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1. 台風の上陸・接近・通過気象庁は台風の上陸・接近・通過という言葉の意味を以下のように定義しています(参考:気象庁が天気予報等で用いる予報用語)。
もう少し整理してみましょう。まず日本を二つの地域、すなわち本州、北海道、九州、四国(本土)とそれ以外に分けます。そして、それぞれの地域において、台風の接近、通過、上陸がどのように起こりうるかを以下にまとめてみました。
つまり上陸とは、日本の中でも特に「本土」(本州、北海道、九州、四国)の海岸線にまで台風が到達した場合に限って使う言葉なのです。ここで紛らわしいのは、本土以外には台風は決して「上陸」しないこと。日本では最も多くの台風が来襲する沖縄も、台風上陸数では毎年ゼロとなってしまうのです。それに対して台風接近数では沖縄が最も多くなり、こちらの方が台風の影響の大きさの指標としては実感に近いのではないでしょうか。つまり、日本への台風の影響を考える際には、上陸数だけではなく接近数にも注目する必要があります。 気象庁が公表している、台風の上陸数と台風の接近数のページでは、過去の上陸や通過に関する統計資料をまとめています。このページを調べてみると、上陸数と接近数は必ずしも同じ傾向を示しているわけではないことがわかります。なお台風上陸数の過去最大記録は、2004年の10個です。同じ時期に台風が連続して上陸することもよくありますが、これは台風が流される大規模な空気の流れは、長時間をかけてゆっくり変化するためです。 一方、2008年は日本に上陸した台風がゼロとなりましたが、このことだけから「2008年は日本に影響した台風がなかった」とは言えません。実際のところ2008年に日本に接近した台風は9個もあり、過去の年に比べてそれほど少ない数ではありませんが、これは沖縄や伊豆諸島・小笠原諸島に接近した台風があったためです。上陸数だけに過度に注目してしまうと、日本に「接近」したけれどもスレスレで「上陸」しなかった台風の影響を除外してしまうだけではなく、沖縄や伊豆諸島・小笠原諸島への影響を無視してしまうことにもなりかねません。 なお「通過」も「上陸」もした台風は、上陸した台風として扱います。例えば、沖縄本島を「通過」したあと、本土に「上陸」する台風などのケースがあります。また複数回「上陸」する台風もあります。例えば、九州に上陸した後に日本海に抜け、その後に東北や北海道に再上陸する台風などのケースがあります。 台風の中心位置は推定した位置であるため、海岸線に近い場所を動いている場合は、「上陸」したのかどうか、判断がつきにくい場合もあります。また、「上陸」するかどうかは、数十キロメートルという台風の大きさから比べればごく小さな誤差によって決まる面もあります。2008年の台風上陸数ゼロという事例は確かに稀ではありますが、上陸の回数は偶然に左右される面も大きい、ということも認識しておく必要があるでしょう。 なお台風は上陸すると一般に勢力が急速に衰えます。これには、陸地に入って海面からの水蒸気の補給がとだえる効果、陸地との空気の摩擦が増大する効果、山地などの影響で台風の構造そのものが崩れる効果、などが影響していると考えられます。例えば、台湾に上陸して東から西に横断するた台風は、台湾の中央にそびえる標高3000mから4000mに達する山脈の影響で、構造に大きなダメージを受けて急速に衰弱するケースが多くなります。一方、速度が速い台風や大きな台風が陸地の上を少しだけ進む場合には、あまり勢力が衰えないこともあります。最後に、注意すべきなのは台風が温帯低気圧化しつつある場合で、台風のエネルギー源がすでに海面からの水蒸気ではなくなっているため、上陸しても勢力が衰えるとは限りません。 関連リンク
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