1. 概要

オープンサイエンスとは、科学研究をより開かれた活動へと変革していく運動であり、より多くの人々がアクセスでき、より多くの人々が協力し、より多くの人々を巻きこみ、より人々から信頼される科学研究を実現することが目標となる。現在の科学研究は複雑に高度化したシステムに支えられており、それを維持する慣性力は非常に強いものがある。とはいえ、科学研究の仕組みには様々な綻びが見えてきているのも確かで、その変革に向けては様々なアイデアが提案されている。特に考えるべき課題は、データとジャーナル、研究評価、そして社会と科学研究の関係である。利便性と透明性の面でオープンな科学研究をどのように実現していけばよいか、理想と現実を踏まえた戦略を考えていくことが重要である。

関連する話題としてクラウドソーシングと市民科学も重要なテーマである。

2. 活動

オープンサイエンスは科学研究の方法を変える「運動」でもあり、それを実現するには様々な活動が必要となる。以下では活動の概要を紹介する。

まずプロジェクトに属するものとして、DIASプロジェクトにおける取り組みがある。このプロジェクトでは、有志のメンバーで「オープンサイエンス勉強会」を開催した。その概要についてはDIASにおけるオープンサイエンスの推進を参照してほしい。

また日本における研究コミュニティの中では、Japan Link Centerの研究データへのDOI登録実験プロジェクトにDIASプロジェクトの代表として参加し、研究データへの識別子付与からオープンサイエンスまで議論を進めた。このコミュニティはその後、研究データ利活用協議会(Research Data Utilization Forum)に発展している。DIASでも2017年4月から研究データへのDOI付与を開始した。また2021年7月にはMahalo Buttonをリリースした。

さらに人文学におけるオープンサイエンスの試みとして、我々は情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センターを2016年4月に開設し、データのオープン化や超学際的連携の積極的な推進を通して、人文学研究に新しい方法論を持ち込むことを目指している。

