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昨今新聞等をにぎわしているスーパー台風とは、スーパー伊勢湾台風と同じ表現なのでしょうか? 伊勢湾台風を超える、もしくは同等の規模の台風をスーパー台風と表現するのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。両方とも「スーパー」という表現がついているので大変まぎらわしいですが、両者は若干異なるものを指しています。以下にどう違うのかを説明したいと思います。
まずスーパー伊勢湾台風とは、伊勢湾台風の勢力を越えるような仮想的な台風として想定されるもので、日本における一部の高潮シミュレーションに使われています。伊勢湾台風の大災害を受けて1961年に災害対策基本法が定められたように、伊勢湾台風は日本の防災対策の基準となっています。伊勢湾台風がもう一回来ても、あるいは過去最強クラスの台風が来ても大丈夫なように、防災対策が各地で進められてきました。では、日本の本土に上陸または極めて接近した過去最強クラスの台風とは何かということになりますが、一般的には1934年の室戸台風と言われており、伊勢湾台風も室戸台風に次いで過去最強クラスに匹敵する台風と言われています。このような「(日本本土に上陸・接近した時点での勢力が)過去最強クラスの台風」を、わかりやすく言い換えた表現が「スーパー伊勢湾台風」です。
一方の「スーパー台風」ですが、これは米国の米軍合同台風警報センターが台風の強さの分類に利用しているSuper Typhoonという表現の直訳です。これは中心付近の最大風速が130ノット(=67m/s)(*1)を越えるような非常に強い台風を指す言葉で、このクラスの台風は毎年0個か1個、せいぜい数個しか発生しません。また通常は太平洋の南方海上で勢力のピークを迎えますので、日本の本土に接近するころには海水温の低下やその他の原因で勢力は衰えますが、沖縄などの南方の島ではスーパー台風がピーク勢力で直撃することもあります。正確な定義は上のようになりますが、大まかには「(ピーク勢力が)1年間で最も強いクラスの台風」を指す表現が「スーパー台風」であると考えればよいでしょう。
以上をまとめると、両者の違いは以下のようになります。
最後に、昨今新聞等をにぎわしている「スーパー台風」ですが、これは地球が温暖化した環境では、スーパー台風の勢力を保ったままで日本の本土まで接近・上陸する台風が出現する可能性があることを警告するものです。また史上最低の中心気圧870hPaを観測した台風197920号の勢力を上回るような、最大風速80m/sの「スーパー台風」も出現する可能性があるようです。ただし「スーパー台風」の基準は60m/s〜70m/s以上ですので、上記の台風はスーパー台風の基準をはるかに越えた、スーパー台風中のスーパー台風とも言えるでしょう。そしてこのクラスの台風があまり衰えずに日本の本土に接近・上陸すれば、それはもちろん「スーパー伊勢湾台風」クラスの台風ということになります。
(*1) 最大風速に関する注意点にあるように、日本の風速は10分平均、米国の風速は1分平均で計測します。一般に10分平均風速は1分平均風速の0.88倍に相当すると言われていますので、これを単純に当てはめると、スーパー台風は日本基準では最大風速59m/s以上の台風に相当します。気象庁の分類では、最も強いクラスである猛烈な台風は最大風速54m/s以上ですので、「スーパー台風」は「猛烈な台風」よりもさらに強い台風ということになります。
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