エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)は、電力供給(発電所マップ)と電力消費(夜景マップ)の「見える化」とシミュレーションを通して、東日本大震災後の日本の電力問題を考えるためのサイトです。

発電所と災害

エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)福島第一原発事故を契機に始まったものです。果たしてこの事故は不可避のものだったのかといえば、きちんとした設計と管理があればここまでひどい事故にならなかったはずです。事故が起こってしまってからの対策を頑張るだけではなく、そもそもきちんとした発電所を造ることが重要なわけです。その観点から見れば、再生可能エネルギー発電所も同じ問題を抱えています。それらはきちんとした発電所になっているのでしょうか?

固定価格買取制度(FIT)の開始に伴って小規模な発電所が乱立するようになったいま、昔のように事業者によるきちんとした管理は望めなくなっており、過度の利益追求による安全性に欠ける発電所が増えてきています。FITでの発電所への投資は、得られる利益には上限がある一方で、損失には上限がないという性質を持ちます。こうした非対称性への自覚なくして発電事業者になるのは危険であることを改めて認識する必要がありそうです。

太陽光発電所

太陽光発電所はFITによって大ブームとなり、全国に太陽光パネルが林立しました。その増加ぶりは、以下の統計で見ることができます。

しかし残念ながら、小規模な発電所については安全基準がきちんと定められていなかったため、利益追求のみを考えたずさんな発電所があちこちに造られてしまいました。ずさんな発電所とは、いったいどんなものなのでしょうか?以下の2点から考えてみます。

第一に、設計が不適切な太陽光発電所です。まず場所の選定が適切でないパターン。太陽光発電所に適さない傾斜地などに建設することで土砂災害を誘発してしまう場合や、災害リスクを低く見積って河川のそばなどに建設することで洪水被害に遭遇してしまう場合などがあります。次に周囲の環境に対する配慮に欠けるパターン。例えば、森を切り開いて太陽光発電所を建設する場合など、植物で覆われていた土地を裸地にするという土地利用の改変を伴うわけですから、大雨時に水を貯める調整池を設けたり、斜面が崩壊しないようにしたりするなど、周辺地域の災害リスクを高めないような配慮が必要です。ところがこうした工事はコスト増要因になりますので、コスト重視の業者の中には十分な対応を行わないところも出てきます。

第二に、建設が不適切な太陽光発電所です。パネルを地面に固定する力が不足するなど、強度に問題のある発電所が全国的に増えたため、台風や積乱雲によって強風が吹くたびに太陽光パネルが飛散する事故が発生するようになりました。こうしたパネルの飛散によって周囲が被害を受けた場合、発電事業者は被害者であると同時に加害者にもなる可能性が極めて高い。となると、こうした事故が連発するなら、太陽光発電所の保険審査も今後は厳しくなってくるはずです。

こうした問題は、太陽光発電所の建設業者や事業者の倫理に訴えるだけでは解決にも限界があるため、太陽光発電所の建設を規制する法律を整えたり、太陽光発電所の保険審査を厳格化したりするなど、小規模な発電所に対する規制を強めていくことも今後は必要になるでしょう。

こうした太陽光発電所の問題がとりわけ社会の注目を大きく浴びたのが、関東・東北豪雨で発生した鬼怒川洪水でした。茨城県の鬼怒川で溢水した箇所の近くに2つの太陽光発電所が存在していたことから、太陽光発電所の建設が水害の引き金になったのではないかという疑惑が持ち上がりました。この疑惑に関する一連の経緯は、日経テクノロジーオンラインの一連の記事がわかりやすくまとめています。

国土交通省関東地方整備局の公式見解である『平成27年9月関東・東北豪雨』に係る洪水被害及び復旧状況等についてによると、太陽光発電所の建設がなくても水位は自然堤防を越えていたようで、結論としては太陽光発電所の建設は水害の主要な原因ではないというところに落ち着きました。とはいえ、そうした結論になったのはたまたまという面もあります。業者は自然堤防を削った後に何も対策をしなかったため、国土交通省は異例の対応として土のうを積むなどの対策を取りました。この土のうがなければ、もっと低い水位でも水が溢れていたわけですから、事業者には周囲の環境に配慮するという責任感がなかったことは明らかです。違法でなければ何をやってもよいという態度は、太陽光発電バブルの混乱ぶりの一端を示すものと言えるかもしれません。

発電所が引き起こした事態によって周囲が巻き添えを食らうという構造は、何も福島第一原発だけの問題ではありません。風力発電所による騒音被害、石炭火力発電所による二酸化炭素排出と大気汚染など、その他の発電方式もそれぞれの問題を抱えています。こうした構造を認識し、その潜在的な危険性を減らすために適地の選定ときちんとした設計を追求していくことが、発電事業者には求められています。

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