1. 2005年サイクロンINGRID
2005年3月16日
サイクロンINGRIDは、いまだに粘り強く生き残っています。中心気圧968hPa(カテゴリ3)には弱まったものの、雲の形は依然としてしっかりしています。これまでの経路も意外と海に近いため、少し北よりのコースをとって海上に出ることでもあれば、またまた復活しそうな勢いです。
サイクロンINGRIDは現在西オーストラリアを進んでいますが、サイクロンの直撃を受けたリゾート地キンバリーでは、建造物などがひどい被害を受けているようです。
2005年3月15日
サイクロンINGRIDはまたまた粘り強く復活し、中心気圧945hPa(カテゴリ4)に発達しています。ただし進路はしだいに南に曲ってきておりますので、まもなくオーストラリアに上陸して、その起伏の激しい一生を終えそうです。
夕方にはサイクロンINGRIDは再び935hPa(カテゴリ5)にまで発達しました。まさに不死身のサイクロンです。上に示したレーダ画像は、上陸直後と思われるサイクロンを、オーストラリア気象局のWyndhamレーダが捉えたものです。
2005年3月14日
サイクロンINGRIDは、カテゴリ3に衰えたものの勢力をしぶとく保っているようで、ティモール海という海上に出たこともあって、すぐには衰弱しそうもありません。本日の気象衛星画像でも、まだ眼が見えています。サイクロンの通過に伴い、ダーウィン北方の離島には建造物などに大きな被害が出ていますが、オーストラリア本土では「もっと雨が欲しかった」というのが本音のようです。
2005年3月13日
サイクロンINGRIDは中心気圧925hPa(カテゴリ5)、最大瞬間風速320km/hにまで発達し、最盛期を迎えています。幸いなことに最も危険な中心部は海上を進んでいるため、大きな被害はまだ報告されていないようですが、北部地域の首都ダーウィンでは、サイクロンの接近に備えて警戒を強めています。
その後、サイクロンINGRIDはコーバーグ半島に差し掛かり、カテゴリ4に衰弱しました。さらに、今後の予想コース上にはメルビル島なども控えているため、陸地に近い場所を長い間進むことによって衰え始める可能性が出はじめています。
オーストラリア気象局が提供するレーダ画像からは、サイクロンは昨日の最盛期に比べると衰えており、眼はまだ存在はしているものの、全体の雲のサイズも小さくなっていることがわかります。サイクロンは州都のダーウィンからかなり離れていますが、サイクロンからのびる帯状の雲の一つがかかって大雨になっているようです。
2005年3月12日
いったん中心気圧992hPa(カテゴリ1)まで衰えたサイクロンINGRIDですが、水温の高いカーペンタリア湾で勢力は完全に復活し、中心気圧938hPa(カテゴリ5)まで再発達してきました(オーストラリア気象局の情報)。上に示した、オーストラリア・北部地方Goveのレーダ画像にも、サイクロンの眼がくっきり見えています。
一方のサイクロンWILLYは、サイズは大きいのですが、サイクロンINGRIDと比べると雲がまとまっておらず、これ以上は強くならずに衰えていきそうな雰囲気です。
2005年3月11日
サイクロンINGRIDはヨーク岬半島を横断して弱まりましたが、水温の高いカーペンタリア湾を進むうちに勢力を盛りかえしてきたようです。一方でサイクロンWILLYは、大型サイクロンへと発達を続けています。
ところで、サイクロンWILLYという名前は、「オーストラリアでは台風のことをウィリー・ウィリー (Willy-Willy)と呼ぶ」という、よく知られた説を思い出させます。ところが、実際のウィリー・ウィリーはこんなもののようで、
The term "willy willy" has been used for tornadoes and even tropical cyclones but its main use is for dust devils.
