| ||||||||||
| ||||||||||
|
モンスーン低気圧という用語で201412を説明されていますが、わたしの記憶では2006年の台風16号(BEBINCA)が同様な形態の台風で、台風の中心と数百キロ離れた場所に活発な積乱雲の巨大な塊を伴っていました。このような形態の台風の場合は当局にはレコード盤上の暴風域の概念図の扱いを再考してほしいものです。
2006年当時も気象庁には「意見メール」を送りましたが、反応はありませんでした。
この質問は台風12号は何故JTWCでプロットされていないのかに関連する質問で、2006年の台風16号の時も、台風12号と似たような状況だったのではないかということでした。またこれは気象庁台風情報の問題点(質問110・質問111に続く質問、および提案)とは異なる状況ではありますが、強風域(暴風域)の表現の問題という意味では類似した側面があります。
台風情報において強風域とは、警戒すべき地域を示すための簡易な情報表現と言えるでしょう。幾何学的な2次元図形の中で、円形は最も少ないパラメータで表現できる図形の一つだからです。これを拡張するとすれば、先の質問の提案にもありましたが、もう一つパラメータを導入して楕円表現も可能とするのがいいかなとは思います。
ただ、強風域という表現の価値は、現代においては「人々に伝えるための最もシンプルな表現」という位置付けから考えるべきで、実際の防災に関連する活動は気象レーダーGPVや数値予報モデルGPVなどのGrid Point Value、すなわち格子データ(メッシュ情報)を根拠にすべきではないか、と私は考えます。強風域に関する議論の焦点は、最もシンプルな表現としての円形を捨てて、より複雑な楕円(あるいはその他の図形)を導入する価値はあるのかという点にありますが、どうせなら強風域のような「不正確な」表現は廃止してしまって、メッシュ情報をうまく伝える表現を考える方がいいのではないか、という考え方もあるでしょう。現代において強風域の問題を考えるのであれば、どの図形が最適かというレベルだけでなく、もっと根本的なレベルで再考する必要があるのではないかな、と私は思います。
同様の文脈で、台風の「予報円」もしばしば話題になります。予報円といっても、実際には円内のどこにでも一様に進むわけではなく、2つ以上のシナリオが混ざることで予報円が実態以上に拡大することがあります。だから「円はシンプルすぎる」という指摘はその通りなのです。とはいえ、実態により近いアンサンブル予報という情報に置換すればいいかといえば、人々の理解がどこまで進むかという心配もあります。結局のところ、豊富な情報をどこまで使いこなすのかについて、人々の意識も能力も大きくばらついているというのが現状です。となれば、単純な表現から複雑な表現まで、人々のニーズに応じて多様な情報にアクセスできる環境を実現することが重要な課題でしょう。その意味で、最もシンプルな表現である強風域を複雑化すべきかと問われれば、なかなか難しいかなというのが私の感想です。
とはいえ、このままで良いわけではなく、強風域に関する理解を深める解説を加えるとともに、可能な状況であればGPVデータを併用して「実態としての強風域」を伝える努力は必要だと考えています。ここは「デジタル台風」でも取り組んでいきたい課題です。
|