2013年12月28日 23:00 JST
台風30号(HAIYAN)による被害は近年のフィリピン災害史上最大級のものとなっています。6-7mの高さに達する高潮が多くの人の命を奪い、死者は6000名以上、行方不明は1700名以上の人的被害となりました。また避難者は400万人程度、被災者は1200万人にも達するようです。これだけたくさんの人が避難を強いられているのは、強風により多くの家屋が被害を受けたことが影響しており、これは規模は巨大ですがフィリピンでこれまでも繰り返されてきたタイプの被害です。一方、人的被害はその多くが高潮によるものであり、これは今までのフィリピンでは少なかったタイプの、想定外の被害と言えるかもしれません(参考:理解されなかった「高潮」の警告―フィリピンの台風被害が拡大した理由)。また台風の眼に入って風雨が弱まったことで、避難先から居住区に戻って高潮被害にあったケースもあるようです。この大災害を教訓として、今後高潮による被害をどうやって防いでいくか、また高潮に関する情報伝達と教育啓発をどう改善していくかが、フィリピンにとっての大きな課題となります。
土木学会海岸工学委員会がまとめた2013年台風Haiyanによるフィリピン災害には、「土木学会・フィリピン土木学会合同台風30号高潮災害調査グループ」がまとめた各地の潮位の観測データやシミュレーション結果があります。また、2013年フィリピン高潮合同調査隊にも、現地の観測データ(高潮痕跡高)があります。ただし、シミュレーション結果は観測データをうまく再現できていないところがあるようで、シミュレーションでは考慮されていないメカニズムによる潮位上昇があったのではないかとも考えられています。段波や高波の影響による津波のような高潮の発生は、専門家にとっても想定外の事象だったと言えるかもしれません。今後どうやってメカニズムを解明し、それを各地の防災対策に活かしていくかが、専門家にとっての大きな課題となります。
ではフィリピンでは、どのような防災、減災対策を進めれば良いのでしょうか。もちろん、堤防を築くとか、海沿いに住まないとか、根本的な解決策もあるでしょうが、フィリピンにおいてはコストがかかる対策は現実的でない面もあります。高潮用シェルターを作るのも一案ですが、これも国際的な援助が必要そうです。そこでもう少し現実的な案として、天然の堤防としてのマングローブの活用があります。今回の高潮災害でも、マングローブの植林を進めていた場所の方が被害が少なかったため、フィリピン政府も今後はマングローブの植林を進めていくとのことです。もともとフィリピン沿岸にはマングローブが広がっており、それが波を弱める機能も担っていたのですが、それがなぜ減ってしまったかと言えば、エビの養殖池を作るための伐採が主な原因なのです。そして、そこで養殖されたエビが日本にも大量に輸出されていることを考えれば、この災害は決して日本人に無関係のこととは言えません。マングローブは生態系保全や二酸化炭素排出量削減にも効果があります。自然のメカニズムをうまく利用して被害を軽減する方法について、知恵を出しながら考えていくことが必要です。
2013年11月21日 18:30 JST
台風30号(HAIYAN)ではレイテ島タクロバンで高潮による大災害が生じましたが、実は同じような大災害が1912年にも生じていたようです。1912年11月29日付のThe Evening Standard紙には「TYPHOON WORST ONE IN HISTORY」との記事があり、史上最も破壊的な台風によってタクロバンの4/5が壊滅し、しかもこの台風は別の強力な台風のわずか数日後にやってきたとの記述があります。また1912年11月29日付のThe evening world紙には「15,000 VICTIMS OF TYPHOON IN THE PHILIPPINES」という記事があり、先週の火曜日(1912年11月19日)にフィリピンを通過した台風では死者が約15000人に達し、台風はタクロバンを壊滅させたと述べています。
このサイトChronicling Americaは、1836年から1922年の米国の新聞を画像アーカイブしたという素晴しいウェブサイトで、キーワード検索も可能です。なぜフィリピンのことがアメリカの新聞で報じられているかというと、フィリピンが1898年から1946年の間はアメリカの統治を受けていたことが一つの要因です。そこでいろいろなキーワードでアーカイブを検索してみると、10月15日頃にもタクロバンの南方(?)が台風に襲われたというような記事があります。となると、1912年は10月から11月にかけてレイテ島付近に強力な台風がいくつも来ていたことになり、フィリピン南方地域の「台風の当たり年」だったと思われます。またこの記事とは別の資料を参照すると、1912年台風の経路は台風30号とはやや異なり、タクロバンの北方を通過したあとほぼ真西に進んでパナイ島に達し、そこでもタクロバンに匹敵するかそれ以上の大被害を及ぼしたようです。勢力としても台風30号に匹敵するかそれ以上の勢力だったようで、おそらくタクロバンでは今回と同様の高潮が発生したと推測されます。