と書いてあります。またハリケーン、台風、トロピカル・サイクロンとは何ですか?にも、Willy-Willyという呼称はでてきません。したがって「ウィリー・ウィリー」という言葉は、熱帯性低気圧としてのサイクロンを主な意味とする単語ではない、と言えそうです。
では、なぜこのような間違いが広まってしまったのでしょうか。原因として考えられるのは、オーストラリアにやってきたヨーロッパ人が、オーストラリア・アボリジニの言葉の意味を不正確に理解した、ということです(現在のところ引用なし)。確かに、台風と竜巻とつむじ風、いずれも渦を巻いているので、「どれも似たようなもの」というのはありがちな誤解です。そして「ウィリー・ウィリー」という言葉の魅力的な響き(?)が、さらにこの説を世界に広げていったのでしょう。ブリタニカ百科事典までが、
in western Australia, any large, travelling tropical cyclone
などと書いている状況です。
この状況では、オーストラリアではウィリー・ウィリーなどと呼ばないにもかかわらず、今後も根強く誤解は残っていきそうです。さらに詳しい議論(英語)。
2005年3月10日
サイクロンINGRIDは、ちょうどヨーク岬半島を横断中です。最盛期に比べるとだいぶ衰えましたが、いまだに雲の形が整っていることから、カーペンタリア湾に抜けたあとには再発達する可能性もあります。
なおオーストラリア北西のティモール海では、サイクロンWillyが発生しました。JTWCの予報ではこの後もインド洋に向かって西に進む見込みで、オーストラリア本土への直接の影響はないようです。
2005年3月9日
サイクロンINGRIDは、昨日に比べると多少は衰えてカテゴリ4に格下げとなりましたが、依然としてサンゴ海では異例に強いサイクロンです。オーストラリア気象局によると、中心気圧は935hPa、最大瞬間風速は280km/hとなっています(0700 EST)。サイクロンは少し北向きに進んでいるようで、ケアンズなどへの影響は小さくなる見込みです。
なおオーストラリアでは、このサイクロンは、1974年に北部の都市ダーウィンを襲ったCyclone TRACY以来の強い上陸サイクロンになるのではないか、と言われているようです。参考:Cyclone Tracy。
2005年3月8日
サイクロンINGRIDがオーストラリア・クイーンズランド北部に接近中です。予報による最大風速は135kt。JTWCの予報によると、ケアンズ北方に上陸する可能性があります。またオーストラリア気象局によると、中心気圧は930hPa(カテゴリ5)、最大瞬間風速は290km/hに達するとのこと(1000 EST)。オーストラリア本土では、過去100年間にカテゴリ5で上陸したサイクロンは2つしかないとのことで、警戒が強まっています。
なおJTWCのサイクロン番号は22Pとなっていますが、以下に示す気象衛星画像からわかるように、小さいサイズで強く発達した熱帯低気圧という意味で、ちょうど同じ番号だった台風200422号と似たタイプという印象を受けます。中心付近の風はかなり強いことが想定されます。
2005年3月8日
今シーズンの南太平洋地域は、このところ強いサイクロンが連発しています。以前に取り上げたサイクロンMEENA(最大風速125kt)の後も、サイクロンOLAF(最大風速145kt)、サイクロンNANCY(最大風速125kt)、サイクロンPERCY(最大風速140kt)と、かなり強いサイクロンが連続的に発生しました。そして、これら4つのサイクロンが次々に接近したクック諸島は、地域の各所が被害を受けているようです。クック諸島からの現地レポートは、クック諸島ラロトンガ滞在記などを見て下さい。
また南太平洋で2つのサイクロンが発生の記事にあるように、南太平洋で2つのサイクロンが至近距離で発生することは非常に珍しいとのこと。手元によいデータベースがないので断定的なことは言えませんが、おそらく今年のサイクロン活動は、全般的に活発な状況が続いているのでしょう。強めの熱帯低気圧が連続的に発生するという事態は、2004年の北西太平洋地域の台風を思い起させます。
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