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[質問110]に対し、早速ご丁寧な回答をいただきありがとうございました。
私の書き方が悪く、「温帯低気圧化発表のタイミング」に関する質問と受け取られたようですが、「温帯低気圧化発表を遅らせる意図はある程度理解できます」と述べましたように、発表タイミングについては(仰るように)「多少の前後は許容されてよい」と考えております。風速だけで決められるものでないことも少しは理解していたつもりです。しかし、専門的見地から深く掘り下げた詳しいご解説は大変勉強になり、感謝しております。
実は私が最も強調したかったのは、台風情報で1時間ごとに<○日○時の実況>として発表された数値と、気象台・測候所・アメダスの観測値とがあまりに食い違っている点でした。
--- [質問110]では「アメダス観測データ」と記述しましたが、「気象台・測候所・アメダスの観測値」とすべきでした。訂正いたします。---
<11日08時の実況>の「存在地域 銚子市付近 最大風速23m/s 最大瞬間風速35m/s」という数値は、銚子の観測値(11日の最大風速11.9m/s 最大瞬間風速18.2m/s=01:23)の約2倍に相当します。ご回答の中に「強風の領域が中心付近ではなく遠く離れた地域に出現することも多くなります」との記述がありましたが、銚子の毎正時風速が10日から11日朝にかけてすべて11m/s未満であったこと、11日、千葉県内の他の観測地点で銚子の数値を上回ったのは、勝浦の最大風速12.6m/s、成田の最大瞬間風速18.5m/s だけであったことから、<11日08時の実況>としてこのように高い数値が示されるのは理解できません。もちろん、ベストトラックデータと異なり、あくまで速報値であることは承知していますが、これは気象台・測候所・アメダスの経時的な観測値をもとに発表されるのではないのでしょうか?
私を含め多くの人は、(推定でなく)<実況>と称して発表されるデータは当然観測値に近いものと思っており、数値の大幅な食い違いを不思議に感じるはずです。
[質問110]で私が、<11日09時の実況>で唐突に「温帯低気圧」となっている点を指摘したのは、発表のタイミングは悪くなかったとしても、わずか1時間前に発表された<11日08時の実況>と、<11日09時の推定>の、最大風速23m/s 最大瞬間風速35m/s の数値があまりに大きく不自然であり、それまでの<実況>の数値も含め、温帯低気圧化発表を遅らすために、意図的に操作(これは許容できません)されたのではないかという疑問が生じたからです。
前回の質問が舌足らずで申し訳ありませんでした。まことに恐縮ですが、「数値の食い違い」に関して再度ご回答いただければ幸いです。
これは気象庁台風情報(実況)とアメダス観測データとの食い違いに関する再質問です。
さて、詳細経路情報を確認すると、温帯低気圧になる前の11日6時の最大風速は45ノット(23m/s)、温帯低気圧になった11日9時の最大風速は40ノット(20m/s)となっています。それに対し、千葉県の地上観測では、12m/s程度の最大風速しか観測されていません。両者の値が違っているのはおかしいのではないか、というご質問です。それに対して、これはまさに「台風の中心付近で風速が最大とは限らない」という事例ではないでしょうか、というのが私からの回答です。台風の中心が銚子付近を通過したとしても、最大風速の領域が銚子付近を通過するとは限らないのです。
その状況を、鉛直台風を使って説明してみましょう。鉛直台風は気象庁が天気予報に用いる数値予報モデルのデータをデータベース化したもので、風速は世界版リアルタイム風向きマップ(気象庁数値予報モデルGPVデータ)で用いているデータと同じです。これは実況値ではありませんので正しいデータとは言えませんが、観測値を反映したシミュレーションデータですので、台風の風の相対的な分布を把握するには役立つと思います。このサイトで、水平断面図を選び、さらに選択肢として、台風「2014年8号」、モデル「MSM」、高度「1000hPa」、変数「風速[m/s]」を選んでください。この図の中心が台風の中心、赤い部分が強風領域ですので、解析時刻をさかのぼりながら強風領域の動きを見てください。
これを見ると、強風領域は台風のはるか南側の太平洋上にあって、その強風領域の形状や位置は同心円状の強風領域というイメージとはかけ離れています。台風の中心を地上気圧が最も低い領域と定義すると、強風領域は必ずしもそれを取り巻く同心円状に分布するとは限らないわけです。今回気象庁が発表していた最大風速は、このはるか南海上の強風領域を対象としたものだと考えられます。これは海運業者や漁業者にとっては死活的に重要な情報ですので、台風情報の発表としては当然ながらここを重視すべきです。
その結果として、陸上に住む人々にとっては実感とかけ離れた数値になってしまうではないかというのは、確かにおっしゃる通りだと思います。ただし重要なのは、陸上の観測数値と台風の推定数値が大きく食い違う状況は、数値を意図的に操作しなくても十分にありうる、ということなのです。温帯低気圧化が進んだ台風では、大雨領域も強風領域も中心位置とはあまり関係がなくなってくる、逆に言えば中心位置はあまり重要ではなくなってくる、とも言えるでしょう。さらに付け加えるなら、中心位置があまり重要でない場合には、台風の上陸の有無にこだわり過ぎてもあまり意味はない、とも言えます。
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