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いつも台風発生する度、デジタル台風を利用させて頂いております。メディアの情報の一歩先を行っているので、私の中では最重要の情報源として感謝してます。
先日の台風10号30日の進路は住まいが石巻ですので、数日前から上陸場所の方向なっており、とても心配していました。
30日当日、会社も休みになり、避難の準備をしてデジタル台風を注視していました。
朝から、上陸場所がいわきになっていました。お昼も同じでした。夕方17時頃も同じでした。
気象庁の進路とは違っていましたが、私はずっとデジタル台風を信じていました。
進路の変更は18時を過ぎていました。石巻に最接近の最中の情報が見られなくとても残念でした。
いつもご利用ありがとうございます。台風10号は予報が大変難しい台風でしたが、特に東北地方沖での左カーブ(西向きカーブ)経路は前例がないため、予報も非常に難しいものとなりました。このように上陸が近付いてくると、24時間先の位置しかわからない台風進路予想図では粗過ぎて使えないため、1時間先の位置もわかる台風予報履歴を使うことになります。
まずこの情報に関して認識いただきたいのは、これはデジタル台風が独自に出す情報ではなく、気象庁が発表した情報である、という点です。ところがまずいことに、この情報は気象庁情報なのに気象庁ウェブサイトでは見られません。より正確に言えば、文字情報としては見られる(参考:気象庁防災情報XML)のですが、地図情報としてはきちんと描かれていないのです。そこをデジタル台風では独自に地図情報に加工しているため、あたかもデジタル台風独自の情報と思われがちですが、そうではないという点をご了解下さい。このような誤解を招かないためにも、むしろ気象庁はこの情報をウェブページにきちんと出すべきだと思います。
さて30日の状況に話を戻しますが、この日に上陸地点がいわきになっていた時間帯はあまりなかったように記憶しています。予報の履歴がどのように変わったかは台風予報履歴を使えば確認できます。この図で黄色いマーカーを右クリックすると、その時点を基準とした予報円を表示することができます(左クリックだと情報ウィンドウが出ますので見にくいかもしれません)。ここで確認すると、少なくとも1日以上前から予報円の中心は仙台から南三陸のあたりを指していました。まさに石巻への直撃という可能性もあったわけです。予報円の中心が福島県にあった時間帯もなくはないのですが、宮城県にあった時間帯の方が圧倒的に長いというのが実態です。
ただし今回の予報円に関しては、紛らわしい点があったのも確かです。それは台風の経路が西に急カーブすることにより、予報円から実際の経路が想像しづらくなったという問題です。台風進路予想図は現在地と24時間予報地とを直線で結ぶ表現のため(参考:台風の予報円と台風の中心の関係)、この直線が実際のコースとは大きく異なる場所を通る時間帯がありました。そしてこの直線が福島県を通過する時間帯もありましたので、もしかするとそのイメージが強かったのかもしれません。
このように実態と異なるイメージを持ってしまう問題に対する解決策は2つあります。第一に、台風進路予想図は、そもそも24時間経路を想像するには情報が少なすぎるので、特に経路がカーブしている場合には必ず台風予報履歴を確認することが重要です。第二に、予報円の中心を結ぶ線はそこを台風が通るという意味を持ちませので、経路図の解釈にあたっては中心線をなるべく参考にしないことも重要です。この2点に気をつけることで、台風進路予想図からより多くの情報を読み取れるようになるのではないかと思います。
さらに今回の台風について、もう一つ難しかったのが上陸直前での経路変更です。当初は台風の上陸地点は宮城県になる可能性が高いと思われていましたが、上陸直前になって北方向に進む動きが強まったため、上陸地点が岩手県まで北上することになりました。この経路はあくまで速報値に基づくものなので、再解析によって結果が変わる可能性も大いにあります。しかし本当に北上したとすると、いくつかの原因が考えられます。
第一に寒冷渦との複雑な力関係によって、微妙に進路がぶれたという原因です。第二に、北上山地の地形によって台風の中心が海上に押し出されるという原因です。山地によって台風の中心が海上に押し出されるのは、台湾ではよく見られる現象です。例えば台風200715号や台風200813号など、台湾への上陸直前に奇妙な動きをしていますが、今回の北上もこうした地形効果が原因かもしれません。第三に台風が温帯低気圧に変化しつつある中で、中心の特定が難しくなったという原因です。もしこれが原因なら再解析によって経路や上陸地点が変更になる可能性がまだ残っています。
こうして台風が北上して岩手県に上陸場所が移ることで、結果的に岩手県での被害が大きくなってしまったという面は否定できません。ただし、デジタル台風サイトでも繰り返し述べているように、台風がどこに上陸するかという情報は、台風10号のように温帯低気圧の性質が強くなった台風では、正直言えばあまり意味はないのです。温帯低気圧化しつつある台風では、風雨が強いのは中心付近とは限りません。台風10号の雨雲レーダー動画を見てもわかるように、岩手県の大雨は台風中心の北側の雨雲が引き起こしましたし、北海道十勝地方の大雨は中心から遠く離れた地域で発生しました。
となると、最も重要なメッセージは「上陸地点にこだわり過ぎない」ということかもしれません。台風の中心ではなく、台風を取り巻く雨雲の方を注視すべきなのです。台風がどのように進んでくるかというイメージを脳内に作るには、確かに経路図も有効ではあるのですが、実際の災害イメージを脳内に作るには、むしろ雨雲レーダーなどの情報を注視する方がずっと役立つとも言えます。このように台風情報を使いこなすことで、災害への備えをより確実なものにしていただければ幸いです。
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