2005年09月07日
台風14号(NABI)は衰えながら日本海を進んでいます。進行方向前面にあたる北海道では、今日は大雨が続いていますが、強風については昨年の台風200418号のようなひどいことにはならないのではないかと思います。
1日の雨量としては57地点で観測記録を更新、5地点で1時間降水量の最大値を更新するなど、雨量としては記録的な台風になりました。18:00現在で死者15人・行方不明者10人と、九州南部を中心に各地で大きな被害となっています。
2005年09月06日
台風14号(NABI)は九州西岸に沿って進み、長崎県諌早市付近に上陸しました。その後は佐賀県や福岡県を縦断して日本海に抜けるコースを進んでいます。この台風は風が強く、屋久島では台風接近前に最大瞬間風速58.1m/s、種子島では吹き返しの風で最大瞬間風速59.2m/sを記録しています。しかしこれまでのところ、この台風は強風よりもむしろ大雨の方が目立っています(参照:災害サマリー)。この大雨は土砂災害や洪水を各地で引き起こし、人的被害は死者・行方不明20名近くにも達していますが、その一方で、数日前には貯水率が0%と空っぽに近かった四国の早明浦ダムが、台風による大雨のおかげで1日のうちに貯水率100%に回復するなど、渇水状態の解消につながる恵みの雨にもなっています。
宮崎県では降り始めからの雨量が1300mmを超えた地点があり、九州南部〜東部ではアメダス観測の降水量記録が軒並み塗りかえられているようです。この雨量がどのくらい多いかといえば、台風上陸ラッシュの昨年でも、これを超えるのは台風200410号・台風200411号(連続上陸)で記録された1438mmだけです。1976年以降で最も雨の多い台風である台風197617号は、さすがにこれに匹敵する雨量を数カ所で記録していますが、九州の南でスピードを落としている間に各地で連続的な大雨が続いたという点では、この代表的な雨台風に似たような展開になったと言えるでしょう。
台風は日本海に抜け、強い雨の中心は四国から中国地方・および東海地方に移ってきました。これからの焦点は、台風に吹き込む強風がどのくらい強まるか、またその強風が南向きの斜面にぶつかって集中豪雨を発生させるか、というところにあるでしょう。もし、台風があまり衰えずに日本海を高速に進めば、昨年の台風200418号とコースは似ていますので、強風による被害が生じる可能性もあります。
2005年09月05日
台風14号(NABI)は喜界島の東を通過した後、屋久島や種子島のすぐ近くを通過するみこみです。その後の台風の予想経路は、鹿児島付近に上陸したあと、九州を縦断して日本海へ抜けるということになっています。
昨夜は、台風から遠く離れた東京で1時間に100mm以上という豪雨となり、1600棟を超える住宅が浸水しました。今日は宮崎県で竜巻が発生しています。このように台風の中心が接近するかなり前から、各地で影響が出始めています。これから台風が接近する九州南部(特に鹿児島県と宮崎県)の大雨も昨日からずっと続いており、台風の速度が遅いために今後も激しい風雨が長時間続きそうです。河川の水防警報も続々発表されてきています。
この台風はいまだに中心気圧935hPaを保つなど、大型なだけになかなか勢力が衰えません。台風の雲パターンから見ると、最盛期を過ぎて徐々に成熟〜衰弱を迎える時期のように見えますが、そのような時期において、直径100kmを越える大きな眼と勢いのある雲の形を保っているとは、なんともパワフルな台風です。昨年も超大型台風の台風200423号(災害情報)が各地に大きな被害を残しましたが、この台風も同じように巨大で強い台風であり、各地で厳重な警戒が必要な状況です。
2005年09月04日
台風14号(NABI)は南大東島のすぐ東を通過中で、11:51に最大瞬間風速50.1m/sを記録しました。南大東の気象観測データ(南大東島地方気象台)(以下に気象庁気象観測(電子閲覧室)で検索したデータを再掲)によると、12:00に最大風速27m/sを記録しているので、最大瞬間風速の時刻も考えると、おおよそ12:00ごろに風の最も強い眼の壁雲(アイウォール)領域が、南大東島を通過したと考えられます。
その後は、気圧の低下とともに風速は弱まり、15:00には最低気圧937.2hPaを記録。この時間帯は降水量も0.5mm/hと雨がほとんどやんだ状態で、明らかに眼の中に入っていると考えられます。気象衛星可視画像を見ると台風の眼の中は雲も薄い様子ですので、場合によっては晴れ間がのぞいていたかもしれません。この時刻を過ぎると、気圧は上昇を始め、風も再び強まってきました。
