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気象庁が発表する注意報のうち、最も発表回数が多いものは何でしょうか。また、それが多いのは、なぜでしょうか。
気象庁が発表する注意報については、2012年12月以降の気象庁防災情報XMLを対象として、特別警報・警報・注意報データベース(リアルタイム更新) | 気象リスクウォッチにて独自に発表/解除情報を集計しています。そして特別警報・警報・注意報の発表回数については、このページの種類別の統計情報にランキングをまとめています。これを見ると、ダントツで1位なのが「雷注意報」です。では、なぜ雷注意報が多いのでしょうか。
その理由を考えるために、雷注意報の統計情報をさらに詳しく分析してみましょう。雷注意報の月ごとの統計を見ると、夏に多く冬に少なくなることがわかります。一方雷注意報の地域ごとの統計を見ると、東京都が最も多く、ついで秋田県内陸地方が多いことがわかります。この結果はどのように解釈できるか、雷注意報の3つの特徴から考えてみたいと思います。
第一に、雷注意報と季節の関係です。確かに全国的に見れば夏に多く冬に少ないという傾向はありますが、地域によってはパターンが大きく異なります。そのよい例が、一次細分区域としては最も雷注意報の発表回数が多い秋田県内陸地方です。秋田県内陸地方の月ごとの統計を見ると、冬と夏に2つのピークがあり、それらの件数がほぼ同じであることがわかります。これは日本海側に特有の雷パターンです。太平洋側では夏の雷雲(かみなりぐも)によって発生するというのが雷の一般的なイメージですが、日本海側では冬の雪雲(ゆきぐも)によっても雷が頻繁に発生します。そして冬の雷は、決してあなどってはならない強力な雷でもあります。このように夏も冬も発表される注意報であるという点は、件数が大きくなる一つの有力な理由です。例えば大雨注意報の月ごとの統計と比べてみて下さい。
第二に、雷注意報と地域の関係です。例えば雪に関する注意報は南には出ないなど、発表される地域が事実上限定される注意報に比べると、雷注意報はどこにでも発表される可能性がある注意報です。これは、夏にも冬にも発表される注意報であることとも関係しますし、一方で雷注意報のトップが東京都であることとも関係します。東京都が発表件数のトップになるのは、いわゆる「東京」に雷が多いためではなく、東京都が南北に長いことが原因です。気象警報を発表する地域としての「東京都」は、伊豆諸島や小笠原も含む南北に長い地域で、そのどこかで雷注意報が発表されれば「東京都」にカウントされます。つまり、南方(島嶼部)だけの雷注意報や北方(本土)だけの雷注意報も別々にカウントされるため、全体として見ると発表回数が多くなるわけです。
第三に、雷注意報と精度の関係です。これはまだ検証できていないのですが、雷注意報は予測が難しいため、落雷を予防する意味でなるべく緩めに出す傾向があると考えられます。大雨注意報や強風注意報などはある程度の根拠をもって出せますが、落雷は同じようなレベルでピンポイントに地域の危険性を評価することは難しい。そのため、予防的に発表するとするとなると、これによっても件数は多くなっていきます。
ちなみに、雷注意報に限らず全気象警報の回数を調べても、最も多いのは秋田県となります。なぜ秋田県で気象警報が多いのかというのは興味深い問いですが、まだ答えは出ていません。発表基準に偏りがあるのか、それとも本当に気象リスクが高いのか、気象庁の発表状況と実際の気象条件との関係をさらに深く分析する必要があると考えています。なお、こうした地域ごとの発表回数の全体的な傾向を把握するには気象警報リスクマップ(統計情報) | 気象リスクウォッチも便利ですのでご活用下さい。
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