ちょうど100年前にも同じ災害があったとすると、この災害は非常に大雑把に言えば「100年に1度の災害」と言えるでしょう。つまり、この地域にこの強さの台風は100年に1度ぐらいは襲来するかもしれないということです。とはいえ、現地で1912年台風の教訓が語り継がれていたとの話は出ていないので、おそらくすっかり忘れ去られていたのでしょう。ただ、それも無理はないかもしれません。日本の過去の台風と比較してみると、例えば1934年の室戸台風の記憶であれば今でも多少残っているとは思いますが、それ以前の大正時代や明治時代の台風ともなると、記憶がきちんと残っているか怪しいところです(1912年は大正元年です)。もっとさかのぼって、ほぼ200年前の1828年シーボルト台風ともなれば、人々の間に記憶が語り継がれているとは思えません。100年というのは生き証人がほぼすべて亡くなってしまう間隔であり、災害の記憶をきちんと伝承するには低頻度すぎる現象とも言えます。となると、1912年台風の記憶を正しく伝えていくというよりは、その土地にまつわる歴史を「むかしむかし…」と昔話のようなストーリーに一般化し、後世に伝えていくべきなのかもしれません。
2013年11月18日 21:30 JST
台風30号(HAIYAN)で発生した高潮について、高潮の状況を撮影した動画に映っているのは「段波」ではないかとの解析結果が出ているようです(参考)。台風中心の通過に伴って風向が逆転する際に大きな水位差が生じ、その境界で壁のようにそびえたつ段波が発生したのではないかとの解析です。
実は現地でも、台風の接近前に潮位の低下が見られたとの証言があります。したがって台風接近前の時間帯は、吹き寄せ効果の逆(吹き出し効果?)で湾内から湾外へと海水がどんどん出て行き、湾内の水位は低くなっていたものと考えられます。ところが台風が通過すると湾外から湾内へと風が吹き込むようになり、湾外の高い水面が吹き寄せ効果によって湾内に流入するようになりました。最初に海面が下がったために、後に来る波が「倍返し」のように高くなっただけでなく、その境界で生じる壁のような波が渦となって砕けることで、破壊力を増すことにもなりました。
段波自体は他の現象で昔から知られていたものですが、これが台風中心の通過に伴う風向の逆転という原因によって、高潮という現象でも起こりうることを発見した、というのが今回の高潮災害の特徴ではないでしょうか。これは台風の勢力や地形など、数々の悪条件が偶然にも重なって初めて生じる現象なのかもしれません。非常に稀な現象が発生した末の大災害であることを、あらためて痛感させられます。
2013年11月17日 23:00 JST
台風30号(HAIYAN)による人的被害規模の推定は、依然として機関によって大きく異なっていますが、数千人の死者に達する規模であることは間違いなく、フィリピン観測史上最大の自然災害となる可能性が高まっています。アキノ大統領による被害状況の過小評価の問題が示すように、フィリピン政府がどれほど被害状況を把握できているのか心許ない状況です。赤十字やNGOなどの活動に加えて米軍や自衛隊などの組織的な展開も含めた、世界各国からの人的・金銭的支援がぜひとも必要な状況が続いていると思います。
ところで台風による高潮の状況を撮影した動画が衝撃を与えています(NHKによる解説)。サマール島南東部のヘルナニで撮影されたもので、ある瞬間から急に海水の勢いが増し、まるで津波のように建物を押し流していく状況が克明に捉えられています。しかしこの動画を見て私はやや不思議な印象を持ちました。確かに高潮というのは海面自体が上昇してすべてを押し流していく波ではあるのですが、これほど急速に海面が上昇するような波ではないはずで、これはいくらなんでも激しすぎるのではないかと。
それに対して興味深い説があります。この映像の波は、高潮と高波が合体したものではないかという説です。そもそも熱帯地域では海岸の沖合に広がるサンゴ礁が自然の防波堤となるため、通常の台風であればサンゴ礁が高波を弱める消波機能を発揮し、人工の防波堤がなくとも海岸地域は台風から守られてきました。今回の動画が撮影されたヘルナニも、衛星画像を見ると沖合にサンゴ礁が広がっており、これが従来この地域を守る自然の防波堤として機能していたと思われます。今回の台風がこれまでと違うのは、高波に高潮が加わったところですが、ヘルナニは湾地形ではないため、高潮そのものの効果は湾の奥に位置するタクロバンなどと比べると小さいはずです。それなのにどうしてこれだけの波が押し寄せてしまっているのでしょうか?
