台風の進行方向の右側では、一般に風が強いと言われます。このような性質は以前から船乗りには知られており、航海が危険であることから「危険半円」と呼ばれています。その反対に左側では風が弱いので「可航半円」と呼ばれます(もちろんこれは相対的な表現で、航海できるほど「安全」というわけではありません)。
北半球において台風の進行方向右側では、台風の周囲を渦卷く反時計回りの風の方向と、台風自体が進む方向とが一致するため、それらを合わせると風が強まります。一方、進行方向の左側では、両者の風向が逆になるため、打ち消しあって風が弱くなります。このように風の分布を台風の回転と台風の移動との組合せとして理解するというのが、台風の右側の風が強いことに対する一般的な説明となります。
ただし上記の説明からわかるように、台風がノロノロ動いている場合には台風自体が進むことによる効果は小さいので、左右でそれほど大きな違いが出るわけではありません。また大きな台風の場合は、周囲に存在する高気圧との気圧差によって中心から離れた場所で風が強まることがあり、この場合は高気圧との位置関係によって進行方向左側で風が強まることもあります。
またこの性質は「風」に関するもので、「雨」については関係ないことには注意してください。個々の台風にはそれぞれ「個性」があるので、それぞれの場合について気象情報を確認することが重要です。