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日降水量(JST)のランキングについて、気象庁のページでは1位が「尾鷲806ミリ」となっているのですが、デジタル台風のページでは1位が「日出岳844ミリ」となっています。どんな違いがあるのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。なるほど、これは確かに紛らわしいですね。上記気象庁のページを見ると、以下のような凡例があります。
次の要素を対象に、現在観測を行っている全国の観測所について、観測開始または移転等により観測環境が変わった時からの観測史上1位の値を地点ごとに比較し、大きい順(または小さい順)に上位20位を示しました。(1つの地点では第1位の観測値だけを使用するので、1つの地点は1回しか掲載されません。)
ここでポイントとなるのが、上記のランキングは「現在観測を行っている」ものに限定しているという点です。アメダス日出岳は、2009年11月をもって廃止されましたので、上記のランキング対象から外れています。そのため「日出岳844mm」の記録は、「ランキングから消えた幻の記録」となってしまいました。
一方、「尾鷲806mm」の記録が集中豪雨記録のページにないのは、これがアメダスの記録ではないからです。尾鷲の記録は1968年であり、1976年のアメダス観測開始より以前の記録です。よって気象庁の雨量記録としてはこれが1位になりますが、その一部となるアメダスの雨量記録にこれは出現しません。ちなみに気象庁の2位とアメダスの2位は一致しています。
さて、2009年11月のアメダス廃止は、山岳部に位置する観測点74箇所に及びました。気象庁がこれらを廃止した理由は経費の削減であり、山岳部のアメダスは特にメンテナンスに手間がかかるからだそうです。ただしこの変更によって、大雨の規模や激しさを比較するのに、アメダス雨量を単純に比較するだけでは不十分となりました。費用対効果を考えればやむを得ない面もあると思いますが、大雨の記録(極値)が出にくくなるという影響はあるでしょう。長官記者会見要旨(平成21年11月19日)にも、日出岳の廃止に関するそうした質疑応答が記録されています。
気象庁の立場は、リアルタイムアメダスとリアルタイムレーダーを併用すれば、大雨は十分に検出できるから問題ないというものです。しかし雨雲レーダーから推定する雨量は、場所によってはそれほど正確ではありません。最近、汚染水の上昇が問題となっている福島第一原発付近での雨量をモニターしているのですが、福島第一原発における雨量と汚染水の水位上昇の関係でも検証したように、レーダー雨量とアメダス雨量は時に大きく異なる挙動を示します。気象レーダーでも集中豪雨自体の発生を検出することはある程度可能でしょうが、集中豪雨の雨量を正確に推定することは困難です。したがって、レーダー雨量による「日降水量のランキング」にはあまり意味がなく、今後も降水量の記録はアメダス雨量を対象とすることになると思います。
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