台風201610号 (LIONROCK) 台風の名前 = ライオンロック (LIONROCK) : 山の名前 [香港]

2016年09月30日 10:30 JST

台風10号(LIONROCK)が上陸してから1ヶ月が経過しました。岩手県と北海道を中心とした被害の大きさが明らかになっています。岩手県では岩泉町を中心に死者20名、行方不明者3名、北海道でも死者3名、行方不明者2名に達しています。特に岩泉町のグループホームで入所者9名が死亡した件は、避難が難しい人々をどうやって早めに避難させるかといった問題を明らかにしたことで、大きなニュースとなりました。 一方、北海道ではインフラ被害と農業被害が大きく、被害額は2787億円と過去最悪になりました。十勝地方は、日本で最も成功している農業地域という人もいるほどの大農業地域であり、JAネットワーク十勝によると食料自給率は1100%、日本の畑の12%を占めています。そして、ここで生産される農作物の中には国内市場で大きなシェアを占めるものもありますが、その農地や牧場、生産施設などが大きな被害を受けたため、農作物や加工品の価格高騰や生産中止などの影響が全国に広がっています。また、道路や鉄道も寸断されて復旧の見通しも立たない状況ですが、その中で道東自動車道がいち早く復旧して十勝地方の孤立を救ったことは、災害時における高規格道路の重要性を示したものと言えます。 なお9月27日に台風経路情報がベストトラックに更新されましたが、この台風の前半部分が熱帯低気圧と認定されて台風の発生時期が遅くなったことで、台風としての南下幅は6.1度と南下した台風ランキングの史上11位となり、記録更新はなりませんでした。また台風201610号の発生日時が8月21日12時(UTC)となったことで、台風201611号の発生日時8月20日0時(UTC)よりも遅い発生日時となりました。このようにベストトラックで発生順が逆転することは時々ありますが、このような場合は台風番号を入れ替えないことになっています。

2016年08月31日 19:00 JST

台風10号(LIONROCK)は8月30日18時前に岩手県大船渡市付近に上陸(参考:気象庁防災情報XML)し、青森県を横断して日本海に抜けました。特に大雨によって大きな被害が発生したのが、岩手県の太平洋岸と北海道の十勝・上川地方です。いずれも台風を取り巻く南東気流が山地にぶつかって雨雲が発生し、短時間で大きな雨量に達した地域と言えます。例えば記録的短時間大雨情報が、8月30日の深夜に上川地方と十勝地方に相次いで発表されました。また、岩手県でも被害が特に大きい地域にあるアメダス岩泉の大雨記録を見ると、1時間雨量から6時間雨量までがいずれも過去最大を記録しており、数時間にわたる記録的な大雨が河川の増水を招いたことがわかります。8月30日はちょうど東日本大震災から2000日目の節目の日でしたが、場所によっては東日本大震災以上の規模の災害となってしまいました。 次に雨雲レーダーの動画を見てみましょう。2016年8月30日の動画を見てみると、岩手県では台風中心の前面に広がる活発な雲が大雨を引き起こした一方、十勝・上川地方は台風を取り巻く湿った南西風が日高山脈にぶつかって生まれた線状降水帯が長続きして大雨になったことがわかります。特に北海道は8月に入ってから連日のように台風がやってきており、2016年8月後半の累積雨量を見てみると、最大のぬかびら源泉郷では雨量が850mmを越えています。雨量が少ない北海道で半月雨量が500mmを越える地点が多数にのぼると、河川は大量の雨水に耐えられません。指定河川洪水予報にもはん濫発生情報が次々と出てきましたし、それ以外のより小さな河川もあちこちではん濫が発生しました。そして各地で道路や鉄道が寸断された十勝地方では、道央から孤立状態になるという深刻な影響も出てきています。 その他に変わった影響として、近畿地方北部で発生している高潮があります。これは台風を吸収した寒冷渦による吹き寄せ効果や吸い上げ効果が、特に京都府や兵庫県の日本海側で強くなっているためです。寒冷渦と台風が合体した巨大な低気圧が生み出す高潮も非常に稀な現象と言えますが、幸いにもこちらは人命につながるような災害にはなっていないようです。

