1. 固有台風

主成分分析(PCA)とは、特徴空間中で分散が大きい方向を見出すことのできる多変量解析手法である。同時に特徴空間の分散を保ちながら次元を削減する手法でもある。本研究で用いる特徴ベクトルは64×64=4096次元という高次元のベクトルであるため、これに対して主成分分析を適用して次元を削減する。この特徴ベクトルの各成分は対応領域の雲量を表現するものであり、その固有ベクトルは台風雲パターンの特徴的な分布を表わす濃淡画像が計算できる。これを本研究では「固有台風」と呼ぶ。

北半球の固有台風

NWP ALL 左上は平均台風画像、その右隣は分散台風画像、以下第1固有台風から第22固有台風までを並べて表示している。

南半球の固有台風

NWP ALL 左上は平均台風画像、その右隣は分散台風画像、以下第1固有台風から第22固有台風までを並べて表示している。

北半球で特に強い台風の固有台風

NWP ALL (Strong) カテゴリ5(特に強い台風)に分類される台風のみを選び、固有台風を計算した結果である。第1固有台風から第30固有台風までを並べて表示している。台風の眼に対応する中央部の構造が現れている。

2. 多重解像度解析

気象現象においては、スケールの問題が本質的である。というのも、すべての気象現象は、ある限定された時間・空間スケールにのみ存在するからである。ここでは気象現象のスケール解析として、多重解像度解析の一手法である、ウェーブレット変換(A trous transform)を固有台風に適用した結果を示す。

1番目の固有台風 1-st order eigen typhoon
30番目の固有台風 30-th order eigen typhoon