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現在発生している台風16号の中心気圧を見て5hPa刻みに変化しているので気になったので調べました。Dvorak methodという方法で求めているとのことですが、その測定精度(正確には推定精度でしょうけれど)は何桁ぐらいなのでしょうか?ご教授いただけると助かります。あるいは、この論文を読めでも結構です。よろしくお願い致します。
ドボラック法の推定精度ですが、ここではprecision(精密さ)の意味とaccuracy(正確さ)の意味とを区別して考えてみたいと思います。
まず前者の方、すなわち中心気圧はどのくらい細かいのか、がお聞きになっている質問だと思います。ドボラック法の手順は、世界気象機関の文書などに詳しく説明されています。そして136ページにはCurrent Intensity (CI)という数字と中心気圧との対応に関する経験的な対応表というものがありますが、ここでは中心気圧の刻みは10hPa程度のもっと大雑把なものになっており、これだけでは気象庁台風情報の精密さとの関係はよくわかりません。
適当な資料が見付からないので断言はできませんが、台風の中心気圧が5hPa刻みとなっているのは、ドボラック法の推定精度というよりは気象庁の内部規定によるものではないかと思います。つまり、どのみち1hPa単位で精密な値が出せるわけではないので、キリのいい数字として5hPa刻みが選ばれているということです。ちなみに過去に出現したすべての気圧は、最低中心気圧で検索ページで確認できます。このページで設定できる検索条件は、過去に出現したすべての気圧を網羅していますが、必ずしも5hPa刻みの数字だけではなく、それ以外の「中途半端な」数字の気圧も出現していることがわかります。
中途半端な数字が出現する原因はいくつかあります。第一に、台風が温帯低気圧になると気圧の刻みは変わります。第二に、昔は現在とは異なる規則が使われており、また米軍が飛行機観測をしていた時代には実測値を使うこともできたため、昔の台風にはより多様な気圧が出現します。そして近年では例外的に、台風200613号において919hPaという中途半端な気圧が記録されました(0613 Shanshanの中心気圧について)。リンク先のページで推測したように、実測値が得られれば正確さという意味で通常のドボラック法よりも高い精度を達成できるため、精密さについても5hPa刻みには必ずしもこだわらないのでしょう。
次に後者の方は、推定した結果がどのくらい正確かという意味で、これは上記のドボラック法のページにも書きましたが、よく議論になる点です。台風201215号の際にも、沖縄本島に上陸した台風の中心気圧がドボラック法で推定した値よりも高かったのではないかという「疑惑」が話題になりましたが、これなども推定の正確さに関する問題です。ただし、西太平洋では飛行機による観測がほとんどありませんので、たまたま陸地の上を通過しない限りは検証が困難という状況です。一方、大西洋のハリケーンでは飛行機観測が今でも続いているためドボラック法の検証も可能ですが、その数字についてはいずれ調べてみたいと思います。
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