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2023年の台風に関する情報のまとめ

2023年12月29日

2023年の台風の発生個数は17個と平均よりも大幅に少なくなりました。1951年以来、3番目に少ない発生数です。日本に上陸した台風は、近畿地方を縦断した台風7号の1個だけでした。また、ギリギリのところで上陸はしなかったものの、台風6号は、沖縄を通り過ぎて再び戻り、奄美を過ぎて再びターンするという複雑な経路を描き、各地に長時間の影響を与えました。 今年は、「デジタル台風」プロジェクトとして、大きなリリースがありました。それが、デジタル台風データセットの公開です。デジタル台風は、1999年のプロジェクト開始当初からAI(人工知能)のプロジェクトでもありました。そのきっかけはドボラック法で、ドボラック法を近似するAIを作れないだろうかというのが研究の最初のアイデアでした。そのために2000年頃には初期のデータセットを構築し、当時のAIアルゴリズムを用いていろいろ実験を行いましたが、当時の技術が非力だったため、よい成果を挙げることはできませんでした(初期の論文リスト)。しかし、現在はディープラーニング(深層学習)が登場して10年以上が経過して、強力なアルゴリズムも数多く登場しており、機械学習の適用に向けた環境がすでに整っています。そこでAI研究用のデジタル台風データセットを改めて構築し、正式に公開しました。このデータセットは44年以上のデータを含む、北西太平洋地域では世界最長のデータセットです。これにより長期時系列画像データを対象としたAI研究が簡単になりますので、様々な研究者が共通データセットに挑みながら切磋琢磨することが期待できます。 台風データについては、気象庁(気象研究所)からも大きなリリースがありました。それが【プレスリリース】新しいデータセットを用いて強い台風の過去30年間の変動を解析です。台風の長期変化傾向を解析するには、長期にわたり一貫した方法で作成したデータが必要になりますが。そこで焦点となるのが先述のドボラック法です。時代とともに変化してきたドボラック法で当時解析したデータは、今から振り返ると精度の一貫性に問題があるかもしれません。そこで気象庁は、複数の予報官による再解析チームが衛星画像を用いて、1987年から2016年までの台風の強度推定をドボラック法でやり直してドボラック再解析データを作成し、これにより初めて長期間にわたり精度の良い台風強度の推定が可能となりました。このようなデータが公開されれば、AIの教師データの品質が向上し、AIによる台風の解析や予報の精度も向上することが期待できます。 AIの世界は今も急激に進歩しています。特に2022年から注目が急速に高まった技術が生成AIです。自然言語文でプロンプトを与えるとテキストを生成して答えるチャットボットであるChatGPTは一躍有名になりました。そして多くの研究グループが生成AIの研究開発に殺到し、テキストだけでなく画像も含むマルチモーダルデータの生成技術が爆発的に拡大しています。デジタル台風データセットも、今後はこうしたマルチモーダル生成AIへの活用を念頭に置く必要があるかもしれません。例えば、リアルタイム台風情報を考えてみると、観測データから警報を社会に発表するまでの長いプロセスの中に、AIによる効率化や高度化が可能なタスクがいくつも埋もれているはずです。また、過去の台風情報についても、過去の台風災害の教訓を学習させたチャットボットなど、過去の台風ビッグデータを活用する技術が登場するかもしれません。台風ビッグデータとAIを有効に活用することが、台風によりよく対応できる社会につながることを期待しています。

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