台風201112号 (TALAS) 台風の名前 = タラス (TALAS) : 鋭さ [フィリピン]

2011年10月10日 17:00 JST

台風12号(TALAS)による豪雨で紀伊半島で相次いだ土砂災害について、国土交通省が分析した結果、崩壊した土砂の量がおよそ1億立方メートルと、戦後、国内で起きた大雨による土砂災害では最大の規模になっていたとのこと(NHK報道による)。土砂災害は3077ヶ所、崩壊した地域の面積は950万平方メートル。今回の災害がいかに甚大であったかを示す数字でしょう。

2011年10月01日 14:00 JST

台風12号(TALAS)による豪雨災害からほぼ1ヶ月となりました。和歌山、奈良、三重の3県では特に被害が拡大し、人的被害は9月30日現在で死者73人、行方不明20人となっています(消防庁による)。特に和歌山県は死者50人、行方不明5人と大きな人的被害が発生しました。1つの県でこれだけ大きな被害が発生したのは近年では稀なことだと思います。その原因は一つの台風で雨量が2000ミリを越えるという記録的な大雨と、それによって発生した大規模な土砂災害です(深層崩壊という言葉も使われます)。また奈良県を中心に数カ所で土砂ダムが形成され、越流から崩壊に至る二次災害への懸念が高まりましたが、これまでのところ大規模な災害には至っていません。 またダムによる放流が水害を拡大したかどうか、特に治水以外を目的とするダム(発電ダム等)における水位の制御を全体の治水計画に組み込むべきなのかも議論になっています。確かに大雨の前に水位を下げる(事前放流する)ことで、大雨で増えた水量をダムに貯めこむことは、ダムによる治水の重要な役割です。しかし問題は水位をどのくらいまで下げればよいかという点で、下げすぎてしまうと貴重な水を無駄に放流してしまうことにもなります。この問題を解決するには、人間の勘で水位を制御するだけではなく、正確な雨量予測と組み合せたより高度な水位制御が必要になると考えられ、実際にそうした方向で効率的にダムを制御するための研究も進んでいます。ただしダムの効果は、流入する水をダムに一時的に貯めることで水位を下げるという点にあり、ダムによる放流が始まると「ダムがない時と同じ水位」にまで上昇してしまいます(ダムがない時よりも高くなるわけではありません)。今回のような記録的な大雨にダムだけで対処するのはなかなか難しく、結局のところ「ダムがない状況」での対策も最終段階として考える必要があることを改めて感じました。 台風12号はマスメディアでも大きく取り上げられています。台風ニュース・トピックスではこれまで、台風に関するオンラインニュースを収集して、台風ごとに分類・整理してきました。これまで最もニュース記事が多かったのは、台風200423号2400件程度でしたが、台風12号のニュース記事は1ヶ月で2200件超に達し、まもなく最大になる見通しです(台風ごとのニュース記事数)。これだけ増えた要因として、同じ月に台風15号による大雨が再び発生したことで、災害ニュースが長期間にわたって続いたという特殊要因の影響もあるでしょう。しかしそれを差し引いたとしても、この数字は今回の台風が社会に与えた影響が大きかったことを示していると思います。

2011年09月11日 01:00 JST

台風12号(TALAS)による紀伊半島の被害が徐々に判明しつつありますが、紀伊半島各地における同時多発的な被害によって、被害の全貌はまだ見えていないようです。人的被害については、9月10日現在で62人死亡、46人行方不明となっており、情報確認の進展によって不明者が減ることもありますが、全体的には依然として増加が続いています。また崩壊した土砂がせきとめた湖の水位についても、ブイやカメラを用いた監視が続いています。大規模な土砂災害や浸水害が各地で発生し、全半壊・浸水した家屋は多数、さらに紀伊半島の山間部を中心に交通網や通信網が各所で寸断されていては、情報把握に時間を要するのも止むを得ない状況と言えます。その一方で、Twitterを使った現地情報の発信も今回は活発に行われており(例えば@totsukawanokoto)、こうした情報チャネルが迅速な救援と支援の拡大につながってほしいと思います。 今回の台風12号による大雨でどのように被害が拡大したのか、その一つのメカニズムとして、長く続いた大雨が最後になって激しさを増すことで、土砂の崩壊が一気に進むという現象が指摘されています。そのような大雨の様子を地図上で確認できるよう、台風第12号による大雨という新たなページを作成しました。このページでは紀伊半島を中心とした地域の10分ごとのレーダー雨量の変化を簡単に確かめることができます(広域版と詳細版があります)。これまでも雨量の時系列変化についてはアメダス集中豪雨から確認できましたが、それに空間的な分布を加えることで雨量の変化をより具体的に確認できるようになりました。台風が四国を通過した後の9月3日夜から、紀伊半島の雨が一段と激しさを増している様子が見て取れます。

