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再三にわたり、ご丁寧な解説ありがとうございます。私の[質問112]では、あまりに多くのことを書きすぎたために、焦点がぼやけてしまったかもしれません。
私が最も言いたかったのは、以下の点でした(ご回答の中で、この点についてのはっきりしたご見解は述べられていませんでした)。
台風201408号では、途中から強風域が正しく発表されず、警戒を促すべき人々に重要な情報が伝わりにくかった、と思っているからです。
※ 以下は、8月3日に書いたものですが、その後の台風201412号に関しては、他の方の[質問113]へのご回答にあったように、「風速は台風の中心よりも東側の領域で最大となっています」「中心付近を除いて最大風速は30メートル」といった表現が用いられており、また、台風201411号における気象庁発表、マスメディア報道も、台風201408号の時に比べ改善されたように思います。
[質問112]へのご回答に、「強風域を『中心と半径』で表現するメリットは、少数の数字(情報量)で伝えられる点にある」とありましたが、私は前回、「当面、強風域を大まかな円で示す従来の方法は続けてもよいでしょう」と述べましたように、必ずしもその方式を否定しているわけではありません。温帯低気圧に近くなり、実際の強風域の中心が台風の中心から200~300kmもはずれたにもかかわらず、防災上は無意味となった「最低気圧の地点を中心とした円」を、約30時間にわたって「強風域」と称して発表し続けたことを問題にしたかったのです。
[質問111]へのご回答にあったように、「温帯低気圧化が進んだ台風では、大雨領域も強風領域も中心位置とはあまり関係がなくなってくる、逆に言えば中心位置はあまり重要ではなくなってくる」わけですから、当然、中心からはずれた「実際の強風域」を別に表示しなければなりません。しかし、地図上に二つの円があると紛らわしいため、防災上重要でなくなった「最低気圧の地点を中心とした円」を消すべきだ、と考えているわけです。
------ [質問110]へのご回答にあったように、不規則な形をした強風域をあくまで円(または楕円)で示そうとすると、領域がかなり広くなってしまいますが、それは防災上やむをえないことです。もしそれを避けようとするなら、「鉛直台風」で示されるような画像を使用するのが一番よいのではないでしょうか。ご回答に、「強風域という地図情報を自分の行動に結び付けるには画像の適切な解釈が必要であり、それは多くの人にとって簡単ではない」とありましたが、「雲と降水」の地図上の分布とその移動を示す画像はすでにテレビ放送されています。「鉛直台風」の「強風域」の画像も、それと同様多くの人々にとって解釈が難しいとは思えないのですが。------
また、台風201408号での<○日○時の実況>を、「15m/s以上の強風域は ○の南○kmの太平洋上を中心とし、南東側○km 北西側○kmに及ぶ範囲。 最大風速○m/s 最大瞬間風速○m/s」という発表に変えたとしても、「少数の数字(情報量)で伝える」ということに変わりはなく、太平洋上(離島を含む)でラジオを聞いた人々にとっては、明らかにそのほうが危険回避のために役立ったと思われます。
そこで、ご回答にあった「マスメディア情報が関東地方に偏るのも仕方のない現象です。そのことを批判するよりも、どうしたら東京以外の人にもローカル情報を届けられるのか、という点こそ考えるべきでしょう」という点について述べさせていただきます。
ご紹介の、台風なう!(@TyphoonNow)のように情報をより個人化するという道は、今後飛躍的に開けていくことでしょうし、私もそれを大いに期待しています。
一方で、情報をテレビやラジオだけに頼っている人々もまだまだ多く、情報源の少ない人ほど、マスメディアの報道によって危険回避行動が大きく影響されることを忘れてはならないと思います。
ところが、台風201408号のテレビ報道で、(警報・注意報は当然放送されますが)強風域が南の太平洋上に移ったことを明確に伝える概況説明は(私の知る限り)ありませんでした。
放送された気象庁予報課・海老原智課長の会見発表(7月10日午後5時ごろ)は、「台風第8号は、午後3時現在、室戸岬の南南東にあって、東北東に進んでいます。今後、台風は本州の沿岸を東に進み、明日早朝には関東地方に接近し、明日午後には東北地方の東海上で温帯低気圧に変わる見込みです。台風の進路にあたる地域では、大雨や強風、高波に警戒が必要です(放送はここでカット)」というもので、中心の位置と進路、およびその周辺の状況に重点がおかれていました。
当然ながら、NHKのNews Watch 9 (7月10日午後9時)でのアナウンスも、台風の中心の進路を述べたあと、「中心の気圧は990hPa、最大風速は25m、最大瞬間風速は35mで、これから明日の朝にかけて本州の南岸を東へ進む見込みです」と続き、長野県と岐阜県における土砂災害、および山形県での川の増水・氾濫への警戒を呼びかけ、「台風8号は、これから明日の朝にかけて関東地方に近づく見込みです」と締めくくっていました。(以上は、YouTubeの動画を参考)
報道内容が人口の多い関東地方の視聴者向けの内容に偏ってしまうというのは、ある程度理解できます。しかし、気象庁の会見発表も、テレビ(おそらくラジオも)のアナウンスも、関東以外の本州各県の住民には警戒を呼びかけながら、南海上の強風の危険について(ほんの10~20秒ですむのに)一言も触れなかったのは、どうしてでしょうか。
また、気象庁は、7月9日15時の時点で「中心付近の」という表現を用いず、単に「最大風速」「瞬間最大風速」という表示に変えたようですが、上記の報道を聞いて、それが、「強風域」として示された円の周辺部の風速だと解釈できた人が、はたしてどのくらいいたでしょうか?
