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台風の中心位置はどのようにして決定するのでしょうか
まず「台風の中心位置とは何か」という問題について考えましょう。台風の中心位置の定義には以下のようなものがあります(他にもあるかもしれません)。
これらの基準によって決定される台風中心位置はそれぞれ異なりますので、厳密に言えばどの基準を用いるのかを決めなければなりません。レーダーや気象衛星等が手に入らない時代には、気圧分布を描いてその(同心)円の中心位置を推定する方法も使われていました。この方法は海洋上に台風がある場合にも使えますが、台風が遠くにあって観測値が得にくい場合には誤差が大きくなります。
現代ではレーダーや気象衛星等のデータが豊富に得られますので、これらのデータで眼がはっきりと見えれば、その形状から中心位置を推定することができます。しかし台風の眼はいつでも見えるわけではありません。まず弱い台風では眼が存在しません。また気象衛星画像では雲に覆われて形状が見分けにくい眼がレーダー画像では見えることもあるのですが、海洋上ではレーダーの観測範囲外である場所が多いために精度が落ちます。したがって眼に基づく方法がいつでも使えるわけではありません。
台風の中心に向けて巻き込むらせん状の雲(レインバンド)が集まる中心を探すこともあります。雲の形にあてはめたらせん曲線を台風の中心に向けて延ばしていけば、それが重なる領域を風が集まる中心と定めることもできるでしょう。また気象衛星画像やレーダー画像を時系列画像として動画再生してみると、風が中心の周囲を回転する様子が見えることがあります。もし中心付近の風の分布が対称に近い形であれば、こうした方法で風の回転中心を推定することもできます。
台風が陸地に上陸する直前ともなれば、地上気圧を測定できる地点も増えますので、気圧極小点を求めることも可能でしょう。また海洋上でも航空機観測などによる詳細なデータが入手できれば、気圧極小点などを決めることも可能かもしれません。個人的には「気圧極小点」というのが最も直感的にわかりやすい台風中心の考え方だと感じますが、実際には入手できるデータの中から最も信頼性の高い推定方法を見極め、総合的に判断するというのが正しいやり方でしょう。
なお台風の中心位置を決定するというのは、簡単そうに見えて実は難しいものです。特に不規則な形状の台風、地上付近の低い雲でしか中心がわからない台風は、中心位置決定が困難であることが知られています。また中心位置を正確に推定するのは台風の勢力を推定するドボラック法でも重要な作業です。ドボラック法や中心位置の決定が難しい例などについては、5年ほど前のNII市民講座でも説明したことがありますので、よろしければ参考にして下さい。
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