ここから先は仮説ですが、海面が高潮によって上昇することで、サンゴ礁という自然の防波堤が無力化する可能性があります。そしてそれは大きな被害につながります。なぜならサンゴ礁の消波機能がなくなれば、太平洋という外海で荒れ狂う10mを越す高波が海岸まで直接打ち付けるようになるからです。サンゴ礁の消波機能がどの程度の海面上昇で失われるかはよくわかりませんが、サンゴ礁は満潮時の海面の高さ以上には成長しないでしょうから、それをはるかに越える高さに海面が上昇すると、サンゴ礁が無力化することは十分に考えらえれます。そして、動画で捉えられた津波のような波は、サンゴ礁が無力化して外海の高波が海岸に届き始めた瞬間を捉えたものかもしれません。
伊勢湾台風の時は、水面が防波堤を越えたとき、海水が一気に内陸に流れこんでその勢いがすべてを押し流していきました。これが防波堤が無力化した瞬間です。ただフィリピンのこの地域については、見た感じでは防波堤はあまりなさそうなので、どうしてこれほどの勢いが生じるのだろうというのが初見時の疑問でした。しかし高潮による海面上昇で自然の防波堤が無力化した瞬間があるのなら、その瞬間に事態が一変することも納得できます。そしてこれが恐ろしいのは、もしこれが現実なのであれば、レイテ島東部からサマール島東部、その他の地域を含め、実は湾地形ではない場所でも高潮と高波の合体によって海岸線沿いには壊滅的な被害が生じているはずだという点にあります。実際にサマール島東部沿岸を空から確認した人は、この地域はほとんど消えたようだと語っています。そしてレイテ島、特にタクロバンに支援が集中している状況に対して、支援が遅れているサマール島にも支援を広げるように要望しています。
2013年11月12日 23:00 JST
2013年11月10日 18:00 JST
台風30号(HAIYAN)によるフィリピン中部の被害は、死者数がどんどん増えつづけています。ニュース記事によると、最初の報告は死者3人でしたが、その後100人、1000人と増え続け、現在は1万人以上に達する可能性もあるという話が出ています。台風によってこれだけの大規模災害が発生した原因として、竜巻のような強風による建物の倒壊も一因としては重要ですが、やはり最大の要因は高潮でしょう。これはフィリピンにおける伊勢湾台風型の大規模災害と言えるかもしれません。そして不幸なことに、この高潮災害は、偶然にも最悪の条件が重なって発生したものと考えられます。
高潮・高波のページに書いたように、高潮の高さを説明する二つの要因に「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」があります。まず吸い上げ効果は、台風の中心気圧が低いことにより海面が上昇する効果で、気圧が1hPa低下すると1cm上昇すると言われています。今回の台風は上陸台風の中では史上最強とも言われるほど中心気圧が低い台風であるため、当然ながら吸い上げ効果も過去最大級と言えます。一方、吹き寄せ効果は風速の2乗に比例して海水が吹き寄せられて湾の奥にたまっていく効果ですが、今回の台風はコンパクトなために中心付近の風速はより強めとなっており、最大風速125kt(64.3m/s)と、まるで竜巻のような強風となっていました。
さらに悪い条件が重なります。それは台風の経路です。Google Maps版経路図を見ると、台風の中心は大きな被害が発生した人口22万人のレイテ州都タクロバンの南側を通過していますが、これでタクロバンは台風の進行方向右側の風速が強い半円に入ってしまいました。そしてこの当時、台風は20kt (37km/h)とかなり速いスピードで進んでいたため、そのスピードの効果も風速に上乗せされ、さらに吹き寄せ効果を強めることになりました。フィリピン南部に大被害を引き起こした最近の台風と比較してみると、台風201224号は28km/h程度、台風201121号は27km/h程度。それに比べると10km/h程度はスピードが速かったことになります。