これでは危険にさらされた海域の人々をあまりにも軽視していたと言わざるをえません。 ([質問111]へのご回答にあったように、「死活的に重要な情報」ですので)
ご回答にあった、「(温帯低気圧になると強風域が中心付近から外れる、ということは)以前から認識はされていたのですが、マスメディアでは台風情報の複雑化を避けるため、あまり強調されてこなかった面はあるかもしれません。理解を広めるためには引続き周知する必要があるというのは同感です」という点についてですが、私はむしろ、人々がそのことを知らせられなかったことにより、認知の混乱や誤解を招く結果になっていたと思います。「数値を操作しているのでは」といった私の当初の疑問もそこから生じた訳ですし、いろいろな「認知的不協和」の大きな原因にもなっていたといえます。
また、マスメディアの報道が気象庁の発表内容を反映するのは当然のことですから、まず、気象庁の会見発表の中で、「強風域が中心付近から外れた」ということを述べ、実際の強風域の人々への警戒を促していただくのが先決ではないでしょうか。
仰るように、「台風情報を改善することはなかなか難しい」としても、あくまで人命尊重の観点から緊急避難的に、システムの大幅な変更を待たず、気象庁会見発表で一言追加するくらいは必要だと思います。おそらく、私だけでなく多くの人がそう考えるはずです。 「台風の状態変化(温帯低気圧への変化など)が必要以上に注目されるために、それが引き起こすハザード(大雨や強風)に対する注目が低下してしまうという状況は好ましくはありません」とのご意見には、まったく同感です。しかし、台風とは無関係な集中豪雨などで、台風以上に危険な大雨への警戒を要することも多いわけですし、必ずしも「大雨の危険=強風域」でないことは多くの人々が理解しています。ですから、台風の中心に近い地域に対しては、「強風域は遠ざかったが、大雨の危険はかえって増大した」ことを強調(テレビでは、雲と降水の地図上の分布予想も画像で示されます)すればすむことですし、むしろ強風の危険領域での注目を高めることを最優先すべきです。
また、いかに時間がかかるとはいえ、強風域の問題が「以前から認識はされていた」にもかかわらず、(おそらく)数十年にわたって台風情報のあり方があまり変わらなかったのはなぜなのでしょうか。
「台風は円状のもの」「円の外側ほど安全」「風速などの台風情報は中心付近に関すること」という多くの人々の思い込み(私にもありました)や、それを助長するようなマスメディア報道のあり方を改めていく「啓蒙者」としての役割も、気象庁には求められているはずです。また、現状で一般住民が台風情報をどのように解釈(誤解を含めて)しているかを踏まえ、重要な情報を必要とする人がそれをきちんと受け取り、適切な危険回避行動がとれるよう、情報提供のあり方についての改善がこれまでにもう少しなされていてもよかったのではないかという気がします。
たびたび、まことに恐縮ですが、主に冒頭の①②につき、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。(気象庁からは、[質問111]へのご回答はありましたが、[質問112]に対してはまだです。)
台風201408号での発表(気象庁の会見発表を含め)はどうあるべきだったか(またはあのとおりで良かった)についてのご意見と、根本的改善に時間がかかるのであれば、今シーズンからでもとりあえずできること(すでに改善されたことに加えて)についてのご提案も含めてお願いいたします。
ご多忙中申し訳ありませんが、何とぞよろしくお願いいたします。
これは質問112に関する追加質問です。強風域の位置については、質問116であったように、中心から外れた場所が強風の時は、そのようなアナウンスがされることはあります。ただこれは、以前から続く運用方法を適用したものですので、直近の事例に対する改善策ではありません。マスメディア報道が改善されたように見えるのは、単に勢力が「史上最強クラス」ではなかったためで、何かが変わったというわけではないと思います。
さて、以上のご指摘について、内容としては理解できる面もありますが、課題があまりに多岐に渡るため、そう簡単な答えは出ないと思います。また情報の扱い方については、これまでの経緯や人々のニーズも色々とありますので、それらを踏まえて議論しないとよい答えは出ないでしょう。誰に向けての情報かということも考えなければなりません。プロ向けには判断を支援する情報を、一般向けにはわかりやすい情報を、ということになりますが、要するに伝えるべきメッセージが適切な人に伝わるかどうかが重要な課題です。正確性というのはメッセージの一面でしかなく、正確性が最も重要であるとも一概には言えません。東日本大震災による津波災害では、伝えるべきメッセージは「津波の正確な高さ」ではなく、「すぐ逃げろ!」でした。行動を起こすメッセージをどう伝えるかが重要なのです。
このような行動への働きかけをさらに強める動きの一つが特別警報の導入です。これは比喩的に言えば「発表から発令へ」、すなわち「皆さんが自分で情報を解釈して下さい」から「皆さんは情報に従って下さい」という世界へ一歩踏み込む動きと言えるでしょう。気象に限らず、地震や火山噴火でも同じ動きが見られます。現状の特別警報には問題点が多々あり(例えば台風201326号による大島豪雨のケース)、観測と予報を主な業務とする気象庁が行動をどこまで指示すべきかについては、識者の間でも一致した見解はまだないように思います。とはいえ、このようなトレンドを踏まえるなら、伝えるべきメッセージは何か、というアウトプットから検討していく必要があると考えています。
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