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JTWCが公開しているベストトラックデータのうち、中心気圧と最大風速の双方が揃っている2001年~2017年までのデータを使用して、両者の相関を調べる為に散布図を作成したのですが、2006年以前と2007年以降では明らかに異なる傾向が認められました。
中心気圧が低いスーパータイフーンで顕著に表れたのですが、2007年以降のスーパータイフーンと比較すると、2001~2006年のそれは最大風速の割に中心気圧が低い傾向が散布図上で強く出ておりました。
気象庁とJTWCでベストトラックの比較も行ってみたのですが、気象庁ベストトラックではその6年間に中心気圧900hPaを切る台風は0個だったのに対し、JTWCベストトラックでは15個と多数記録されていました。特に2004年6号及び16号では、気象庁ベストトラックでは最低気圧が915hPa,910hPaであったのに対し、JTWCベストトラックでは最低気圧が共に879hPaと異常とも思えるほど低い気圧が記録されており、驚きを隠せませんでした。
一方で2007年以降のデータを見ると、気象庁よりもJTWCの方が気圧が高くなっているケースも見受けられ、例えば気象庁ベストトラックで最低気圧885hPaを記録している2010年13号は、JTWCでは903hPaにとどまっておりました。
気象庁とJTWCでこれほどの差があることに驚きました。気圧の観測(推定?)手法が全く異なるのでしょうか?またJTWCでは2007年以降異なる手法で中心気圧を出すようになったのでしょうか?
興味深い調査結果ですね。ご存知のように中心気圧/最大風速はドボラック法などを使って推定されていますが、ドボラック法は完璧な方法ではなく見直しが入りますので、ある時期に大きな変更があっても不思議ではありません。
JTWCで具体的にどのようなドボラック法が利用されているのかは詳しくないので一般論で言えば、ドボラック法には中心気圧を最初に推定する方法、最大風速を最初に推定する方法、そしてそれらの関係を同時に推定する方法などのバリエーションがあります。中心気圧を推定し、変換表(変換式)を使って最大風速を推定するというのが、オリジナルのドボラック法です。一方、最大風速を推定し、変換表(変換式)を使って中心気圧を推定するという方法も世界各地で使われています。最大風速の方が被害に直結するので、そちらの方が重要な情報だからです。この2つの方法の場合、変換表(変換式)を更新すると、変換前の値が同じであっても変換後の値は大きく変化することがありえます。さらに、中心気圧と最大風速の関係は、変換表(変換式)で一対一に変換可能な単純な関係ではないため、本来は両者を同時に推定することが望ましいはずです。
つまり2007年を境にした変化は、ドボラック法自体の進化、高精度データの追加に伴う精度向上、変換表(変換式)の見直しなど、様々な要因が影響している可能性があります。そのあたりは私もあまり詳しくはありませんが、時間があれば調べてみたいと思っています。また、歴史的データの不連続性を解消するためには、現在の技術で過去のデータを見直す「再解析」も重要な課題となります。
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