最後に時間帯の面でも避難が比較的難しいケースだったと言えます。台風が接近する半日前、すなわち台風の中心がまだ数百キロメートルほど遠方にあって、まだあまり影響が感じられない前日夕方のうちに避難しておく必要があったのです。台風経路図を使ってタイムラインを作ってみると、タクロバン地域が台風の強風域に入ったのは現地時間で当日の午前0時前、暴風域に入ったのが当日の午前5時前、そして最接近したのが午前8時前です。台風の影響が急に強まった未明から早朝の時間帯では、停電で照明もなくなって、すでに避難は困難となっていたでしょう。政府は70万人以上を避難させたと言っていますが、避難しなかった人も多数いたものと思われます。とはいえ、高潮を想定していなかった避難所では、避難所内でも死者が出ているようです。では、一体どこに逃げればよかったのか、と言われると答えに困りますが。。。
このように、台風の経路や勢力などのあらゆる面において、想定する最悪のケースに近い状況が出現したのではないかというのが私の印象です。そこで日本で5000人以上が亡くなった伊勢湾台風のケースと比較してみましょう。伊勢湾台風も伊勢湾に沿って進み、伊勢湾は経路の右側に入って風が強まり、その間の中心気圧は920hPaから940hPa程度、最大風速は45m/sから50m/s程度でしょうか(参考:名古屋地方気象台での観測データ)。この台風によって発生した高潮は、伊勢湾台風高潮マップにまとめていますが、潮位偏差(高潮の実質的な高さ)は最大で4m程度と考えられます(観測値では名古屋港の3.55m)。今回の台風では上陸時の中心気圧が895hPa、最大風速が65m/sですから、伊勢湾台風の時よりも吸い上げと吹き寄せの効果の両方とも1.5倍から2倍ぐらいに達している可能性もあり、高潮の高さが最大で6mから8m程度に達しても不思議ではありません。現地を空から視察した救援チームが、インド洋大津波後の被災地に匹敵する壊滅的被害と形容していますが、まさに高潮も津波と同じく、すべてを破壊しつくしていく波です。海面自体が上昇して、大量の海水が陸地にどっと流れ込んでくるのです。
実は台風がフィリピンに接近する前に、上陸地点と予想される地域の地図を確認していたのですが、レイテ島タクロバン付近(対岸のサマール島バセイ付近も含む)は高潮の危険性が高い地形だということはすぐにわかりました。そのため11月8日のエントリにも、「地形的に高潮なども心配される状況」と言及しました。ただ私自身そう言及しつつも、その時点では高潮の影響をこれほど深刻には想定していませんでした。というのも、これまでフィリピンの台風災害において、高潮という言葉をあまり聞いた覚えがなかったからです。このブログでもフィリピンの台風災害はこれまで繰り返し取り上げてきましたが、災害規模に大きな影響を与えていたのは大雨による土砂災害や洪水でした。今回の台風はコンパクトでしかもスピードが速いので、降雨範囲はあまり大きくなく、降雨時間も短くはなりますが、それでも短時間の豪雨がどこかに被害を引き起こすのではないか、というのが私の事前の想定でした。また風害の方は、確かに家屋の倒壊や作物の壊滅などで被害の規模は大きいのですが、人的被害は豪雨ほど大きくならない場合が多い。そこでこれまでの経験から、被害規模への影響は、土砂災害+洪水>風害>高潮の順番で大きいだろう、と考えていました。ところがこれはとんだ考え違いでした。実際のインパクトは、高潮>風害>土砂災害+洪水、という順番になったはずです。
