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台風18号が知多半島に上陸し、飯田近辺まで来たと放送があったとき、いよいよ私どもの住む地域も直撃から免れられないと思い、覚悟せねばと思っていたところ、一向に雨・風とも吹き荒れる様子無く、栽培しているリンゴもほとんど落下せずに済んだ。
ところが、台風の中心からかなり離れているところであっても大雨・暴風・竜巻等で被害の大きい地域がテレビ画面に次から次へと現れる。
TVの解説や翌日の新聞記事には、飯田付近からは北上せず、東南東方向に曲がり、諏訪湖の南側を通過し、東北信地域のほとんどの地域は進路に対して左(西)半円、海で言えば可航半円に入ってしまったためと解説している記事があり、ある程度納得いったつもりでいますが、この解釈でよいかどうか。
良いとした場合、その原因が長野県は3000m近い山が多いため、台風は進入しても直進できず今回のように曲がってしまうのだという説明もあったが、このメカニズムを詳しく教えていただきたい。
ご質問ありがとうございます。今回の台風200918号で風が弱かったメカニズムについてのご質問です。私はあいにく長野県の気象について詳しくないので推測にはなりますが、考えられる範囲でお答えしたいと思います。
まず今回の台風はGoogle Earth上で経路を確認すると、長野県の飯田市付近から山梨県の北杜市付近、群馬県の高崎市付近を通過しており、長野県の東北信地域は進行方向左側のいわゆる「可航半円」(風向と台風の進行方向が逆になるため両者が打ち消しあって風速が弱まる側)に入っています。ただし山地の場合は、台風の進行方向との位置関係に加えて、むしろ風向と地形との関係が重要になってくるのではないでしょうか。谷に沿って入ってくる風は強くなりますし、山を越えて入ってくる風は弱くなるという関係も影響すると考えられます。
その一つの調べ方として、気象庁 | 過去の気象データ検索の「各地点ごとの観測史上1〜10位の値」を使って、各地点でどの風向だと風が強くなるのかを調べてみます。例えば松本や諏訪は南寄りの風ですが、上田は北寄りの風、佐久は南から西寄りの風で最大風速を記録する傾向があるようです。このように、強い風速を記録する風向には地点ごとに違いがありそうで、これには地形が関係していると推測できます。今回の台風では、長野県の東北信地域は東から北寄りの風が強まるコースにあたりますが、この方向だと風が山にさえぎられるという場所では、それほど強い風が吹かない可能性が高まります。お住まいの場所ではどの風向が危険なのか、一度調べてみるとよいかもしれません。なおアメダスに関する基礎情報の一部はアメダス統計でも調査できます。
また今回のように台風が徐々に温帯低気圧に変わりつつある場合の風の分布はかなり複雑になることもありますので、台風の進行方向左側は風が弱まるという法則だけでは判断しない方がよいかもしれません。また台風の高さ自体が日本付近では10,000m程度ですので、長野県に広がる3,000m級の山脈は台風の構造に大きなダメージを与えます。その結果として、複数の中心に分裂したり、別の場所に中心がジャンプしたりすることもよくあります。台風の中心を「地上で気圧が最も低くなる場所」と定義すれば、それが地形によって複雑な動きをしうることも想像できるのではないでしょうか。長野県の山脈を前にコースを南側に曲げた例としては、他にも台風200423号などがあります。
最後に今回の台風では千葉県や茨城県など、台風中心からやや離れたところで竜巻が発生しましたが、この地域は平野で風通しもよい場所ですので、台風の進行方向右側がいわゆる「危険半円」(風向と台風の進行方向が同じなため両者が加わって風速が強まる側)であることがより直接的に影響したものと思います。また台風の雲の分布もこの段階ではかなり非対称になっており、中心の東側の関東地方に強い雨雲がかかっていましたので、そこで竜巻が発生したことも不思議ではないと思います。特に本州付近に接近する台風は、雨や風の分布が非対称になっていたり他の雲とつながったりすることも多く、また雨と風の強さは実際には地形の影響を受ける面も大きいため、中心付近が最も危険なエリアだとは思いこまず、中心から遠いところでも警戒することが重要です。
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