確かに台風200514号の巨大な眼は珍しいと話題になりました。ちなみにFacebook版の表紙画像にもこの台風の画像を使っています。このように台風の眼が拡大する過程としては、以下の2つの場合が考えられます。
第一に、もともと中心付近の渦が大きく、そこに眼が生じる場合です。これは「鍋底台風」とも呼ばれますが、中心付近にぎゅっと詰った感じではなく、広い範囲でなんとなく渦は巻いているが中心があまり明確に定まらない、という過程で生まれます。第二に、発達した台風にできた小さな眼が、その後に拡大するという場合です。これは「eyewall replacement cycle」とも呼ばれますが、眼を取り囲む壁雲の外側に別の壁雲が生じて、そちらが強まる間に内側の壁雲が消滅して、結果的に眼が大きくなるという過程で生まれます。この2つが台風の眼が大きくなるメカニズムとして考えられます。
台風200514号の場合はそのどちらか、あるいはどれでもないのか、そこは十分に検証していないのでよくわかりませんが、気象衛星画像を見る限りではわりと最初から眼のサイズは大きめだったように見えます。ただし「多重眼」といって眼の壁雲が複数生じているような気配もありますので、この台風の場合は発達する前に壁雲の置き換えが始まってしまい、眼が拡大したのかもしれません。
なお、眼の拡大によって中心気圧の低下は抑えられます。眼の内部では気圧の変化は緩やかになるため、小さな眼の方が強い台風になります。中心気圧がそれほど強くはないというのは、眼が大きいことの結果としてそうなっていると考えられます。