エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)は、電力供給(発電所マップ)と電力消費(夜景マップ)の「見える化」とシミュレーションを通して、東日本大震災後の日本の電力問題を考えるためのサイトです。
エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)(以下本サイト)で構築した発電所データベースに基づく日本の発電所の歴史について、以下に注意点などをまとめます。なお以下では統計数値や発電所などに関して、電気事業連合会が提供する電気の歴史(日本の電気事業と社会)を参考にしています。
特に重要な注意点です。初期に水力発電所しか表示されないのは、火力発電所が存在しなかったからではなく、当時は存在した火力発電所が現在は廃止されているためです。発電事業が始まった当初から現在までずっと火力発電は利用されつづけていますが、以下に示すように火力発電と水力発電の間では、過去に2回の主役交代が起こっています。すなわち、1912年の火力発電229MW<水力発電233MW、および1963年の火力発電9750MW>水力発電9440MWです。
時期 | 年代 | 電源構成の特徴 | 発電技術・時代背景 | 電力需要 |
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第一期 | 1887年〜1911年 | 水力<火力(火主水従) | 小規模な火力発電所、都市や地域に分かれた分散型の電力網 | 電灯 |
第二期 | 1912年〜1962年 | 水力>火力(水主火従) | 水力発電所の大型化、遠距離送電による集中型の電力網 | 工場電化 |
第三期 | 1963年〜2011年3月11日 | 水力<火力(火主水従)→ベストミックス | 石油火力の拡大、石油危機後のLNG火力・石炭火力の拡大、原子力発電の導入、大規模電源中心の電力網 | 産業用電力、家庭電化 |
第四期 | 2011年3月11日〜現在 | ベストミックス→スマートミックス | 再生可能エネルギーの普及、非在来型化石燃料(シェールオイル・シェールガス)の拡大、地域資源(地産地消)としての分散型電源 | 持続可能性(サステナビリティ)向上のための電化 |
それぞれの時期の流れを私なりに大雑把にまとめてみると、日本の電気事業が始まって新しい文明の黎明期となった第一期、電気事業者の乱立と激しい競争から、日本発送電(日発)への集約と現在の地域独占電気事業者への統合が進んだ第二期、高度経済成長による電力需要拡大を支える大規模火力の増強および原子力の導入(1966年)を受けて、電源構成の「ベストミックス」へと成熟が進んだ第三期、となります。
そして将来から見れば2011年3月11日が大きな時代区分となり、それ以降が新しい時代と見なされることになるでしょう。この日が時代区分としてふさわしい理由は、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故だけではありません。再生可能エネルギーの普及を促進する固定価格買取制度(FIT)の閣議決定は、奇しくも東日本大震災が発生する直前の2011年3月11日午前でした。つまりこの日は、エネルギーに対する人々の意識と電力会社の経営環境を激変させただけではなく、原子力を含む従来型エネルギーミックスから再生可能エネルギーを含む次世代エネルギーミックスへの変化が始まる出発点ともなった、エポックメイキングな日なのです。
時間の流れを大きく見ると、第二期が50年で、第三期もほぼ50年です。偶然ではありますが、2011年3月はトレンドが変化するタイミングとしても適当な時期だったのかもしれません。ただし今後の第四期がどのような時代になるかは、我々の今後の取り組みにかかっています。これまではベストミックスという長期安定の計画的なバランスを重視してきましたが、これからはスマートミックスという短期的な変動を許容する適応的なバランスも不可欠となってくるでしょう。そうした世界的なトレンドの中で、福島第一原発事故という突発的な事故が日本に特有の状況と世論を生み出し、事故の前後で政策が大きく振れ過ぎてしまった印象はあります。事故前は電力会社の声が強すぎた一方、事故後はイデオロギーの声が強くなりすぎました。衝撃的な事故を少しは冷静に振り返れるようになったいま、世界における福島第一原発事故以後のトレンドを見極めながら、エネルギーミックスの姿を論理的に考えていくことが重要だと考えます。
なおエレクトリカル・ジャパンで表示している火力発電所は、ほとんどが「第三期」に建設されたもので、それ以前の火力発電所はデータベースに入っていません。そのような歴史的な発電所データを収集することも興味深い課題ですので、情報をお寄せください。
水力発電の最初の発電所は、日本の水力発電の歴史(水力ドットコム)によると、1888年に完成した「三居沢発電所」(東北電力)(水力ドットコム)だそうです。エレクトリカル・ジャパンにもこの発電所は登録されていますが、運転開始日は1910年7月となっています(RPS法認定設備データによる)。また電力事業用として日本初の「蹴上発電所」(関西電力)(水力ドットコム)は1892年に事業認可を受けたようですが(当時の出力160kW)、エレクトリカル・ジャパンでは全部が運転開始した1897年5月を採用しています(水力発電所データベースによる)。その結果、エレクトリカル・ジャパンで最も古い水力発電所は、1893年10月に運転開始した「日光第二発電所」(東京電力)となります。
なお、水力発電所は今も建設が続いていますが、その主力は小水力発電所に移っています。大規模な水力発電所を作ろうにも、大規模ダムの適地は少なくなりましたし、ダム建設に伴う環境問題も解決は困難、水利権の問題を考えると大規模な水路の建設もその余地は限られます。一方で小水力発電所は出力こそ小さいものの、農業用水など既存の水路にも設置できたり、これまでただ流していた水(河川維持流量)を有効活用できたりといった利点があるだけでなく、再生可能エネルギーの中でも施設の大きさは比較的コンパクトです。このタイプの水力発電所が今後も増加すると考えられます。
