| ||||||||||
| ||||||||||
|
今年は台風が余り日本に接近していませんが、その理由を教えて下さい(太平洋高気圧、偏西風等の関係)
また、その原因が発生するのは今年だけなのか?それとも来年以降も今年同様の状態となるのか?
その理由も教えて下さい。
まず2008年の台風経路図を見てみます。2008年はこれまで伊豆諸島や先島諸島(沖縄)には台風が接近しましたが、今のところ台風の上陸はゼロです(注:上陸数には日本各地の離島を「通過」した台風の数は含まれません)。
次に気象庁の統計資料を見てみます。台風の接近数(日本)は現在のところは9個と、例年より若干少ないかなというところでしょう。一方台風の上陸数は現在のところ0個と少なく、もし今後も上陸しなければ1951年以来の統計では1984年、1986年、2000年に続く4回目の記録となります。なお1987年も9月まではゼロでしたが、10月に台風が上陸して上陸数は1個となりました。このことから、1980年代半ばの数年間は、本州・九州・四国・北海道に影響を与える台風が非常に少ない期間だったこともわかります。
では、なぜ今年は台風の上陸がゼロなのか?その原因については、気象庁が先月に発表した「平成20年8月末豪雨」等をもたらした大気の流れについてが参考になります。今年の夏の天候の大きな特徴の一つは、本州付近でいわゆる「ゲリラ豪雨」が続いたことですが、このように豪雨が頻発していた原因が同時に台風が接近しにくい原因ともなっていたからです。
上記の資料から、台風の上陸がゼロという状況になっている原因と関連する項目を抜き出してみます。
上記の原因によって、1) 台風の発生地域では台風が発生しにくい状況となり、2) たとえ発生しても日本に接近しにくい状況となりました。
まず、台風の発生ペースについては、台風200805号の時点では史上最速レベルの発生ペースであったものが、現在では平年20個に対して発生数が17個と平年を下回っていることからも、今年の夏から秋は発生数そのものが少なかったことがわかります。次に、上記資料でも取り上げられている大気の流れが原因で、今年の夏から秋は偏西風に乗って北東方向に進路を変える(転向する)という典型的な秋台風がなく、南シナ海に向けて北北西方向にゆっくり進む台風が多くなりました。以上の要因が重なって、日本に上陸する台風がゼロという状況になっていると考えられます。
ではこの状況が来年も続くのか。これは難しい問題です。まず、つい4年前の2004年には10個の台風が日本に上陸して地球温暖化の影響かと騒がれましたが、今年の上陸数がゼロにとどまっていることからも、そうした長期の気候変動が日本にどう影響するかはまだ不明な部分が大きいと言えます。次に、先述のように1980年代半ばに上陸数が少ない時期が数年続いており、その程度の期間は似たような傾向が持続することもないとは言えません。もっと長期間の数十年単位でも、台風の活動度は活発から不活発へと変動を繰り返していると言われていますが、そうした現象の影響についても未知の部分がたくさんあります。
いずれにしろ、日本に台風が上陸するかどうかは、千キロメートル以上の大きさを持つ台風にとってはごく小さな、たった数十キロメートルの経路の違いが影響することになります。その意味では偶然に左右される面も大きく、1-2個の違いは誤差範囲と言えるでしょう。来年のことは来年になってみないとわからないというのが、私の率直な考えです。
|