3. ブログ記事

5. 参考文献(全リスト

  1. 北本 朝展, "DIASプロジェクトの取組み", ジャパンリンクセンター活用の為の対話・共創の場(第2回), 2015年2月 [ 概要 ]
  2. 北本 朝展, "オープンサイエンスの現状と地球環境学データ基盤の展望", 第110回地球研セミナー, 2015年5月 (招待) [ 概要 ]
  3. 北本 朝展, 川崎 昭如, 絹谷 弘子, 玉川 勝徳, 柴崎 亮介, 喜連川 優, "地球環境情報統融合プログラムDIAS データ共有に基づく社会課題解決", 情報管理, Vol. 58, No. 6, pp. 413-421, doi:10.1241/johokanri.58.413, 2015年9月 [ 概要 ]
  4. 北本 朝展, "オープンサイエンスへのコンバージェンス~同床異夢から共通認識を醸成するコミュニティの形成~", オープンサイエンスデータ推進ワークショップ, 2015年9月 (招待) [ 概要 ]
  5. 北本 朝展, "「巨人の肩」とデータサイテーション", 地球研コアプロジェクトFS 第1回研究会, 2015年10月 (招待) [ 概要 ]
  6. 北本 朝展, "「研究のバリア」を打破する研究基盤デザインと研究データ利活用", 第2回 SPARC Japan セミナー2015 (オープンアクセス・サミット2015) 「科学的研究プロセスと研究環境の新たなパラダイムに向けて - e-サイエンス, 研究データ共有,そして研究データ基盤 -」, 2015年10月 (招待) [ 概要 ]
  7. 北本 朝展, "オープンサイエンスのジレンマ~研究者共同体のインセンティブと結果オープン性へのモチベーション~", 第2回オープンサイエンスデータ推進ワークショップ, 2015年12月 [ 概要 ]
  8. 北本 朝展, "研究現場におけるオープンデータの進め方", 情報・システム研究機構シンポジウム「オープンサイエンスにおける研究データのオープン化」, 2016年2月 (パネル) [ 概要 ]
  9. 北本 朝展, "研究データとオープンサイエンスに関する基礎的知識", 研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~, 2016年3月 [ 概要 ]
  10. 北本 朝展, "「デジタル台風」におけるキュレーションとオープンサイエンス:持続可能なデータプラットフォームに向けた課題", 情報管理, Vol. 59, No. 5, pp. 293-304, doi:10.1241/johokanri.59.293, 2016年8月 [ 概要 ]
  11. 北本 朝展, "オープンサイエンスの動向と情報学分野へのインパクト", 電子情報通信学会技術報告, Vol. 116, No. 259, pp. 1-6, 2016年10月 [ 概要 ]
  12. 北本 朝展, "オープンサイエンスとサステナビリティ~データ駆動型サイエンスの鍵を握る持続可能なデータプラットフォーム~", 第2回北海道大学の国際競争力強化のためのオープンサイエンスワークショップ, 2016年11月 (招待) [ 概要 ]
  13. 北本 朝展, 山本 和明, "人文学データのオープン化を開拓する超学際的データプラットフォームの構築", 人文科学とコンピュータシンポジウム じんもんこん2016論文集, pp. 117-124, 2016年12月 [ 概要 ] [ Paper ]
  14. 北本 朝展, "データキュレーションへの期待と課題:自然科学から人文科学まで", 九州大学ライブラリーサイエンス専攻シンポジウム「オープンデータとデジタルヒューマニティーズ」, 2017年1月 (招待) [ 概要 ]
  15. 北本 朝展, "ディープラーニングとオープンサイエンス ~研究の爆速化が引き起こす摩擦なき情報流通へのシフト~", 第3回 SPARC Japan セミナー2016 「科学的知識創成の新たな標準基盤へ向けて:オープンサイエンス再考」, 2017年2月 (招待) [ 概要 ]
  16. 北本 朝展, "研究データへのDOI付与が意味すること ~DIASにおける経験を踏まえて~", 科学データ研究会・WDS国内シンポジウム, 2017年3月 [ 概要 ]
  17. 北本 朝展, "古いコンテンツを新しいプラットフォームに入れる~「江戸料理レシピデータセット」クックパッド公開の顛末~", 大学の図書館, Vol. 36, No. 4, pp. 48-49, 2017年4月 [ 概要 ]
  18. 北本 朝展, "人文情報学における共創型研究とオープンサイエンスの潮流", 情報処理学会技術報告, Vol. 2017-CH-114, No. 10, pp. 1-7, 2017年5月 (招待) (パネル) [ 概要 ] [ Paper ]
  19. 北本 朝展, "より開かれた人文学研究に向けて—人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)の挑戦", リポート笠間, No. 62, pp. 16-18, 2017年5月 [ 概要 ]
  20. 北本 朝展, "DOI概論―研究基盤のオープン化に向けたIDの活用", 第3回CODHセミナー - 人文学でのDOI活用 〜研究データや所蔵品など研究資源へのDOI付与〜, doi:10.20676/00000010, 2017年5月 [ 概要 ]
  21. 北本 朝展, "古いコンテンツを新しいプラットフォームに入れる~「江戸料理レシピデータセット」クックパッド公開の顛末~", 第25回 大図研オープンカレッジ(DOC)「Linked Open Data を体験」, 2017年6月 (招待) [ 概要 ]
  22. 北本 朝展, "デジタルアーカイブのライブラリアンとキュレーター~江戸料理レシピ・クックパッド公開の教訓~", 専門図書館, No. 284, pp. 34-38, 2017年7月 [ 概要 ]
  23. 北本 朝展, "DIASとオープンサイエンス〜DOIの利活用を中心とした世界の動向とDIASの方針〜", 第1回DIASオープンサイエンスセミナー, 2017年7月 [ 概要 ]
  24. 北本 朝展, "DOIを中心とした識別子システムの全体像", 第1回CODHチュートリアル, doi:10.20676/00000320, 2017年8月 (招待) [ 概要 ]
  25. Asanobu KITAMOTO, "FAIRness for Citizens: Workflow and Platform for Open Data with a Case Study on Edo Cooking Recipes", Seventh Annual Conference of the Japanese Association for Digital Humanities (JADH2017), pp. 14-16, 2017年9月 (in English) [ 概要 ]
