1. 画像内容検索

画像内容検索は、過去の台風雲パターンの中から、解析したい台風雲パターンに類似した雲パターンを検索するために用いる。この機能は、過去の事例に基づき現在の事例を解析するという「事例ベース」の台風解析・予測に、重要な役割を果たすものである。

ところがこの種の「類推法」に対しては、気象学の分野で悲観的な予想が定着している。その根本的な理由は以下の2点である。

  1. 大気のカオス性により、たとえ過去の類似例が発見できても、その後の時間発展は異なるパターンになることがほぼ確実である。
  2. そもそも大気が非常に自由度が高い力学系であるため、過去に類似例が生じたことがあるという可能性自体が非常に低い。

以上の問題点は大気の表現法という問題に関係している。例えば「西高東低」など、気象の分野では類似例をまとめた呼称があるが、これは類似例のまとまりといったものが、少なくとも概念上は存在してもおかしくないことを示唆している。

またこの問題点は「次元の呪い」という問題にも関係している。つまり高次元特徴空間の類似性が雲パターンの細かな変動に影響され、ほとんどすべてのデータ間の類似度が同じ程度になってしまうためであると考えられる。したがって、台風雲パターンの数理的表現モデル、またそのモデルに付随する雲パターンの類似度の定義、といった部分に、情報学的視点から検討を加えていく必要がある。

2. システム構成

システム構成 本研究で構築する台風画像データベースシステムは、図に示すように、WWWクライアント、WWWサーバ、データベースサーバ、という3つの主要なコンポーネントで構成されるシステムである。

  1. ユーザはWWWブラウザをクライアントとして用いて、画像データベースにアクセスする。
  2. 画像検索などに関する問合せは、WWWサーバ上でデータベースエンジンへの問合せ言語に翻訳され、分散データベースサーバに送られる。
  3. 分散データベースサーバからの検索結果をWWWサーバ上で再構成し、ユーザに結果を返す。

現在のところ、本研究のデータベースエンジンとしては、関係データベースエンジン(PostgreSQL)と画像特徴空間探索エンジン(FSE)の2種類を用いている。このうち後者は独自に構築中のエンジンであり、このエンジンに対する問合せ言語も、SQLやXQueryなどにヒントを得た独自の問合せ言語を用いている。その理由は、「やりたいこと」、つまり種々のデータマイニング技術に関する問合せを、素直に記述し素早く実装するためである。以下にはこの問合せ言語をXMLで記述した例を示す。

3. デモンストレーション