。実は、台風の発生数や勢力の統計は、それほど信頼性が高いものではありません。例えば、気象衛星がなかった時代の過去のデータは信頼性が低いという側面がある一方で、飛行機観測の時代には実測値が入手できていたのに現在ではドボラック法による推定値しか入手できないという側面もあります(大西洋地域では現在も飛行機観測が続いているのでこうした問題は比較的少ないようですが)。このように、台風活動度のトレンドを計算するには、単に過去の台風統計データをそのまま使うだけではダメで、各種の偏りの影響を考慮した補正を加えていくことが不可欠になってきます。したがって台風活動度のトレンドの計算は、非常に専門的で複雑な問題になってしまうのです。 地球の海水温が高くなれば、水蒸気の蒸発が増加し、雲が生まれやすくなり、発達もしやすくなり、豪雨の頻度が増える、というところまでは予想できるとしても、こうして発生した雲が組織的に渦を巻いて台風にまで発達するのかどうかは別の問題です。地球が温暖化すれば雨の降り方が激しくなるという予測がそれなりに確からしいのに比べると、地球が温暖化すれば台風の個数が減って台風の勢力が増すという予測はずっと不確かなものです。台風がどういう状況で発生するのかさえ、きちんと理解できていない今の段階では、台風と地球温暖化の関係はまだよくわからないというのが適切なのかもしれません。

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