この経過をもとにすると、南大東島においては、12:00ごろが眼の壁雲が通過した時刻、15:00ごろが台風の中心が通過した時刻となります。その時間差は2〜3時間なので、台風の現在の速度25km/hから換算すると、眼の半径は50km〜75kmとなります。なお吹き返しの風では、20:32に最大瞬間風速55.6m/sを記録しました。これは中心の通過から5時間ほど後ですが、これは台風の進行速度が15km/hほどに落ちたことも一因のようで、ここからも眼の半径は75kmと計算できます。もちろん、これらの数字は眼の内側の半径よりは過大な見積りですが、やはりこの台風の眼は直径約100kmの巨大なものと言えるでしょう。
さて、台風は当初の予報に比べると、しだいに東よりの経路を取りはじめています。現在のところまだ雲の形は崩れていないため、今後も勢力を保ち大きな暴風域を持ったまま、奄美〜九州へと接近することになりそうです。昨年に日本を襲った類似台風、台風200416号(災害情報)と台風200418号(災害情報)との台風経路の比較も対策の参考にして下さい。
2005年09月04日の南大東の気象(気象庁 電子閲覧室より)
時間 |
海面気圧(hPa) |
気温(℃) |
風向 |
風速 (m/s) |
降水量 (mm) |
01 |
987.0 |
26.5 |
北東 |
16.6 |
1.0 |
02 |
985.2 |
26.9 |
北東 |
18.7 |
0.5 |
03 |
983.2 |
27.2 |
北東 |
18.7 |
0.0 |
04 |
981.7 |
27.2 |
北東 |
19.7 |
0.0 |
05 |
979.5 |
26.7 |
北東 |
20.5 |
0.5 |
06 |
977.9 |
26.7 |
北東 |
20.2 |
0.0 |
07 |
975.3 |
26.2 |
北北東 |
18.3 |
1.0 |
08 |
973.0 |
26.5 |
北北東 |
19.6 |
0.5 |
09 |
970.2 |
26.7 |
北北東 |
18.9 |
1.5 |
10 |
966.1 |
26.7 |
北北東 |
20.6 |
3.0 |
11 |
959.0 |
26.6 |
北北東 |
21.1 |
8.0 |
12 |
950.7 |
26.1 |
北 |
26.5 |
28.5 |
13 |
942.7 |
26.4 |
北 |
22.8 |
10.0 |
14 |
938.9 |
26.8 |
北北西 |
14.1 |
6.5 |
15 |
937.2 |
26.9 |
北西 |
16.3 |
0.5 |
16 |
938.4 |
26.8 |
西北西 |
12.7 |
3.0 |
17 |
940.2 |
26.7 |
西 |
20.7 |
5.0 |
18 |
942.0 |
26.9 |
西 |
21.2 |
1.0 |
19 |
945.7 |
26.6 |
西南西 |
31.0 |
10.0 |
20 |
949.0 |
26.4 |
南西 |
26.6 |
28.5 |
21 |
954.8 |
26.5 |
南西 |
25.9 |
40.0 |
22 |
958.9 |
26.6 |
南西 |
24.2 |
11.5 |
23 |
962.4 |
26.8 |
南西 |
21 |
12.0 |
24 |
965.5 |
26.9 |
南西 |
20.2 |
9.0 |
2005年09月03日
台風14号(NABI)は、時間によって強まったように見えたり弱まったように見えたりと細かい変動を繰りかえしてはいますが、おおむね昨日以来のしっかりした構造と大きな眼を保っています。今後について、気象庁は勢力維持、米軍は再発達を予想していますが、さてどちらの展開となるでしょうか。ただしどちらの場合でも、沖縄には非常に強い勢力のまま接近することになりそうです。
2005年09月02日
台風14号(NABI)は依然として発達傾向にあるようです。中心付近の雲はぶ厚く、バランスの取れた円形、眼の直径はおよそ100km、周囲の空気を吸い込んでは吐き出す活動も活発です。台風の眼は、衰弱が始まった時には拡大することがよくありますが、最盛期でこれだけくっきりした巨大な眼というのは、なかなか珍しいのではないかと思います。また、暴風域や強風域が大きいのも特徴で、もし台風が日本に接近すれば、広範囲に影響が及ぶのも避けられないと考えられます。
それにしても、可視画像が手元にあれば台風の雲の状況をもっと詳細に見ることができるのですが、つくづく可視画像が手に入ればなぁと感じます、、、
2005年09月01日
台風14号(NABI)は太平洋のど真中で、雄大な雲の渦を見せつけています。今日1日だけに注目すると、数字的には発達が止まっているようにも見えますが、昨日に発達しすぎた、あるいは 台風13号が通過した直後の地域に差し掛かった、などがその原因と思われ、今後の条件次第ではまた勢力を強めてくることもありそうです。