2011年09月06日 07:00 JST

台風12号(TALAS)による被害は大きく拡大しています。現在のところ死者33人、不明54人と、台風200423号で記録した死者・不明100名弱以来の人的被害となっています。その最大の要因は、なんといっても紀伊半島を中心とした観測史上最大級の豪雨です。アメダス集中豪雨を用いて、1976年以来に発生した歴代の大雨の中で、今回の大雨がどのくらい激しかったのかを検証してみたいと思います。
時間降水量 トップ10内の観測値
1時間降水量
  • 新宮(和歌山)[132mm/10位]
12時間降水量
  • 御浜(三重)[581mm/8位]
24時間降水量
  • 宮川(三重)[869mm/5位]
48時間降水量
  • 宮川(三重)[1346mm/1位]
  • 上北山(奈良)[1343mm/2位]
  • 風屋(奈良)[1155mm/6位]
72時間降水量
  • 上北山(奈良)[1651mm/1位]
  • 宮川(三重)[1517mm/2位]
  • 風屋(奈良)[1303mm/5位]
ここで特徴的なのが長時間雨量の多さです。72時間降水量で1位、2位を占めた今回の大雨ですが、24時間降水量より短い期間ではランクが下がっています。つまり今回の大雨は、短時間の集中的な大雨ではなく、長時間にわたって継続する大雨だったという点が特徴的です。9/4の記事にも書いたとおり、台風のスピードが遅いまま北上を続けたために同じような場所に湿った気流が流れ続け、72時間降水量では従来のアメダス記録を一気に300mm以上も越える異例の大雨となってしまいました。また大雨が深夜になって激しさを増したことも、状況の把握がより困難となって被害が拡大した一つの要因かもしれません。 さて忘れてならないのは、この台風による大雨被害はまだ終息していないという点です。第一に、紀伊半島では交通や通信が寸断されているため、まだ被害の全貌を完全に把握できたわけではないという点です。第二に、これから北海道で大雨が予測されているという点です。実は紀伊半島での大雨と前後して、北海道でもかなりの大雨が降っていました。そして、台風12号から変わった温帯低気圧と台風13号がこれから北海道に接近するため、北海道には大雨の第二波がこれから襲来します。2回分の雨量を合わせると北海道としてはかなりの大雨となるため厳重な警戒をして下さい。 なおNHKの報道によると、国土交通省の雨量計「大台ヶ原」(奈良県吉野郡上北山村小橡小字大台山)[34.196N, 136.090E, 1640m]では、降り始めからの雨量が2400mmを超えたとのことです。
国土交通省によりますと、奈良県上北山村小橡の「大台ヶ原」に設置した雨量計では、先月30日夜から雨が観測され始め、最大で1時間30ミリ程度の激しい雨が断続的に降り、今月1日までの2日余りで500ミリ余りの雨を観測しました。台風が接近した今月2日には4時間連続で1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨を観測するなど1日で800ミリ近い雨を観測しました。さらに3日には午前2時までの1時間に69ミリの雨を観測したあと、4日も激しい雨が降り、5日午前3時までに降った総雨量は2436ミリに達しました。国土交通省によりますと、この観測点の過去40年間の平均の年間雨量は3287ミリで、今回はその4分の3がほぼ5日余りで降ったことになります。
30日夜から5日未明の間の雨量ということですので、ほぼ5日雨量に近いものと考えてよいでしょう。この雨量計の場所は川の防災情報で確認できます。
この雨量計の近くには、実は日出岳(奈良県吉野郡上北山村小橡大台ケ原山日出岳)[34.185N, 136.108E, 1695m]というアメダス観測所が2009年11月まで存在していました。両者の距離は2km程度とごく近く、周囲の環境もそれほど違わないと考えられますので、もしこのアメダス観測所がまだ存在していれば、アメダス観測としても「上北山」よりさらに大きな雨量が記録されていた可能性があります。