フィリピン現地の人々がどういう意識を持っていたかに関して、具体的な証拠はありません。しかし、この地では高潮災害の経験があまりなかったとすると、高潮に対する人々の意識も低かった可能性があります。例えば過去にベンガル湾(インド洋)のサイクロンによる高潮災害がたびたび発生してきたバングラデシュであれば、住民の意識は全く異なります。彼らはサイクロンが接近してきたらまず高潮を意識し、高潮から避難するために高床式のサイクロンシェルターに逃げ込みます。サイクロンシェルターの建設には日本も積極的に援助を続けており(日本のODAの例)、そこで安全を確保できる地域が増えてきたため、高潮による死者数も最近はだいぶ小さくなってきました。それに対して、フィリピンに高潮用シェルターがあるかというと、あまり聞いたことがありません。たとえシェルターがあったとしても、それは風雨をしのぐことを主目的とした避難場所でしょう。荒れ狂う風雨だけを意識していたところに、早朝から高潮の海水がどっと押し寄せてきたとき、それは多くの人々にとって想定外の出来事だったのではないでしょうか。人々は逃げ場を失って海水に溺れ、海岸沿いの集落は壊滅状態となってしまいました。
ではなぜフィリピンにおいては、高潮災害があまり発生しないと考えられるのでしょうか。それは、高潮はどこでも発生するわけではなく、特定の地形で発生する場合が多いからです。具体的には、台風の進行方向に沿ってだんだん狭くなるという湾地形が、高潮の発生には都合のよい条件です。日本でも、伊勢湾台風で過去最大の高潮が発生した伊勢湾は、南から北に進む台風にとって条件が揃った地形と言えます。一方フィリピンでは、強い台風はほぼすべて東から西に向かって進みますので、(1)東海岸にあり、(2)西に向かってすぼまった湾地形であり、(3)湾の奥には人口が多い町が存在する、というのが高潮で大災害が発生する条件となります。この条件でフィリピンの地図を眺めてみると、そういう条件を満たす地形が意外に少ないのです。今回被害が発生したタクロバンが最もこの条件に当てはまる地形で、もう少し幅が広い湾としてルソン島のレガスピがあるぐらいです(ちなみにフィリピン最大の都市マニラは西海岸にあります)。このように高潮発生の条件を満たす場所が少ないとすると、フィリピンにおいて高潮災害が比較的珍しい災害であっても不思議ではありません。しかし今後は考えを改める必要があります。
さらに地域の問題も考えなくてはなりません。フィリピン南部は、北部に比べてこれまで台風の襲来が比較的少なく、それがこの地域におけるバナナ産業の隆盛にもつながっていると言われてきました。ところが2年前の台風201121号と昨年の台風201224号では、レイテ島のさらに南にあるミンダナオ島で大規模な災害が発生していたところに、今年はレイテ島です。これには台風経路の長期変動のような影響も関係しているかもしれず、相対的に貧しく台風対策も遅れているフィリピン南部地域の状況をなんとか改善してほしいものです。そして、フィリピンの台風対策では「高潮」を決して忘れてはならない、というのが今回の災害の重い教訓でしょう。高潮からどう逃げるか、事前に考えるだけでなく、避難所も用意しておく必要があります。そして日本でも、伊勢湾台風の高潮災害などを改めて振り返りながら、高潮災害への対策を考えていくことが重要ではないでしょうか。
2013年11月09日 15:00 JST
台風30号(HAIYAN)はフィリピン中部を抜けて南シナ海に抜けました。台風接近前に72万人が避難したとのことですが、少なくとも100人の死者が出る見込みとの報道もあり、特に遠隔地との連絡ルートが寸断されているため、被害の全貌はまだよくわかっていません。
予報によると、台風はこれからベトナムに接近します。多少は勢力が衰えたとはいえ、ベトナムはフィリピンほど強い台風が頻繁に接近するわけではなく、やはりこの地域に接近する台風としては相当に強いクラスの台風と言ってよいと思います。また予報ではベトナム沿岸を進むコースとなっており、南から北まで全国的に影響を受ける可能性が出てきているのも悪い報せです。
