1. 2009年2月 オーストラリア・ビクトリア州における山火事

オーストラリアのビクトリア州(Victoria)では、2009年2月に記録的に厳しい熱波が襲う中、山火事が各地で同時多発的に発生し、死者209人以上と同国史上最悪の山火事となった。

この山火事(山林火災・森林火災)が発生した2月7日の状況を、気象衛星「ひまわり」の可視画像で追ってみたい。

2009年2月7日3時(UTC) - 現地時間14時
2009年2月7日4時(UTC) - 現地時間15時
2009年2月7日5時(UTC) - 現地時間16時
2009年2月7日6時(UTC) - 現地時間17時
2009年2月7日7時(UTC) - 現地時間18時

この画像は、NASAのBlue Marbleの上に気象衛星「ひまわり」の可視画像を重ねたもので、左下(南西)に青く見えるのがポートフィリップ湾、メルボルン(Melbourne)はこの湾の奥の北側に広がる都市である。山火事はメルボルンの北方を中心に発生しており、その他に東方や西方でも発生している(参考:関連リンク)。以下では上の一連の画像を見ながら火災の動きを追跡していくが、Google Earth(グーグルアース)を用いて上記のファイルをアニメーションとして見る方が、時間的な変化はわかりやすいかもしれない。

まず現地時間14時の画像ではメルボルン近郊は雲一つない晴天となっている。メルボルンでは最高気温46.4度と1855年以来の最高気温を更新するなど酷暑の一日が続いていた。この時点ではどこにも白い画素は見られない。ところが現地時間15時になると、メルボルンの北方に小さな白い領域が発生する。続いて現地時間16時には同じ場所の白い領域はさらに拡大し、右下に向って薄い白い領域が延びるようになっている。これは何だろうか?

可視画像で白く見える部分は通常は雲であり、現地時間16時には他にも白い領域があちこち生まれている。しかし他の領域の雲が比較的円い形状となっている(おそらく積雲と思われる)のに比べ、上記の領域は「にんじん」のような形状となっており、しかも広がるにしたがって薄くなっている。他の状況から考えても、これは雲ではなく火災の煙ではないかと考えられる。この場所を地図と比較してみると、おそらくKinglake西部(またはKilmore)の火災現場であると推定できる。この地域では、これまでに12人の死者が報告されている。

そして現地時間16時には、中央付近にもう一つ火災現場が登場した。この場所を地図と比較してみると、おそらくMurrindindiの火災現場であると推定できる。この地域では、Marysvilleでほぼすべての家屋が焼失するなどの大きな被害が発生した。

現地時間17時にはさらに煙の量が増加しており、火災がさらに勢いを増したのではないかと考えられる。一方現地時間18時には煙の量が減ったようにも見えるが、これは夕方となって光の量が減ったためであり、必ずしも煙の量が減少したわけではない。その後夜になると可視画像では観測ができなくなるため、この一連の画像は現地時間18時で終了している。

また火災発生翌日の2月8日は、メルボルンでは雨が降るなどこの地域全体に雲が広がったため、衛星画像上で火災の煙を確認することは難しい状況となっている。

火災による人的・物的被害に加えて家畜や野生動物にも焼死などの被害は広がった。その中で、火災から救出されたコアラが人間が差し出した水をゴクゴク飲む映像(Thirsty Koala - A Firefighter Gives Koala A Drink (2009 Australian Bushfires))がユーチューブ(Youtube)等のビデオ共有サイトに公開されると、復興のシンボルとして各種のメディアに取り上げられるようになった。ただしこの映像自体は、実は山火事防止のための野焼きの際に撮影されたもので、この大規模な山火事の際に撮影された映像ではないようである(参照:Wikipedia : Sam (koala))。

2. 関連リンク

最新のニュースや現地からの写真・映像に関しては、オーストラリアの報道機関のウェブサイトが最も充実している。これらのサイトにはGoogle News(オーストラリア版)からアクセスできる。また全体の概要については英語版Wikipediaでも情報が頻繁に更新されている。以下には他の情報をまとめる。