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(回答者注)これは台風の発生・消滅時刻とベストトラックの問題へのコメントです。
ベストトラックは、以前は現在のようなデータベース情報ではありませんでした。各時刻の位置情報をまとめた表と、進路図の2つで構成されており、刊行物として出されていましたので、そちらと照らし合わせる必要があります。
現在のベストトラックは、台風が消滅してから早ければ1か月、遅くとも2.5か月程度で周辺国へ配信されます。公的なベストトラックは、翌年の夏に出る年次報告になります。
比較が必要と言うことであれば、1992年発行の刊行物がありますので、それと対比してみてはどうでしょうか?その当時出たベストトラックには、進路データ諸表はなく、図のみです。
天気図原図自身は、作画完了から10年で公文書館に移管されます(現在も同じ)。3時間毎に作図される地上天気図(極東天気図)と、6時間毎に作画される地上天気図(アジア太平洋天気図)は移管されており、ベストトラックの引き直し作業は、気象庁と言えども煩雑な手続き処理を経る必要があります。それ以上に、移管された公文書を直す・・・それこそ大問題です。移管済み図面と、ベストトラックの整合については、判りません。
以下では、00・06・12・18UTCをSM (Surface Main Standard Time)、03・09・15・21UTCをSI (Surface Intermediate Standard Time)とします。3時間毎に作られる日本周辺天気図(極東天気図)は台風が日本に近い場合は有効ですが、情報量がSMに比べて陸上で2割減、海上では6割減と少ないため、解析精度が充分とはいえません。
一方のSMで使用する情報は全球交換資料で作図しますので、広域で情報が入手できるほか、船舶などからの観測情報が大きく増えます。そういう意味で、ベストトラックではSMの情報を使っています。他国でも、SM時刻によるベストトラックが殆どで、日本のような細かい情報(3時間や1時間ごと)はむしろ稀です。
なお気象庁の公式天気図は、実解析した際の図そのものではなく、その図を基に、ある種の浄書した図面(建築や土木で言えば、第二原図相当)です。
今回の問題となったベストトラックが、近年実施された数値演算結果の再解析を反映しているのかは判りません。仮に、再解析によってベストトラックの更改があると、今度は「公文書である過去の天気図まで直せと」と言う議論になりかねず、収拾がつかなくなる恐れがあります。どの時点で完結とするか、再解析との正否なども課題になるかも知れません。JTWCのベストトラック情報も、年次報告との整合が取れないものがあります。
ご意見にあった1988年18号に関してですが、1992年4月発行のTropical Cyclone tracks in the Western North Pacific 1951 - 1990には以下のように明示されています。
なお、進路データを観ると最終更新日時があり、その期日は1992年10月21日となっています。気象年鑑で使用される進路データは、ベストトラックではあるけれど、ベストトラックの中でも比較的若い時期に行われた値と言うことになります。
結局のところベストトラックであっても、どの時点の情報を用いるか?どの時点の情報で・・・と言う何らかの明示あるいは、その都度、進路データ自身の更新履歴を含むデータ化しないと、どうにもならないと考えられます。
警報が1時間毎になってから、まだ30年も経過していません。毎時観測は確かに行われていましたが、自動観測ではなく、人手によるものです。1990年代になってから、JMA80型気象観測装置の回線出力やデータ処理PCの増強が行われたことで、日常的に毎時観測が始まりました。そして1990年頃までは、警報文にのみ毎時の値があり、ベストトラックには反映されていませんでした。指示報の電算処理が進み、国内向けの台風情報と、国際向けを意識している全般海上気象警報(当時はWWJP20、現在のWWJP25)および臨時気象警報(当時のWWJP21、現在実質使用されないWWJP26)が”警報の確定値”とされたからです。現在は、台風警報と全般海上気象警報は分けて報じられています。
台風予報原簿や情報原簿は、保存期限が最低で3年、長い物で5年です。保存期間がおよそ5年ということは、今のうちにまだ残っているであろう警報データ自体も集めておく必要はあるかと思います。そうしないと、誤びゅう等による名称変更の遡及が出てくる危険があります。警報も入手できるのであれば、入手してベストトラックとも比較できるような形態にしておく必要はあると考えます。
コメントありがとうございます。台風の発生・消滅時刻の変更が「公文書の訂正」という大事にまで発展する可能性があるとは全く想像しておりませんでした。ただ、ベストトラックよりも天気図の方がオリジナル情報に近いものと考えれば、あくまで訂正されるべきは天気図ではなくベストトラックの方でしょう。そこから天気図にまでさかのぼって公文書を訂正するというのは、ちょっとやり過ぎのような感じもします。
さて、おそらくここで問題となっているのは、「現時点で最も正統的なベストトラックはどれか」という問題でしょう。そして、気象庁が公表しているベストトラック(データファイルのもの)を正統的なものと考えれば、ひとまず問題は解決します。つまり「気象年鑑」に掲載されているベストトラックはあくまで「当時のもの」であるだけということ。1988年の台風に関するベストトラックが1992年に更新されているということは、明らかに気象年鑑1989年版の情報は古いことを意味します。だから「それは古くなった情報なのだ」と言い切ってしまえば、ひとまず台風の発生・消滅時刻とベストトラックの問題は解消します。
1992年当時にどのような議論があったのかはわかりませんが、あるいは6時間おきにしか台風の発生と消滅を認めないことにし、中途半端な時刻のものは近い時刻のどちらかに統一したのかもしれません。いや、それでは、天気図との厳密な対応関係が切れてしまうではないか、というのが今回提起された問題なのだと思います。ただ諸外国の記録頻度と比較してみても、6時間おきへの統一にもそれなりの妥当性はありそうです。そこで私としては、以下のように扱っていくのが妥当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
最後に思うのは、もしベストトラックのオリジナル情報が天気図であるのなら、天気図もウェブでアクセスできるようにするべきということです。天気図をウェブ上で参照できれば、台風情報が当時にどう報じられたかを図面で確認できますので、ベストトラックに不備があってもそれを補えるようになります。さらにネット上においてみんなで天気図を確認する作業を分担すれば、このあたりのデータ整理はもっと効率的に進められそうです。参考資料としての天気図をどのようにデジタル台風と結び付けるかが、今後の課題なのかもしれません。
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