2016年08月28日 19:30 JST

台風10号(LIONROCK)は記録ずくめの台風となっています。まず先日達成したのが、最大南下幅記録です。資料室南下した台風ランキングを見てみましょう。これまでの南下幅記録は台風200318号の8.9度でした。この台風も360度回転コースという極めつけのレア台風です。しかし今回の台風10号はこれを上回る10.1度の南下幅という、さらに稀な記録を作りました。 そして今後達成が有力視されているのが、東北地方太平洋側への上陸という史上初の記録です。台風上陸・通過データベース(完全版)には、これまでに上陸した台風のリスト(昨年まで)がありますが、ここに東北地方太平洋側に上陸した台風はありません。通常であればこの位置では台風は北東に進むため、本州東岸に台風が直接上陸することはまずありません。例えば月次台風経路図日次台風経路図を見ても、この地域ではほとんどの台風が北東方向に進んでいることがわかります。 そこで、2011年に作成した福島第一原発周辺の台風情報では、福島県に台風が上陸する可能性はほとんどないこと、ただし例外的に北西に進んだ台風として台風198913号があること、などを紹介しました。台風198913号は銚子市に上陸しましたので、茨城県から青森県までの本州東岸では、太平洋側からの台風上陸は観測史上一つもなかったことになります。しかし今回の台風10号が東北地方太平洋沿岸に上陸すると、この記録も破られることになります。ちなみに、北海道でも太平洋側からの上陸は稀でしたが、これも今年の台風9号などが続々と記録を塗りかえています。 大幅南下と東北地方太平洋側上陸という史上初の記録を相次いで達成するという、空前絶後の台風がなぜ生まれたのでしょうか。これはエルニーニョ現象やラニーニャ現象などの影響もあってか、偏西風が大きく蛇行して通常とは異なる場所に高気圧(ブロッキング高気圧)が停滞したことが発端です。とはいえ、エルニーニョ現象やラニーニャ現象や偏西風の蛇行は、それほど珍しくはない現象です。今回の特徴は、ここに台風ではない低気圧というプレーヤーが絶妙のタイミングで登場し、低気圧という大きな渦が台風の進路を振り回した点にあるのではないでしょうか。具体的には、最初のプレーヤーがモンスーン渦、次のプレーヤーが寒冷渦で、この2つの渦が異例の経路を生み出す立役者となりました。 最初の大幅南下については、モンスーン渦(monsoon gyre)という太平洋上の大きな低気圧が影響を与えました。発生時にも書きましたが、このモンスーン渦によって大気の流れが通常とは逆回転していたため、台風は南西に動き続けることになりました。とはいえ、モンスーン渦もときどき発生する現象であり、これだけでは史上初という現象にはつながりません。例えば2006年のように、モンスーン渦の周囲に小さな台風が連続発生して日本付近に進んでくることは過去にもありました。今回珍しかったのは、モンスーン渦の北側に回り込んでこれほど長い距離を南西に進み続けたという点で、モンスーン渦と高気圧との絶妙な連携プレーによって台風を南西方向にうまく引き込んだことが原因と考えられます。さらに、同じ時期に台風9号台風11号が近くに存在したため、藤原の効果と呼ばれる台風の相互作用が働いて、台風10号を南西方向に押し下げた可能性もあります。 次の東北地方太平洋側上陸については、寒冷渦(cold-core low)という寒気が作る低気圧が影響を与えそうです。寒冷渦もゆっくりと動く低気圧ですが、寒冷渦の方が台風よりも大きな低気圧です。台風という低気圧どうしの相互作用については藤原の効果が知られていますが、寒冷渦と台風の相互作用では台風の方が小さいため、台風の方が主に振り回される側になります。そしてこの寒冷渦が、北海道の東方に居座る高気圧で台風が北東に進みづらくなるという、絶妙のタイミングで登場してきます。例えばひまわり8号のバンド8画像(水蒸気画像)を見ると、台風の西側に黒いエリアが下がってきていますが、これの少し北側に寒冷渦の中心があります。予報によると、日本上空にゆっくり進んでくる寒冷渦に対して、台風は反時計回りで寒冷渦の北側へと引き込まれていくようです。これが再び、本州を北西方向に横断する異例の経路を生み出す要因となります。 単体ではそれほど珍しくない現象も、それらが同時に発生する確率は低く、連続的に発生する確率となるとさらに低くなります。今回の一連の現象は、このような意味で非常に稀な現象と言えます。地域は異なりますが、「パーフェクトストーム」という映画でも取り上げられた1991年のパーフェクトストームも、大西洋にて様々な気象条件が重なったことが稀な現象の発生につながりました。このように稀な現象においては想定外の影響が生じることもありますので、台風への備えにも通常とは異なる注意が必要です。 まず、大雨や強風への警戒が必要です。特に今回のように寒冷渦と台風とが接近すると、地上は台風の暖かく湿った空気、上空は寒冷渦の冷たい空気となり、豪雨が発生する条件が十分に満たされることになります。このように例外的な状況では、大雨や強風が通常よりも激しくなる可能性や、台風の中心から遠く離れた場所で激しい大雨や強風(竜巻を含む)となる可能性があり、台風の動きだけでなく雨雲の動きにも常に目を配る必要があります。 これに加えて、高潮にも注意を喚起しておきたいです。東北地方太平洋岸では、30日に台風接近と満潮時刻が重なる見込みです。そして場所によっては、台風の強風は湾内に吹き込む方向に一致することになります。東日本大震災の津波でもそうでしたが、吹き寄せられた高潮は湾内で高まっていきます。さらに風向きの方向に開けたV字型の湾では高潮の威力も強まります。伊勢湾台風台風201330号で高潮被害が拡大したのも、地形による効果が大きく影響しました。さらに東北地方太平洋岸では東日本大震災による地盤沈下が未だに回復していない地域も多いため、これも高潮の影響を大きくする方向で影響します。