2011年09月04日 15:30 JST

台風12号(TALAS)による大雨は、紀伊半島を中心に依然として継続しており、アメダス上北山(奈良県)では降り始めからの雨量が1700mmを越えました(*1)。紀伊半島での大雨はアメダス観測が1976年に始まって以来、ここ30年間に日本で観測された大雨の中でも最大級のものです。例えばアメダス72時間降水量の過去最大値は、台風200514号による宮崎県の大雨で記録した1300mm超でしたが、今回は1600mm程度に達してこの記録を大きく越えました(*2)。また中国地方や東海地方での降水量も非常に大きくなっており、同時多発的に発生している被災地への迅速な救援が必要です。 今回の紀伊半島における大雨は、台風本体の雲による大雨というだけではなく、太平洋高気圧の周囲を流れる湿った気流(縁辺流とも呼ばれます)が台風の接近によって強まり(気圧の傾度が高まり)、それが紀伊半島の山地に継続的に流れ込んでいることの影響も大きいと思います。台風はもはや渦としての形をとどめていませんが、それでも東側にしつこく雨域が残っているのは、縁辺流が東側に継続的に流れ込んでいることが原因です。レーダー画像を見ると、雨域もようやく東に動き始めたようですが、それによって今後は東海地方での雨量がさらに増加する可能性もあります。 現在のところ全国の死者は10人、不明は26人となっていますが、まだ状況は落ち着いていません。今後も土砂災害や河川の増水に厳重に警戒してください。 (*1) なお誠に申し訳ありませんが、昨日の昼からリアルタイムアメダスの更新が停止しています(お知らせ)。これはデータ提供元の問題で、私の方では復旧を待つしかないのですが、このような記録的な大雨の時にデータが使えないというのは自分としても残念ですしもどかしく感じています。ただデータ提供元(ちなみに気象庁ではありません)の好意に甘えている面もあるので、あまり強くは言えないのですが。。。 (*2) 台風200908号の記事に書いたように、日本でもアメダス以外まで含めれば、台風200410号の際に4日降水量で2000mm程度という記録があるようです。また台風200908号の際には、台湾で2800mm程度の4日降水量を記録しています。

2011年09月03日 11:00 JST

台風12号(TALAS)は午前10時前に高知県東部に上陸しました。この台風は風よりも雨の影響が大きい雨台風というのがこれまでの印象で、台風のスピードが遅いために雨雲が長時間にわたって次々と発生することがその原因となっています。この台風でもう一つ特徴的なのは、平野部よりも山岳部において雨量が特に増加しているという点です。大雪に関しては「山雪型」と「里雪型」という分類がありますが、それを当てはめれば今回の台風は「山雨型」と言えるかもしれません。 アメダス上北山(奈良県)では72時間降水量がすでに1120mmに達しており、今後さらに増えていきそうですが、この数値はすでにアメダス72時間降水量歴代順位でも10位以内に入る記録的な雨量です。また台風が接近する四国や近畿、中国、そして台風からかなり離れた東海や関東でも、山岳部の一部の場所ではすでに記録的雨量に達しています。ところが台風が接近する四国や近畿でも、平野部ではそれほど雨量が多いわけではありません。 2011年9月3日7時(JST)の72時間降水量 アメダス雨量マップで72時間降水量を見てみると(左図は2011年9月3日7時(JST)の72時間降水量)、降水量の大きなところは面的ではなく帯状に広がっていますので、場所によって今回の台風に対する印象は異なるかもしれません。こうなるのは、この台風が中心付近に厚い雲を持つタイプではなく、むしろ中心付近の雲が薄く(大きな眼とも言えます)大気の回転が広範囲に及ぶタイプの台風(大型)であることが一因でしょう。そして台風が大きく動きが遅いために湿った気流が同じ方向に流れ続け、それがたまたま山にあたって上昇し雲を発生させる地点で大雨が継続するというパターンです。 また今回の台風では紀伊半島で雨量が増加していますが、過去の台風の雨量と比較する際には、雨量が多いアメダス観測所が2009年にいくつか廃止されたことにも注意しておいた方がよいかもしれません。場所によってはさらに雨量が多いことも考慮して、地方自治体の避難指示、避難勧告等の情報や、リアルタイム川の防災情報(国土交通省)等の最新情報を確認し、川や池の水位上昇には十分な警戒を続けてください。

