1. 概要

最近 X-informatics という言葉、つまり informatics という語尾をもつ学問分野が増加の一途をたどっている。その代表的な例には、バイオインフォマティクス(bioinformatics)がある。これらの学問分野に共通しているのは、既存の学問分野に対して情報学的アプローチを用いることにより、新しい視点およびモデルを獲得することを狙う点である。そして、センサ/観測技術の進展による大量データの生成と、大規模データベースの高速検索と知識発見、という方法論に共通性がみられる。

2. X-informaticsとは

ポスター

最近 X-informatics という言葉、つまり informatics という語尾をもつ学問分野が増加の一途をたどっている。その代表的な例には、バイオインフォマティクス(bioinformatics)がある。これらの学問分野に共通しているのは、既存の学問分野に対する情報学的アプローチによって、新しい視点およびモデルを獲得することを狙う点である。これらには、センサ/観測技術の進展による大量データの生成と、大規模データベースの高速検索と知識発見、という方法論に共通性がみられる。

このような方法論が有効に働くためには、データが大量に存在することが必要である。データを基盤とする方法論の多くは、実際に発生した事例の重みをその根拠としているため、データ数が多ければそれだけ信頼性の高い結論を出すことができる。しかしただ単に多ければいいというものではなく、そこには高い品質のデータを多数収集するための、データ収集に関する戦略が必要である。

またこのように収集した大量のデータを管理するためのデータベースの構築も、重要な研究課題である。このような取り組みが最も進んでいるバイオインフォマティクスでは、世界中で読み取られた配列データが公共データベースに集約されており、その中から興味あるデータを他の研究者がダウンロードして活用することが日常的におこなわれるようになっている。このようなデータに基づく研究スタイルは、今後さまざまな科学分野で進行することになると予想される。

ただし科学分野へのコンピュータの活用は以前から存在したものである。しかし現代に特有の動きは、computational-X から X-informatics への変化、すなわちシミュレーション技術からデータベース技術への変化にある。この二つのアプローチを図式的に比較すれば、以下のようにまとめられるだろう。

すると、「これは何?」に関する研究、すなわちX-informatics(データベース技術)に関する研究に基づき、「これはどうなる?」に関する研究、すなわちcomputational-X(シミュレーション技術)を発展させていくことで、観測事実と理論予測とをより有効に組合せた科学が生まれるかもしれない。そしてこれらの大量データをグリッド(Grid)などを用いて多くの研究者が共有することで、ネットワークを有効に活用した科学の新しい方法論が生み出されてくる。

3. 関連ページ

  1. メテオインフォマティクス

4. 参考文献(全リスト

  1. 北本 朝展, "大規模科学データベースからの知識発見:「デジタル台風」プロジェクトを例として", NII定例研究会, 2002年9月 [ 概要 ]
  2. 北本 朝展, "大規模台風時系列画像コレクションのためのマイニングとサーチング", 情報処理学会 第65回全国大会 特別トラック, Vol. 5, pp. 255-258, 2003年3月 [ 概要 ] [ Paper ]
  3. 北本 朝展, "X-インフォマティクス:第四パラダイムに基づく科学研究の変化とデータ中心科学の発展", 情報の科学と技術, Vol. 71, No. 6, pp. 240-246, doi:10.18919/jkg.71.6_240, 2021年6月 [ 概要 ]

5. 関連リンク