  26. 北本 朝展, "デジタルアーカイブと研究データ: 人文学における利活用の展望", 「デジタルアーカイブ」と「研究データ」の出会いシンポジウム~データの保存と活用へ、ライブラリアンとアーキビストの挑戦, 2017年11月 (招待) [ 概要 ]
  27. 北本 朝展, "Data Integration and Analysis System (DIAS)", 第5回 CODHセミナー/第2回 DIASオープンサイエンスセミナー/第1回 研究データ利活用協議会「国内の分野リポジトリ関係者のネットワーク構築」小委員会: 信頼できるデータリポジトリ 〜CoreTrustSeal認証に関する実践的情報共有の場〜, 2017年12月 [ 概要 ]
  28. 北本 朝展, "「理系と文系」の壁を越えて広がるオープンサイエンス", 京都大学大学院情報学研究科 第19回情報学シンポジウム「オープンサイエンスをめざして − 社会と環境の情報学 −」 , 2018年2月 (招待) [ 概要 ]
  29. 北本 朝展, "「基礎自治体によるオープンデータ化と利活用の可能性に関する調査研究報告書」について~オープンデータの生産者・流通者・消費者の適切な役割分担に向けて~", 自治調査会 ニュース・レター, Vol. 15, pp. 12-15, 2018年3月 [ 概要 ]
  30. 北本 朝展, "DIASとオープンサイエンス", DIASコミュニティフォーラム2018「データプロデューサーセッション」, 2018年3月 [ 概要 ]
  31. 北本 朝展, "第1部II「オープンサイエンス・オープンデータ」、第1部IV「人文科学におけるデータ活用」", データ活用社会を支えるインフラ:科学技術に関する調査 プロジェクト報告書, 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 (編), pp. 4-12,33-38, 国立国会図書館, ISBN 978-4-87582-815-0, 2018年3月 [ 概要 ]
  32. 北本 朝展, "『オープンサイエンス』とAI~オープン化は人工知能研究をどう変えるか?~", 国立国会図書館 政策セミナー, 2018年6月 (招待) [ 概要 ]
  33. 北本 朝展, "人文学研究のデジタル化とオープン化", Japan Open Science Summit 2018, doi:10.20676/00000336, 2018年6月 [ 概要 ]
  34. Asanobu KITAMOTO, "Mahalo project: a lightweight solution for connecting data creators and users with pay-back and pay-forward incentives", Japan Open Science Summit 2018, 2018年6月 [ 概要 ]
  35. 北本 朝展, "研究データ管理を考える~データリポジトリのサービスとCoreTrustSeal認証~", Japan Open Science Summit 2018, 2018年6月 [ 概要 ]
  36. 北本 朝展, "データからアクションへ~専門的オープンデータに関するユーザとアプリケーションのモデル", 科学とデータ研究集会 ~オープンサイエンスとデータ駆動型科学の将来像をさがす~, 2018年9月 [ 概要 ]
  37. Asanobu KITAMOTO, "AI and Data Science - Machine Learning as Digital Catalyst for Data Curation", International Workshop on Data Science - Present & Future of Open Data & Open Science –, pp. 50-52, 2018年11月 (in English) [ 概要 ]
  38. 北本 朝展, "欲求とオープンサイエンス~オープン化の好循環と価値観の衝突~", I-URICフロンティアコロキウム2018, 2018年12月 (招待) [ 概要 ]
  39. 北本 朝展, 絹谷 弘子, "Japan Data Repository Network (JDARN):データリポジトリの信頼性向上を中心としたコミュニティ活動", 日本地球惑星科学連合(JpGU)2019年大会, No. MGI31-02, 2019年5月 [ 概要 ]
  40. 北本 朝展, "Japan Data Repository Network(JDARN)の紹介", Japan Open Science Summit 2019, 2019年5月 [ 概要 ]
  41. 北本 朝展, "オープンな画像の利活用を開拓するIIIF Curation Platform", カレントアウェアネス, No. E2301, 2020年9月 [ 概要 ]
  42. 北本 朝展, "X-インフォマティクス:第四パラダイムに基づく科学研究の変化とデータ中心科学の発展", 情報の科学と技術, Vol. 71, No. 6, pp. 240-246, doi:10.18919/jkg.71.6_240, 2021年6月 [ 概要 ]
  43. 北本 朝展, "研究データのインパクトを計測可能に~データ引用とMahaloプロジェクト〜", Japan Open Science Summit 2021, 2021年6月 [ 概要 ]
  44. 北本 朝展, "Mahaloボタンの紹介とDIASでの利用事例", 研究データ利活用協議会(RDUF)公開シンポジウム, 2021年11月 [ 概要 ]
  45. 北本 朝展, "データ駆動型人文学と人文学ビッグデータ:ROIS-DS CODHでのデータ利活用事例", 第1回J-STAGEセミナー「オープンサイエンスの進展による研究データの共有・利活用の取り組み:研究データ公開の現状と可能性」, 2022年10月 (招待) [ 概要 ]
  46. 北本 朝展, 中原 陽子, 清水 敏之, 島井 博行, 吉川 正俊, "データの利用成果を収集・共有するには?―Mahalo Buttonの活用事例", 研究データ利活用協議会(RDUF)公開シンポジウム, 2022年11月 [ 概要 ]
  47. 北本 朝展, "出版社との協働による『日本歴史地名大系』の一部オープンデータ化と『歴史的行政区域データセット』との統合", 第22回歴史ビッグデータ研究会, 2023年4月 [ 概要 ]
  48. 北本 朝展, 中原 陽子, 清水 敏之, 島井 博行, 吉川 正俊, "Data Citation and Mahalo Button: Collecting and Sharing Dataset Usage in DIAS", 日本地球惑星科学連合(JpGU)2023年大会, No. MGI27-04, 2023年5月 (in English) [ 概要 ]
  49. 北本 朝展, "オープンサイエンスとデジタルアーカイブの二刀流で取り組むメタデータ:DIASとCODHの事例から", デジタルアーカイブとオープンサイエンス研究会(DAOS), 2023年10月 [ 概要 ]