2011年09月02日 21:00 JST

台風12号(TALAS)は四国の南にあって、依然としてゆっくりと北上しています。レーダー画像で見ると、現在の大雨の中心は四国南東部から紀伊半島東岸、そして東海地方の山沿いとなっています。またアメダス風向・風速マップを見ると、全般的に台風の東側の方が風が強いようで、津(三重県)などではすでに暴風域に近い強風を観測しています。今夜は四国から近畿にかけての地域が暴風域に入り、さらに風雨が強まってきそうです。

2011年09月01日 21:30 JST

台風12号(TALAS)は日本の南にあって、ゆっくりと北上を続けています。本州から九州にかけての南岸も次第に台風の強風域に入ってきました。この台風は大型であって、ゆっくりと進んでいるため、急速に衰弱することはあまりなさそうです。勢力を保ったまま上陸する可能性があり、十分な警戒が必要です。台風が本州のはるか南方にある本日からすでに大雨は始まっており、本日の大雨地域は関東地方西部の山沿い、そして中国地方西部に広がっています。 この台風のコースでは、長時間続く湿った東風による大雨に警戒する必要があります。アメダス降水量マップでGPV風向・風速レイヤを表示してみると、台風の周囲を吹く東風が本州に流れ込んでいる様子がわかると思います(ちなみにアメダス風向・風速マップでも同様に風向きを表示できます)。通常であれば東風による大雨警戒地域は四国南部や宮崎県、紀伊半島東側などになるのですが、今回の台風では関東地方西部の山沿いも要警戒地域に加わりそうです。近年では台風200709号による大雨が、関東地方西部の雨量が大きいパターンでしたが、今回の台風でもこのパターンの大雨に警戒が必要かもしれません。 またここで改めて、台風の中心が接近することと大雨が発生することとは別だ、という事実にも注意喚起しておきたいと思います。例えば、東京で発生した水害としてインパクトが大きくテレビドラマにもなった多摩川水害ですが、この際に関東地方西部で大雨を引き起こした台風197416号の上陸地点は、関東から遠く離れた高知県なのです。気象情報で「台風本体の雲」という表現を聞くことがありますが、これは台風を取り巻く雨雲を指しており、中心からの距離が小さいところに強い雨雲があります(厳密に言えば台風の眼があるので、中心から少し離れたところに最も強い雨雲があります)。ところが「台風本体の雲」による大雨ではなく、台風の周囲を吹く湿った風が山脈などにぶつかって上昇することが原因の大雨もあります。このタイプの大雨には地形や風向き、湿度などが大きく影響し、台風からの距離はあまり関係ありません。 今後の大雨については、気象庁などの情報を参考にすると同時に、雨雲レーダーなども活用して最新の情報を入手するようにしてください。

2011年08月26日 22:00 JST

台風12号(TALAS)は日本の南にあって、ゆっくり北上しています。今後小笠原諸島方面に接近する可能性が出ています。太平洋上の西方では台風11号も北上しており、両者の動きが今後どうなるかに注意する必要があります。

2011年08月25日 14:30 JST

台風12号(TALAS)がマリアナ諸島で発生しました。この台風は雲がかなり南側に偏っており、まだ中心付近の雲は厚く発達してはいません。今後これがどのくらい中心付近にまとまってくるか要注目です。また台風11号との距離が比較的近いので、両方の台風が影響を及ぼしあうケースも考えられます。

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