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1. 地球温暖化と熱帯低気圧地球の温暖化によって台風やハリケーンなどの熱帯低気圧の性質がどのように変化するのか。2005年のハリケーン「カトリーナ」による米国南部の大災害を契機として、この問題にはさらに関心が高まってきました。 現段階での科学者の見解によると、地球温暖化によって熱帯低気圧が強くなっても不思議ではないだろうが、その変化は劇的なものとまでは言えないだろう、また個数や地域の変化についてはまだ不明な部分が多い、ということのようです。またハリケーン「カトリーナ」に見られるように大西洋での変化が最も大きいようで、その原因はおそらく海水温の上昇にあること、一方で台風が発生する太平洋などでは顕著な傾向が見られないことも最近の研究でわかってきています。またカトリーナから数年がたって大西洋での活動も落ち着いてきたため、2000年代半ばの大西洋での状況は長期的なトレンドではなかったかもしれません。 それに対して、熱帯低気圧による災害規模の変化は、熱帯低気圧の強度変化とはやや異なる傾向を示します。海岸沿いに居住する人が増えていること、また地球温暖化による海面上昇によって高潮被害が出やすくなること、などの変化を考慮すると、災害規模は熱帯低気圧の強度変化が増幅される形で拡大する可能性が指摘されています。つまり防災・減災対策は、今後もさらに進めていく必要があるということになります。 なお、地球温暖化と熱帯低気圧の関係に関する最新の科学的見解については、以下の資料を参考にして下さい。 2. 注意点過去の記録に基づいて変化の傾向を見ようとする場合、過去の記録には種々の問題点があることが以前から知られています。したがって、単に過去の記録を統計処理するだけでは信頼できる結論を導くことはできません。こうした研究を参考にする際には、過去記録の偏りをどうやって取り除いたのかという点に、注意を払わなければなりません(*1)。 例えば気象衛星が観測を開始する以前と以後では、大洋上の台風を見落とす確率に差があります。飛行機観測を行っていた時代と中止した時代では、台風強度の測定精度に差があります。ドボラック法も時代とともに進化しており、時代が下るとともに利用可能な各種観測データも増えています。こうした変化による人為的な影響が過去記録に含まれてしまっているため、それをなんとかして取り除かないと長期間の変動は議論できないのです。 一方、シミュレーションに基づいて将来の変化の傾向を見ようとする場合、問題となるのは「熱帯低気圧は小さい」ということです。巨大台風とはいっても地球全体の大きさと比べればかなり小さなものです。したがって、地球全体の平均気温の将来予測よりも、地球全体の熱帯低気圧発生個数の将来予測の方が、より困難な問題となります。また熱帯低気圧に関する予測の精度についても不明な部分が多いのが現状です。 熱帯低気圧の将来予測に関する現時点での有力な説の一つは、発生個数は減るが強い台風の割合は増える、というものです。しかしこの説はまだ、確からしいものと認められたわけではありません。今後の研究の進展によって、さらに正確な予測が出てくるようになることでしょう。 (*1)アル・ゴアによる「不都合な真実」では、「過去数十年のうちに、カテゴリー4と5のハリケーンの数は、世界的にほぼ2倍に増えた」という説が紹介されていますが、この説の確からしさにはやや疑問が残ります。この研究成果は確かに科学雑誌Scienceなどにも掲載されたものですが、過去記録の偏りに関する検討が不十分であることも指摘されており、この説はまだ証拠不十分であるとみなすのが適切であると考えます。もちろん、たとえこの記述は除いたとしても、「不都合な真実」の書籍(あるいは映画)には一見の価値があることを付け加えておきます。 3. 継続的な監視今後の状況については、このページ、あるいは以下の「年ごとのまとめ」ページで記録していきたいと思います。 関連リンク
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