参考:水力発電所に関する情報
火力発電の最初の発電所は1887年に日本橋茅場町に設置された25kWの発電所だそうです。火力発電所はもともと消費地の近くに立地可能な発電方式ですので、初期の頃は都市部の小規模な火力発電所が電力を供給していましたが、その後は火力から水力へのシフトが進みました。当時に存在した火力発電所はその後の都市化の進展などもあって徐々に廃止されましたが、エレクトリカル・ジャパンでは廃止された発電所を登録していないため、この時期の火力発電所の歴史を追うことはできません。廃止された火力発電所には、例えば浅草火力発電所200kWや千住火力発電所77.5MWなどがあります。
日本の発電所の歴史を見ると、1950年代までは水力発電所しか表示されていませんが、これは火力発電所が存在しなかったためではなく、当時から今まで残っているのが水力発電所しかないためだ、ということに注意して下さい。例えば1896年の段階では火力発電所が23ヶ所、水力発電所が7ヶ所、水・火力併用発電所が3ヶ所あったそうで、数としては火力発電所の方が多いわけですが、エレクトリカル・ジャパンに登録されている1896年以前の発電所は後述する「日光第二発電所」1ヶ所のみで、その他の発電所の大部分は老朽化により既に廃止されていると考えられます。
エレクトリカル・ジャパンで主に扱っているのは、高度経済成長時代において水力から火力へのシフトが始まって以降に建設された、大規模な火力発電所です。大規模火力発電所の初期の例には三重火力発電所(1955年)や千葉火力発電所(1957年)などがありますが、当時の設備はすでに廃止されています。その結果、離島の火力発電所を除けば、エレクトリカル・ジャパンで最も古い火力発電所は、1959年8月に運転開始した新居浜西火力発電所(住友共同電力株式会社)となります(国土交通省のデータによる)。
なお、消費地に近い場所に立地可能な火力発電所の特性が、発電の排熱を利用することでエネルギー効率を向上させるコージェネレーション(熱電併給)の仕組みにより、近年は再び注目を集めています。また自家発電もほとんどは火力発電であり、東日本大震災後の電力不足を回避するための貴重な戦力として注目を集めています。また大規模な火力発電所についても、タービンとボイラーを併用するコンバインドサイクル発電方式が着実に効率を向上させており、こうしたタイプの火力発電所が今後は増加すると考えられます。
参考:火力発電所に関する情報
原子力発電の最初の商用発電所は1966年7月に運転を開始した東海発電所125MW(日本原子力発電)です。ただしこの発電所は1998年3月に運転を終了し、現在は廃炉作業に入っておりますので、エレクトリカル・ジャパンのデータベースには登録されていません。なお同じ敷地にある東海第二発電所(日本原子力発電)は登録されています。その結果、エレクトリカル・ジャパンで最も古い原子力発電所は、1970年3月に運転開始(1号機)した敦賀発電所(日本原子力発電)となります。
なお福島第一原子力発電所事故の影響により、日本国内における原子力発電の将来は非常に不透明なものになっています。
太陽光発電や風力発電に関しては、RPS法認定設備データに記載されている発電所については、この資料を運転開始日の典拠とします。ただしこれは申請情報に基づくものですので、運転開始日の定義は事業者ごとに異なり、統一的な基準があるとはいえません。したがって他の資料では運転開始日が異なることもありますが、それを確認することは困難ですので、原則としてRPS法認定設備データを優先します。
なおバイオマス発電に関しては、既存の火力発電所において新たにバイオマス燃料による発電を開始した発電所では、バイオマス発電の運転開始日ではなく火力発電の運転開始日を登録している場合があります。その場合は、運転開始当初からバイオマス発電をしていたことにはなりませんので、ご注意下さい。
参考:風力発電所に関する情報
参考:太陽光発電所に関する情報
近年は特に再生可能エネルギーを中心に多数の発電所が運転を開始する状況となり、典拠となる情報がないケースも増えてきました。そこで、他のデータベースを参照するのではなく自ら入力するデータについては、以下の基準を設けています。
電力供給(発電所マップ):日本全国の発電所データベースを独自に構築しました。登録した発電所数は1万件以上、インターネット上では日本最大規模のデータベースです。
電力消費(夜景マップ):DMSP衛星による地球の夜景データを用いて、宇宙から見た地球の夜景(夜間光)を可視化しました。2010年のデータ(F182010)を表示しています。Dark Zoneもご覧下さい。
電力供給・需要に関する最新のデータおよび過去のアーカイブは電力使用状況や太陽光発電実績、風力発電実績、電力需給実績、日本全国の再生可能エネルギー電力供給/割合実績(毎年の最大記録・比率一覧)、季節ごとの最大電力一覧などをご覧下さい(注意点)。
電力需要に影響を与える最新の気象状況は電力関連気象情報をご覧下さい(例えば気温前日比マップ)。
電力供給・需要に関する過去の統計データは電力統計「見える化」をご覧下さい(注意点)。
空撮で見たメガソーラーのかたちについてはメガソーラーギャラリー(作品集)日本版をご覧下さい。
世界の電力マップはElectrical Planetをご覧下さい(注意点)。
更新情報(発電所数19256件 /最終更新2024年10月01日)
地球の夜のあかりと電気エネルギー問題- Researchmap (2011-07-09)
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