2013年11月08日 13:00 JST
台風30号(HAIYAN)は猛烈な台風に発達し、まさに手のつけられない強さを見せつける状況になっています。3年前にも台風201013号が中心気圧900hPaを下回る勢力となりましたが、この台風は勢力のピークをたった6時間しか維持てきておらず、その後はルソン島に上陸して急速に弱まりました。それに対して、台風30号は900hPa程度の勢力をもう1日半ほど維持しており、しかもフィリピン中部の島を通過している最中にも勢力が急に衰えるような気配は見えません。ちょっと他の台風とは次元が異なる強さという感じがします。
この強さの源となっているのは、中心付近でぶ厚く発達した巨大な雲の塊でしょう。例えば今日9時の赤外強調画像を見ると、眼の周辺をほぼ円形のぶ厚い雲(白色)がびっちりと取り巻いています。台風自体のサイズはそれほど大きくはないのですが、この中心付近の雲は他の台風と比べても巨大であり、ここで発生するエネルギーが依然として勢力維持に十分な供給量となっているのでしょう。これに匹敵する例としては台風199810号などもありますが、それほど類例が多いわけではなく、世界の熱帯低気圧観測史上で考えても、上陸した熱帯低気圧の中で最強の勢力ではないかとの声も出ています。ちなみに海上までを含めると、世界の熱帯低気圧観測史上で最強と言われているのは台風197920号です。
気象庁の予報によると、台風は今朝からフィリピン中部を通過中です。各地の状況はわかりませんが、猛烈な風雨だけでなく、地形的には高潮なども心配される状況です。台風の中心がすぐ近くを通過中の、レイテ島タクロバンからの現地リポートも止まってしまいました。被害の全貌が見えてくるには、しばらくの時間がかかるものと思われます。
2013年11月07日 13:00 JST
台風30号(HAIYAN)は猛烈な勢力に発達しています。大きさはコンパクトですが、中心部にはぶ厚く発達した雲と非常にくっきりした眼を備えており、数年に一度ぐらいしか登場しないような均整の取れた形状をしています。これから台風はフィリピンに接近していきますが、直撃を受けると相当に大変な影響が出るものと思われます。台風の進路にあたるのは、サマール島やレイテ島、セブ島北部、ネグロス島北部、パナイ島北部などの島々です。
2013年11月06日 22:30 JST
台風30号(HAIYAN)は赤道寄りの太平洋を進みながら急速に発達しています。ヤップはもうじき強風域を抜けますが、パラオはすでに強風域に入っており、これから暴風域に入る見込みです。直撃は避けられそうですが、相当に接近する可能性はあり、風雨の影響は免れないでしょう。
さてその進路の先にはフィリピンがあります。現在の予報によると、サマール島やレイテ島付近を通過し、フィリピン中部の島々を巻き込んで横断するコースを進みそうです。この近辺では近年もたびたび大災害が発生しています。南のミンダナオ島では2年前の台風201121号と昨年の台風201224号で、2年続けての大規模災害となりました。また少し北のルソン島南部でも、台風200621号ではマヨン火山の火山泥流による大災害が発生しています。今回の台風も相当強い勢力で上陸する見込みで、現地では明日中に避難完了を目指してほしいと思います。
2013年11月04日 10:30 JST
台風30号(HAIYAN)がトラック諸島近海で発生しました。 予報によると今後は西に進みつつ、発達する見込みです。これで 1994年シーズン以来、約20年ぶりの台風30号となりました。台風の卵がコンスタントに生まれているので、 2013年シーズンの発生数はまだ増えていきそうです。
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