2005年08月31日
台風14号(NABI)は大きく渦を巻きながら発達中です。現在はサイパンが暴風域、グアムが強風域に入っています。 台風13号がエリート型なら、台風14号はワイルド型という感じでしょうか。昨年の 台風200416号や 台風200418号などと時期や場所が似ており、これらのように周囲を大きく巻き込むパワフルな台風に発達する可能性もあります。中心気圧は軽々と950hPaを割ってきましたが、台風のピークはまだまだ先という印象です。
2005年08月29日
台風14号(NABI)がマリアナ諸島で発生しました。これからサイパンの近くを通過しながら、しだいに発達すると予測されています。この地域は本格的な台風が発達しやすい場所でもあり、今後の動きに注意をしておく必要がありそうです。
リンク集
-
EO Natural Hazards: Super Typhoon Nabi
台風NABIの衛星画像(NASA)。
http://earthobservatory.nasa.gov/NaturalHazards/natural_hazards_v2.php3?img_id=13119
-
平成17年(2005年)台風第14号による大雨と暴風について
気象庁による「災害をもたらした気象事例」の速報。
http://www.data.kishou.go.jp/bosai/report/new/jyun_sokuji20050904-08.pdf
-
9月4日から9月5日までの関東地方の大雨について
気象庁による「災害をもたらした気象事例」の速報。台風14号の接近に先立って東京周辺で発生した集中豪雨。
http://www.data.kishou.go.jp/bosai/report/new/jyun_sokuji20050904.pdf
-
台風14号と前線豪雨関連ページ
国土地理院。空中写真や被害状況分布図。
http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/TAIHUU14/
-
宮崎市災害情報まとめ
宮崎市の災害情報を写真とリンクを中心に提供。
http://photo.robox.org/home/disaster
-
台風14号接近(又は上陸)に伴う災害情報掲示板
宮崎市が運用する災害情報掲示板。地元に密着した情報がやりとりされている。過去ログもあり。
http://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/bousai/cgi-bin/script2/saigai/chabo.cgi
-
特集:台風14号被害
宮崎日日新聞社。宮崎県の台風災害の状況を詳細に取材してまとめている。
http://www.the-miyanichi.co.jp/special/typhoon/
-
台風14号、宮崎市内の2日間ドキュメント
livedoorニュース。気象状況と避難勧告への対応など。
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1381684/detail
-
「台風被害から半月、被災地宮崎は今」リンク集
livedoorニュース。台風被害のその後の調査と写真。
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1405280/detail
-
がんばれ! 高千穂鉄道!と沿線の町!
経営断念となった高千穂鉄道を応援するブログ。
http://hinokage-ouen.fruitblog.net/
-
台風0514号豪雨災害
disaster-i.net。現地調査写真と豪雨に関するオリジナル資料。
http://www.disaster-i.net/disaster/20050906/
-
早明浦ダムとその周辺
台風前後での早明浦ダムの貯水率の変化と現場写真。
http://www.water.go.jp/yoshino/ikeda/sameura/same_119.html
-
台風14号豪雨による土砂災害
国土交通省砂防部。台風14号豪雨による土砂災害の概要。
http://www.mlit.go.jp/river/sabo/h17_taihu14/h17_taihu14.html
-
台風第14号に伴う水害の被害額の推計値について(速報)
台風14号による水害の被害額は推計で3310億円〜3750億円に達する。水害の被害額の推計は初めての試み。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/05/051013_.html
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