2016年08月20日 06:00 JST

台風10号(LIONROCK)は、八丈島を通過した後に奄美・沖縄に接近するという異例のコースをたどっています。このように東から西に向けて長い距離を進んだ過去の台風を検索するために、台風進路予想図(Google Maps/グーグルマップ版)にて台風10号の類似台風(実況+予報)を参照すると、台風196414号台風197414号などが似たようなコースをたどっていることがわかります(参考:台風196414号+台風197414号+台風201610号の経路図)。今回の台風10号はもっとも北からの南下西進コースとなりますが、過去の2例はいずれも沖縄方面に接近した後に反転して本土に上陸しています。今回の台風10号はどうなるかについては、まだ長時間の予報円が非常に大きいため、沖縄接近後の進路は全く見通しがたたない状況です。ただし、もし沖縄で台風の発達に好条件が整えば、そこでたっぷり発達して形態を変えてから本土に接近する可能性もあり、ここしばらく目が離せない状況となりそうです。

2016年08月19日 22:30 JST

台風10号(LIONROCK)が八丈島の東で発生しました。今後は伊豆諸島を通過した後に南西に進むという、かなり珍しいコースを進む予報です。これは台風9号でも触れたように、日本南方の大気の流れが通常とは逆回転になっているためです。台風の動きを左右するのは上空700hPa(3000メートル)や500hPa(5700メートル)付近の風となりますが、世界版リアルタイム風向きマップ(気象庁数値予報モデルGPVデータ)を見ると伊豆諸島付近では北に向かう大気の流れと南に向かう大気の流れが分岐しており、台風10号は後者の風に乗って南西に進むことになります。さらに明日までには台風11号も発生する可能性があり、関東地方には日替りで台風が発生する状況も考えられます。

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