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こんにちは。
台風の風の吸い込みが反時計回りであることは衆知のことです。
一方、台風上層の吹き出し風についてはあまり知られていませんが、おおむね、時計回りという記述を見ます。
http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/help/world.html.ja#id2
http://www.tenki.jp/docs/note/typhoon/page_2
しかしながら、 https://earth.nullschool.net/jp/ で台風上層を見ると、複数の台風で一貫して吹き出しも反時計回りです。
可視化に間違いがあるということも考えられますが、「実はコリオリ力よりも下層の流れとの摩擦が強い」といった理由で反時計回りの吹き出しになっているといったことは無いでしょうか。
ご質問ありがとうございます。Earthが利用する数値予報モデルデータに関して、気象庁が出すデータについては世界版リアルタイム風向きマップ(気象庁数値予報モデルGPVデータ)でも見ることができますが、いずれの場合も台風の周囲を回る風は大気圏の中では反時計回りとなっています。つまり、台風の周囲の風の回転方向は反時計回りで、これは低気圧である限りはそうなります。ただしよく見てみると、上層には中心から離れたところに逆回転する雲があります。それがこの時計回りの雲です。
その様子を台風高頻度観測 - 「ひまわり8号」画像/動画で見てみましょう。例えばいま接近している台風201610号の赤外の動画を再生してみてください。そして台風の勢力が最盛期になったあたりで雲の動きをよく観察してみると、中心から離れた外側の薄い雲(少しグレーがかった雲)が、中心付近と比べて逆回転しているように見えるでしょう。これが台風から吹き出して外側に流れていく薄い雲たちです。赤外よりもBD強調やNHC強調の動画の方がより明確に見えるかもしれません。
台風は中心に空気が集まってくる渦ですから、どこかでその空気を逃さないといけません。そこで大気圏の上端まで上昇した空気は、相変わらず反時計回りに回転しつつ、しだいに外側に押し出されていきます。外側に押し出されるにしたがって、回転速度も徐々に遅くなっていきます(角運動量の保存則)。これは地上では中心に近くなるほど風速が強くなるのと逆の関係です。そして中心からかなり外側にまで動いてくると、今度はコリオリ力の影響が相対的に強まってきます。そしてコリオリ力によって、この空気は徐々に時計回りに反転していくというのが、この逆回転の仕組みとなります。
では、この動きがなぜ数値予報モデルの上では明瞭に見えないのか。私も自分で確かめたことがないので断言はできませんが、数値予報モデルの気圧面(hPa)では、この流れをうまく捉えられないという理由があるかもしれません。鉛直台風で台風の鉛直断面図を見てみると、台風の上端はそれほど明確ではありませんが、場所によって高さも異なるため、ある特定の気圧面に張り付いているわけではありません。さらに、この流れをきちんと表現することが予報精度の向上や防災に貢献するかといえば、この流れに影響される雲は雨を降らせる雲ではありませんし、上空の風向・風速は地上の風向・風速とは関係ありませんから、そこはあまり頑張るポイントではないとも言えるでしょうか。
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