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数日前、母とテレビを見ていて、最近台風が少ないと思い、聞いてみることにしました。
もしかして、今問題になっている「地球温暖化」なのでしょうか?
お教えください!!
こんにちは。確かに今年(2010年)は台風が少ないですね。台風リスト(2010年)が示すように、もう8月末に近付いたというのに台風はまだ5個しか発生していません。平年ならば8月末には14個ほど発生しているはずですので、いつもの1/3ぐらいしか発生していないことになります。これを上回る(というか下回る?)記録は1998年の4個しかなく、現時点での発生数は1951年以降の60年間で2番目に少ないということになります。今後の展開によっては、今年は台風発生数最小記録を更新する記念すべき年になるかもしれません。
ではなぜこんなに少ないのでしょうか?地球温暖化の影響なのでしょうか?現在のところ有力な説に、地球温暖化が進行すると台風の個数は減るが強い台風は増えるというものがあります。この説を信じるなら、今年の台風が少ないのは地球温暖化のためではないかと思えます。しかし今年の台風は、個数が減っているだけではなく、実は強い台風も減っているのです。今のところ最強の台風201003号でも最大風速35m/s、その他はもっと弱い台風ばかりです。このことを考えれば、地球温暖化の影響と判断するのはちょっと待ったほうがよいかもしれません。
ではここで、史上最低(?)ランキングを争うライバルの1998年に着目してみましょう。両者に共通の特徴はないかと探してみると、実は今年も1998年も、エルニーニョ現象が終わってラニーニャ現象が始まった年という点に共通性があることがわかります。過去のエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間を見てみると、1998年は1997年春から1998年春まで続いたエルニーニョ現象(史上最大のエルニーニョと言われている)が終わって、1998年夏には急速にラニーニャ現象に移行しました。今年も2010年春まで続いたエルニーニョ現象が終わって、今まさにラニーニャ現象が始まった段階です。その意味で、両方の年は気候の条件がよく似ているのです。
さてこのエルニーニョ/ラニーニャ現象とは何なのでしょうか?気象庁のページの説明を引用すると以下のようになります。
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれています。
ん?南米のペルー?そんな日本の裏側という遠い場所で発生する現象と何の関係があるのかと思うかもしれませんが、実は大いに関係あるのです。南米の海で海水温が変化することによって、そこの周辺の空気の流れが変わって、それがさらに別の場所の海水温の変化を起こして、それが雲の発生場所を変えてしまい、、、というように、その影響はどんどん広がっていくのです。なんといっても太平洋は世界で一番大きな海ですから、その影響力は大きいのです。また空気は世界中でつながっていて、影響をさえぎるものはないのですから。
エルニーニョ/ラニーニャ現象が日本の天候へ影響を及ぼすメカニズムのページを見ると、ラニーニャ現象の場合は日本付近で高気圧が強まって暑くなることが多いとなっています。今年はまさにそのような状況になっており、日本中で暑い夏が続いています。この暑い夏を引き起こしている太平洋高気圧は史上最強クラスとも言われ、その勢力圏内では台風発生がガッチリと抑えられることになりました。ただしそれだけなら、フィリピン付近の対流活動が活発になってその付近で台風が発生する可能性も高まるはずです。ところが今年は、それに加えて「インド洋で海面水温が高い」というパターンも重なってフィリピン付近の対流活動までも不活発となってしまい、こちらでも台風の発生が見られなくなってしまいました。今年はどうやら雲の活発な地域が例年よりも西側に偏っているようです。今年の台風経路図を見ると、西側の南シナ海では台風が発生していますが、通常なら台風が数多く発生する太平洋中部やフィリピン東方海上では、今年は全く台風が発生していないのです。
このように太平洋上で雲がモリモリと発生する状況が消えてしまう気候パターンとなったことが、今年の台風が少ない大きな原因なのではないかと考えています。ちなみに気象庁のページには、エルニーニョ現象と台風は関係があるのですかという質問への回答がありますので、こちらも参考にしてみて下さい。
気候は複雑ですし様々な要因が影響しあうので、一つの原因ですべてが説明できるということはあまりありません。ただしエルニーニョ/ラニーニャ現象が大きな影響を及ぼしている可能性は高いと思います。いずれにしろ今年は史上最低記録を更新する可能性もありますので、今後の推移を見守っていきましょう。もしこれが地球温暖化の影響ならば、来年以降はさらに台風の個数が減ってしまうかもしれない!?まあ、さすがにそうはならないでしょうね。
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