| ||||||||||
| ||||||||||
|
去年は統計開始以来、台風の発生数が過去最低になりましたが、今年も去年並みに台風の発生数が少ない状態になるのですか?
質問ありがとうございます。2010年台風のまとめにも書きましたように、2010年の台風発生数は14個と、1951年以来最小の発生数を記録しました。この傾向が2011年も続くかどうかについては上記のページでも少し触れましたが、それに加えてこのページでは、台風の発生個数に関する長期予報(季節予報)に取り組んでいる研究グループを紹介したいと思います。以下、英語のページや資料が多くなりますが、その点はご容赦下さい。
まず米国のコロラド州立大学では、大西洋のハリケーンに関する長期予報の取り組みを続けており、The Tropical Meteorology Project: [FORECASTS]のウェブページで1999年以来の長期予報とその検証を提供しています。なお予報自体は1984年から続けているようです。ここでは、最初の予報を前年の12月に公表し、当年の4月、6月、8月に更新し、11月に結果を総括するというサイクルを毎年続けています。ハリケーンシーズンが始まった後は、現在以降の期間のみを予報し、現在までの期間には確定値を使います。したがって、当然のことながら前年の12月の予報が最も難しく、時期が後になるほど予報精度は高くなります。その他、英国のMetOfficeも大西洋ハリケーンの長期予報を行っているようです。
一方、北西太平洋の台風については、香港のLaboratory for Atmospheric Research, City University of Hong Kongが長期予報を2000年以来発表しています。当年の4月、5月、6月、7月に予報を公表し、翌年の1月に結果を総括するというサイクルを毎年続けています。さらにTropical Storm Riskは北西太平洋の台風だけではなく大西洋のハリケーンやオーストラリアのサイクロンについても長期予報を提供しています。台風に関しては、当年の3月から8月まで毎月予報を更新し、翌年の1月に結果を総括するというサイクルです。なお日本では、あいにく台風発生個数の長期予報を公表している機関はないようです。無謀なことはやらない(?)日本らしい感じがしますね。
長期予報の方法には、1)力学的な方法、2)統計学的な方法、という2つの方法があります。1)力学的な方法とは、通常の天気予報で使っているシミュレーションをより長期間に対して実施する方法です。これは正統的な方法ではあるのですが、計算量が膨大になったりカオスの影響が出たりするなどの問題があるため、現時点では短期の天気予報ほど精度よく予測することはできていません。そこでより簡便な2)統計学的な方法の方が広く使われています。台風の発生(および強度)は多くの要因に影響を受けるので、この値そのものを直接予測するのは難しい。そこで、この値と何らかの関係がありそうな大気や海洋の要因(例えば海水温など)に着目し、それらの要因と台風の発生個数との関係をあらかじめ調べておきます。次に個々の要因の将来変化を何らかの方法で予測します。そして各種の要因の予測を組み合わせることで、台風の発生個数を予測するという手順を用います。この手法では、台風発生個数に影響を与える要因をたくさん見付けられるか、また個々の要因を精度よく予測できるか、がポイントになります。中でも特に重要性が高いのが、2010年の最小記録にも大きな影響を与えたと考えられる、エルニーニョ/ラニーニャ現象の予測です。詳しくはSeasonal tropical cyclone forecastsなどを参考にしてください。
以上、質問に関する直接の回答とはなっていませんが、関連する情報をまとめてみました。まあ直接の回答をしていないのは、「私にもわからないから回答しようがない」という理由もあるのですが、とは言え、最小記録を2年連続で更新する可能性はさすがに低いだろうと思っています。2010年の14個というのは異常に小さな数字ですので…
|